絶対オススメのインド料理店ですが、あえて写真は掲載しません。その店では写真を撮っても怒られないし、料理の写真をインターネットに掲載している人もいますが、それでもこの記事には写真を掲載しないでおこうと思います。

このインド料理店『コチンニヴァース』の料理は、「色」で感動を与えるからです。もちろん「味」と「香り」でも感動を与えてくれるのですが、他店にはないこの店だけの魅力は「色」なのです。その色は、あなた自身の目で見て感動を得てほしいので、写真は掲載しないと決めました。特にオススメしたいのが、サグチキン(ほうれん草とチキンのカレー)です。この料理の色はすばらしい。

深緑、エメラルド、コバルトブルー、このカレーの色をどのように伝えればいいのでしょうか? ほうれん草の素材そのものの色なのは確かなのですが、ほうれん草の緑色がさらに濃縮され、そして洗練された芸術的な色をしています。ほうれん草だけでは出せない色を、ほうれん草から生み出している。それはシェフの腕がなせる業でしょう。

実際に一口食べればわかるのですが、その色が物語る、濃厚かつ素材そのものの味を感じることができます。「ああ、いいものを食べているんだなあ」と実感するのです。その色は、味の面でも裏切りませんでした。いっさい余計な味はしません。ほうれん草とスパイスはいっさい殺しあうことなく、すべてがすべて、力を出し切った味をしています。

そのカレーを素朴なチャパティ(薄いパン)でいただく。まさにインドの家庭でしか体験できない色、味、香りです。チャパティもオススメですが、もっとオススメなのがパロタ(油分の多いパン)。

素朴なチャパティの控えめな態度とは逆で、パロタは一口目から自己主張してきます。それは激しいものではありません。なんとも繊細でありながら、脳幹を刺激する香ばしさ。パロタは、静かなる大胆な美味しさを秘めているのです。サグチキンカレーをつけて食べると、なんともいえない幸福感に包まれます。

『コチンニヴァース』の料理は、どの料理も繊細です。そして、昨今のレストランの味に慣れてしまった人にとっては、ここの料理は物足りないと感じる人もいることでしょう。しかしそれは、強い味付けをしてごまかすことなく、素材そのものの味を引き出している料理だからなのです。ぜひとも、一度行ってみてほしいインド料理店です。どうか色を楽しんできてください。

ちなみに、『コチンニヴァース』は住宅地にあるラーメン屋のごとく、非常に庶民的なお店です。大人数で行っても席も少ないし面積もないのでご注意を。

店名 コチンニヴァース
住所 東京都新宿区西新宿5-9-17 1F
最寄駅 地下鉄大江戸線・西新宿五丁目駅
定休日 火曜日