今回は最新シネマ批評始まって以来、初のインタビュー! ゲストは『シャンハイ』でスミコを演じる菊地凛子さんとミカエル・ハフストローム監督です。

映画『シャンハイ』は第二次世界大戦直前の上海を舞台にした大河ロマン。日本軍大佐タナカに渡辺謙、中国の黒社会のボスにチョウ・ユンファ、その妻にコン・リー。米国諜報員ポールにジョン・キューザック。ポールの親友の恋人で事件の鍵を握るスミコを演じるのが菊地凛子さん。まさにオールスターキャスト!

部屋に入ってきたハフストローム監督は穏やかでやさしそうな紳士。そして凛子さんは背が高くスラリとした色白美人! でも笑顔は少女のようで、いろんな顔を持っている感じはさすが女優! では、さっそく『シャンハイ』の話をば……。

凛子「最初、脚本を読んだ時、大戦直前の話ですし、政治色が強いかなと思っていたのですが、意外にもシンプルな愛を描いた映画。私が脚本で感じたスミコのシークレットな部分が、違う形で表現されていて、いい意味で裏切られましたね」

監督「そうだね、映画は、現場でどんどん変わっていくんだ。俳優さんとキャラクターをつめていくうちに、映画が違う道を歩み始める。今回は強力な俳優たちのおかげで、とても幸せなハプニングがたくさんあったよ」

凛子「イメージ通りにいったらつまらないですよ。思い描いていた世界が裏切られるからおもしろい! スミコはアヘン依存症という とてもチャレンジングな役でした。私は演じたことのあるキャラクターはやらないんです。新しいことをやって大きくなる実感を得たいので。いいタイミングで役とじっくり向き合える仕事をいただいて、とてもありがたい作品です」

監督「スミコはとてもタフな女性なので、凛子がピッタリだと思ってオファーしたんだ。渡辺謙さんと凛子はファーストチョイス! それが実現して本当にうれしかった。でもグラマラスな役じゃない。かわいそうな女性の役だったから、凛子には申し訳ないと思っているんだ(と、本当に申し訳なさそうな監督)」

凛子「そんなそんな……」

――複雑な事情を抱えた役を寝ている状態で表現するのは難しかったのでは?

凛子「とにかく集中力です。依存症の役なので、その状態に入っていくしかない。集中力を途切れさせないようにしました。しんどかったですよ。でもそのしんどさも楽しいというか…すごい集中している、私って女優だわ! なんて思ったりして(笑)」

――監督もいろいろ苦労されたのでしょう?

監督「もう、この映画の苦労話で本が書けるくらいだよ。なんなら日本語訳も出版しようか!? (笑)中国で撮影許可が下りなかったから、ロンドンとタイで撮影したんだけど、忙しい俳優の皆さんを二カ所のロケ地に移動させなくてはならなくて、大変な思いをさせてしまった。でも撮影そのものは楽しかったけどね」

凛子「そうですね。タイの駅での撮影は大勢のエキストラの方がいて、スケールの大きなシーンで印象に残っています。蚊が多くて、私は蚊にイッパイさされました。でも一緒にいたコン・リーさんは全然刺されない。女優って刺されないのか? なんて思っていましたね(笑)」

――ハフストローム監督とまた一緒に仕事を……という話などは?

凛子「監督とは友だちなんです」

監督「そう、友だちとしてスタートをきったんだ。まあ、この業界、何が起こるかわからないから……エキサイティングな企画と脚本で、凛子がおもしろいと言ってくれる物にしないとね」

「凛子に申し訳ない」とか「俳優たちに大変な思いを」とか、ハフストローム監督、いい人すぎです(笑)。最後に凛子さんと立ち話。よく見るWEBの話など聞いてみたら 、

凛子「映画関係のサイトはよく見ますよ。いちばん見るのは『ハリウッドレポーター』というサイトで、ここはいろんな情報が最速なんです。○○監督、映画やるんだ、オーディションあるかな? なんてチェックしています。(買い物は?)すごくします。私はアマゾンおたくです(笑)」

目の前の凛子さんは気さくでお洒落で素敵な女性。けど、映画では秘密を握る女スミコを熱演! そんな凛子さんの女優魂を見られる『シャンハイ』。人のいい(!!)スウェーデン人のハフストローム監督のサスペンスに見せかけて実はラブストーリーという技ありの演出も見ものです。

(映画ライター=斎藤香

『シャンハイ』
8月20日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開
監督:ミカエル・ハフストローム
キャスト:ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、菊地凛子、渡辺謙
2010,アメリカ、中国,ギャガ
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