[公開直前☆最新シネマ批評]

映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは『127時間』。登山家のアーロン・ラルストンの同名著作を『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督が映画化。

ユタ州でクライミングの途中、大地の割れ目に落下。そこに岩石が落ちてきて右腕をはさまれ身動きできなくなってしまったラルストンが、自力で生還するまでの127時間を描いた本作。この映画のクライマックスは全米公開時も超話題になりました。(以下、ネタバレあり!)

あまりの生々しさに視聴者の中には、気分の悪さを訴える人、失神する人、救急車で運ばれる人が。そりゃそうでしょう、生きるために腕を切り落とすのですから。正直言って私、直視できませんでした! 顔そむけちゃいましたよ。

ボイル監督は人間の生を描いた映画なのに「間違ったイメージを持たれたくない」と真剣に懸念したそうですが、北米配給を担当したフォックス・サーチライトは「I KEPT MY EYES OPEN FOR 127 HOURS(僕は127時間ずっと目を開けていたよ)」というTシャツを作り、劇場で無料配布。この茶目っけたっぷりの宣伝は功を奏し、映画はますます話題になったそうです。

それにラルストン自身は腕の切断を実に明るく受け止めています。なんと腕を切り落とすとき、本人曰く「僕は笑っていたよ」と言うのです。「骨を折って、腕にナイフを突き刺していたが笑っていたんだ。最後に皮膚を切り離した時は、喜びで有頂天! 俺は生きている! という実感を持ったんだ」というラルストン。

そして生還後、ラルストンに向かって友人は「お前が腕を切り落としたって聞いたとき、あんまり驚かなかったよ。だってお前ならやりそうだもん」と言い、本人も「僕はサメ人間。動くのをやめると死んでしまうタイプなんだ。だから解放されたい気持ちが強くて、痛みなんてかまわなかったんだと思う」と。なんという明るさ! こういう人だから助かったのだと思わずにいられません。

映画はクライマックスに話題が集中しがちですが、ラルストン演じるジェームズ・フランコは全編に渡り、生死の崖っぷちに立つ男をチャーミングに演じていて素敵だし、ドキドキしながらもクスリと笑えるシーンもあるし、127時間(上映時間は94分)飽きさせませんよ、必見!(映画ライター=斎藤 香)

『127時間』

2011年6月18日よりTOHOシネマズシャンテ、シネクイントほかにてロードショー

監督:ダニー・ボイル

出演:ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ、アンバー・タンブリン、リジー・キャプラン、クレマンス・ポエジー、ケイト・バートン、トリート・ウィリアムズ

(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

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ライタープロフィール(http://bit.ly/hlZYAr