ある日の午後、中国・杭州のとあるカフェで「西湖龍井茶(ロンジン茶)」を注文したときのこと。日本での知名度は低いかもしれないが、龍井茶は浙江省杭州の龍井村で生産されている緑茶で、鉄観音と並ぶ中国十大名茶のひとつである。

待つこと5分、サーブされたお茶には茶葉がものすごい勢いで表面に浮いているではないか!  茶柱であれば縁起がよいものの、これでは運気が逃げていきそうである。

正しい飲み方が分からず困り果てた記者は、店員を呼び止めて「茶漉しはありませんか?」と尋ねてみた。「茶漉しなんて必要ないわ。茶葉がゆっくり沈むまで待って」とのこと。「水色が薄い緑色になったら、飲み頃。黄色になってしまったら、抽出しすぎだから気をつけて」。茶葉がゆっくり下に落ちていく間に、茶葉が抽出されるということらしい。

後にこの出来事を中国茶館の店主に尋ねてみたところ、「急須を使わずコップや小ジョッキに茶葉を入れ、湯を注いでお茶を飲むことは中国の家庭ではフツウ」とのこと。湯を注ぎ足しつつ、何杯も楽しむのだそうだ。茶器に蓋がついた状態で供されることもあるという。

中国茶初心者の記者は、茶葉が沈みかけた頃合を見計らって、すっきりまろやかな味わいの龍井茶をすすった。しかし、口に茶葉が入ってしまい、なかなか上手に飲めない。おいしく飲むには何度か練習する必要がありそうである。茶葉が沈むのを待っていたら、お茶が渋くなってきてしまった。ところで中国茶に限らず茶にはさまざまな効能があるが、龍井茶には脂肪分を分解し、消炎解毒等の効果があるといわれている。

あなたの注文したお茶がこのような状態で出されたとしても、もう驚くことはないだろう。ちなみに中国では茶を注文すると、お茶請けとしてドライフルーツなどの茶菓子が無料で出てくる店も多いので、一度立ち寄ってみると楽しい体験ができるかもしれない。

(記者・写真:sweetsholic)