アメリカには日本の国民健康保険のような公的機関が取り仕切る保険システムはない。個人がそれぞれ保険を民間企業から選び、保険料を支払うというシステム。その内容はとても複雑で保険証を持っていけば好きな医者に好きな時にいける日本人には理解し難いものだ。また保険料も常識を超える金額のため、保険料が支払えず保険がないアメリカ人も数多くおりアメリカの大きな問題となっている。

最近アメリカで出産したライターAも「噂に聞いていたけれどひどいものです。」と口をあんぐり。ここで彼女が受け取った出産入院請求をご紹介しよう。

彼女の家庭は会社勤めの夫、4歳の子供との3人家族(出産するまで)。それまでに払っていた保険料は月に約400ドル。これは会社が50%負担してくれたあとの支払い額だ。これはとても安い方だという。この価格は被保険者の年齢や病歴によって左右される。Aの家族は子供も含めて病院歴がなかったことからこのような安い金額に収まったわけだ。子供がぜんそくと診断された場合は一気に保険料が上がったり、保険会社から保険に入ることを拒否されるケースなども多くあるという。

これからご紹介する内訳は1泊(24時間)の出産入院にかかった費用だ。

「アメリカでは出産後、翌日に退院するとは聞いていたけれど本当でした。それは出産は病気じゃないから、とか、アメリカ人はすぐに体力が回復するからだとかと言う人がいますが、全くの嘘。看護士さんと話したら医療費がかさむのと、ベッドの回転数をよくすることが目的だと言っていました。」とAはいう。

<1日の入院、出産費用の内訳>

検査費:$67.90(約¥5,600)
部屋代(食事などを含む):$1,833,26 (¥152,826)
周産費用(実際に医者に取り上げてもらう費用):$4,420.35(¥368,517)
薬代:$697.56(¥58,195)
雑費:$771.32(¥64,282)

※別途
麻酔費用:$1,299.35(¥108,333)

合計金額:約¥737,753

「年齢もあってか24時間後の退院は相当厳しかったです。2日入院してもよいと言われたのですが小さい息子も家にいるので1日にしました。でも体が重く駐車場まで歩くのも大変。なのに家で必要な薬は自分でどこかの薬局に行かないといけないし、赤ちゃんのチェックも3日後に別に自分で選んだ小児科に連れていかないといけないしで、本当に大変でした。でも24時間後の退院ですらこの金額ですからね。2日入院しなくてよかった〜と思いました(苦笑)。」

実際Aはこの後保険会社がほとんどを負担してくれたために、出産入院費用は5万円ほどを支払うだけで済んだが、それまで妊娠9ヶ月間の検査費用もあり、全体の出産費用は約30万ほどの持ち出しになったという。

「これでも相当恵まれている方です。保険会社によるので負担料は人によってそれぞれ。すでに妊娠していると新しい保険には入れないので、妊娠がわかってからだんなさんの転勤でアメリカに来た人は全額負担したという話をよく聞きます。帝王切開で4日入院して400万の請求書がきたという話も最近聞きました。」

アメリカ国籍を子供に与えたいためにハワイなどで出産する芸能人などは、もともとアメリカに住んでいる訳ではないので全額負担が基本。

「今はグリーンカードも簡単にとれない時代ですから400万円払ってもアメリカ国籍がもらえるならおいしいと思うのでしょう。」とAはいう。

「私は日本でも妊娠、出産を経験しました。どちらが安心して産めるかというと日本のような気がします。出産そのものはサービスもよく、私はアメリカの方がよかった。でも請求書の封筒がくるたびどきどきするのはもういやですね(笑)」