福島県会津若松市のシンボル、鶴ヶ城(若松城)。2010年から、黒瓦だった天守の屋根瓦を、明治時代に解体される以前の赤瓦葺に復元する工事が始まり、今年3月にようやく終了。

ところが会津地方も原発による風評被害の影響を受け、平日の鶴ヶ城は閑古鳥が鳴いているというニュースが流れていました。実態を見てみようと思い、記者が鶴ヶ城へ行ってみると、「お城ボくん」という不思議なキャラクターの存在を発見。本日は彼に注目してみたいと思います。

あれは、お城の門の付近で、不思議なイラストが描かれた「灯篭」を見つけたのが事の始まりでした。そのイラストこそ、「お城ボくん」だったのです。雨水や泥が跳ねて灯篭はちょっぴり汚れていましたが、控えめでありながらも彼が醸し出す強烈なインパクトは、まったく陰りがありません。

その姿は、お城(鶴ヶ城)に目や口や鼻が描かれ、腕がニョキ~ッと生えており、さらには、城の石垣の下に車輪まで付いているのです。

「鶴ヶ城って可動式だったのかぁ、かっけええ~!」なんて感激しちゃう人もいるかもしれませんが、残念ながら「鶴ヶ城」が某アニメ映画に出てくるような「動く城」だったという史実はどこにもありません。

じゃあ、「お城ボ」の「ボ」はいったいなんだ!? と疑問に思う方もいると思いますが、車輪や腕がくっ付いていることからも間違いなく、ロボットなのでしょう。

彼の異様な風貌に後ろ髪を引かれながらも気を取り直し、門をくぐって城の敷地へ。すると、そこにいたのはなんとリアル「お城ボくん」でした。どこの馬の骨ともわからぬ記者のためなんかに出迎えてくれるとは! か、かたじけない。

近くに設置してあった看板の説明書きによると、「お城ボくん」は「会津若松市観光PRキャラクターで、会津出身でタツノコプロダクションで活躍する笹川ひろしさんにより制作されたもの」だそうです。アニメ「ヤッターマン」に出てくるキャラにどことなく雰囲気が似ているのは、そういう理由だったんだなぁと合点しました。

ですが肝心の、彼を「ロボットにした理由」は、どこを探しても書かれていません。

こうなると、人は勝手な推測をしたくなるものです。「お城ボくん」はもしかすると変身できるロボットで、会津の変身(=さらなる繁栄、変革)を願っての比喩ではないか? もしくは、将来ロボットに城内を案内させるために今から人々に親しませるという緻密な計画を練っているのでは云々……想像を膨らませていたわけですが、会津若松市役所の観光課に問い合わせてみたところ、次のような回答がありました。

「特にこちらでロボットにして欲しいとお願いしたわけではないのですが、タツノコプロダクションの笹川さんが、仕事柄メカのデザインが得意とのことで、何度か会議をする中で決定しました」

あ、そうだったんですか。とまあ、意表を突かれた感じでしたが、とにかく納得しました。鶴ヶ城だけでなく、会津若松市のシンボルということで、会津駅などでも会えるそうです。今後、本当に動く「お城ボくん」も登場する日が来るかもしれないと期待しつつ、城を後にしました。

ちなみに、震災後の鶴ヶ城は例年と比べて3割程の客入りしかなかったそうですが、大型連休に入ってからは例年並みに戻ったそうです。よかった、よかった。

(文、写真=める)

参考:会津若松市観光「お城ボくん」PR(http://bit.ly/co729y