「最近疲れっぽい」、「日常生活はストレスが多くて癒しが欲しい」、「きれいな空気を吸いたい」など、都会に住んでハードな暮らしをしていると、こういった願いを持つ人が多いようです。そんな方に手軽に癒しをゲットできるプチ旅をご提案!

旅先は青梅! 新宿から中央線、青梅線に揺られて1時間半ほどで着いてしまう距離なのに、そこは緑いっぱいの世界。東京とは思えないほど、のんびりとした時間が流れているのも、青梅の良い特徴。おばあちゃんの田舎に降り立った感覚に陥ります。

青梅は近年昭和の町をコンセプトに、町おこしをしています。町全体で取り組んでいる様子を、いたるところで目にするので楽しいですし、懐かしさに駆られます。早速旅のコースを一緒に辿っていきましょう。


青梅駅に着いて、駅舎を背にタクシーロータリーを越えていきます。すると、すこし大きい(とはいっても二車線ですが)道路に突き当たります。そこを左に曲がって100メートルほど歩くと見えてくるのが「昭和レトロ商品博物館」。ここには懐かしい昭和レトロなパッケージが展示してあります。そのコレクションの数や、相当たるもの。

こちらで券を買うときに注意。ここで、青梅の駅前にある「昭和レトロ商品博物館」、「青梅赤塚不二夫会館」、「昭和幻燈館」の3館共通券を買うのがお得です。3箇所別々に券を買うと900円になりますが、まとめて買うと700円に! しかもこれらの3館はどれも押さえておきたいスポットなので、まとめ買いをオススメします。


昭和30~40年頃のお菓子、飲料、薬、化粧品などを中心に、建物内には所狭しと貴重な商品が展示されています。きっと「これ見たことある!」というパッケージがいくつかあるはず。昭和の時代から平成の現代まで製造されている、ロングセラー商品のコーナーもあります。良いデザインは時代を超えて、商品そのものの姿と共に愛され続けていることを実感します。


昔の『明星』などもそのまま置いてあり、読むことができます。「出しっぱなしにしておいて良いの?」と思えるほど、これらは幻の雑誌ではないでしょうか。書籍を含め、ここにあるコレクションはすべて有志による寄贈で成り立っています。「昭和の町おこし」に共感した、あの頃を生き抜いてきた人たちの協力があったからこそできた場所。


さて、2階もまたすごいです。実は青梅の地は、小説「雪女」に縁のある土地とされています。それをきっかけに、2階は雪女コレクションが充実。絵や資料、衣装まで各種取り揃えられています。この建物自体が木造で古いせいか、歩くと若干みしみし軋むあたりも、雰囲気があってなお良し。


お次は隣の「青梅赤塚不二夫会館」へ。玄関口には黄色いバカボンのパパがお出迎え。意外とオシャレです。これと同じ柄のポストカードを店内で売っています。他にはピンクやオレンジもあり、種類が豊富です。笑ってしまうようなお土産が多くて楽しい。

残念ながら、こちらは撮影が許可されておらず写真はありませんが、中は長時間楽しめるスペースとなっています。膨大な作品、イラストはもちろん、赤塚不二夫氏の歴史を細かく振り返ることができます。全作品をPCで読めるコーナーや、赤塚不二夫がまだ駆け出しの頃の机(板と雑誌を積み重ねて机にしていた)なども見られます。ファンでなくても寄って元気をもらいたい場所です。


3つの博物館めぐり最終章は「昭和幻燈館」。青梅の映画看板絵師だった久保板観氏の映画看板、映像美術やジオラマで有名なアーティスト山本高樹氏のジオラマ作品が展示されていて、内容はかなり豪華。


ショーケースの中に作られた、小さくも大きな世界観は見ているものを圧倒させる迫力を持つ。それと共に「作品の世界へ必ず1つは面白さを取り入れる」主義の山本氏が、ユニークな仕掛けをしているので、ジオラマの1つ1つを真剣に見てみるとさらに楽しめます。


色々集中して観終わった後は、休憩モードへ突入したいところ。昭和幻燈館の隣にある「住吉神社」に参拝して、神社の裏から線路の方へ抜けるコースが良いでしょう。こちらの住吉神社ですが、毎年5月2、3日の例祭(青梅大祭)で山車巡行が行われる神社で有名。


住吉神社を抜けると、車1~2台の通れる道に出ます。そして目の前は線路になります。線路はなんと1本! 進行方向(逆方向)を見ると青梅駅が見え、そこから複線になっています。道路には自転車を立ち漕ぎする中学生男子が何人も通過していきます。古き良き時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥るのも、この風景ならでは。

線路の上にかかる橋を渡ると右側に、何だか時代を感じさせる白い家が。ここは青梅を旅する際に、ぜひ立ち寄っておきたい喫茶店「夏への扉」です。80年代の終わりから営業している夏への扉は、働いている人とお店だけが年を重ね、他は何も変わっていません。昔ながらの扇風機で風を回し、木枠の窓は開け放たれ、線路を望むことができます。

アイスコーヒーとクッキーのセットをオーダーしました。クッキーは甘過ぎず、あっさりしたシンプルな味で、自家製だそう。カレーなど軽食も揃っています。都会の喫茶店との時間の流れ方の差を、ここにいるとまじまじと感じることとなります。ただ、ぼーっとして何も考えない時間は必要。心が洗われる時間でした。

遠そうですが、実は近い青梅。さらに電車で進んでいくと、奥多摩にも行けてしまいます。ゆっくりな癒し時間の欲しい方はぜひ1度、青梅ぶらり旅をどうぞ。

(取材、写真、文=sonoko0511