最新シネマ批評のインタビューシリーズ第二弾は、韓国で2010年№1ヒットとなった『アジョシ』の主演俳優ウォンビンと実力派のイ・ジョンボム監督です。

来日時に羽田空港には250人余りのファンがつめかけ、韓流四天王ひとりである人気の高さを証明したウォンビン。しかし、ジャニーズ系の甘いルックスで守ってあげたいイケメンだった彼が、本作では鍛え上げられた肉体と俊敏な動きで激しいアクションをクールに決め、ワイルドに変身! 新たな魅力を見せています。

この映画はオファーを受けたのではなく、ウォンビンが自ら出演を熱望したそう。さっそく彼にその真意をたずねてみました。

――この映画には自分からアプローチしたそうですが、出演したと思ったポイントは?


ウォンビン
「とにかく脚本のおもしろさにひかれて出演したいと思ったのです。少女のために命をかける主人公テシクに共感できましたし、他人だったふたりが強い絆で結ばれるストーリーにも強くひかれました」


ところが、ジョンボム監督が書いた脚本は、中年男性が主人公でした。

――監督が、当初想定していたキャストはまったく違う人だったそうですね。


ジョンボム監督
「そうですね。中年男性が少女を守るというストーリーだったので、ソン・ガンホ、ソル・ギョングなどのキャスティングを考えていたのです。まさにそろそろキャスティングに取りかかろうというときに、ウォンビンサイドから、彼が興味を持っているようだと話があって、とりあえず本人に会ってみようということになりました」
――で、すぐに決まったのですか?


ジョンボム監督
「私がウォンビンにほれ込みまして(笑)、主人公の中年男性を30代の男性に変えました。でも変更はさほど大変ではなかったですよ。最初は自分の娘を殺された過去を持つ主人公だったのですが、その設定に少々手を入れたくらいですから」


――ウォンビンさんの素晴らしさはどのようなところですか?


ジョンボム監督
「最初はやさしいソフトなイメージを彼に抱いていたのですが、実際に一緒に仕事をしてみると、運動神経もいいし、アクションへの愛情もあり、小さなことでもいい加減にしない、とてもプロ意識の高い硬派な役者だと思いましたね」

ウォンビン「今回の映画では何ケ月も前から、トレーニングを開始しました。テシクは元特殊部隊要員なので、ターゲットをスピーディに一撃で殺す技術が必要なので、そのためフィリピンのカリやインドネシアのシラットなど3種類くらいのアジアの武術をミックスさせて、テシクの武術を作り上げたのです。自分自身が楽しんでアクションができたのが、よかったのでしょうね」

――ウォンビンさんはアクションシーンを楽しんだようですが、監督は?


ジョンボム監督
「待ち時間が長かったですね……。薬莢を壁にはめ込んだり、怪我人が出ないように殺陣の確認を丁寧にやっていたので、カメラを回すまでの準備にかなり時間を要しました。でもこれまで韓国映画にはなかったアクションシーンが撮れたと思いますよ」

本当に! 正直あまりにバイオレンスが強烈なので「見られない~」と目を閉じてしまうシーンも……。ウォンビンも監督もとてもやさしそうなのに『アジョシ』では別人。バイオレンスの鬼と化しています。

さて、今回、新しいウォンビンをスクリーンで見せてくれましたが、今後ウォンビンさんはどんな役をやりたいですか? と聞くと、

ウォンビン「これからも、そのときそのときの自分の心情にあった役を演じていきたいですね。自分にとっては脚本が最も大切なので、共感し、演じたいという役に巡り会えたら出演したいと思います」

――監督は、『アジョシ』の大ヒットでとても映画が作りやすくなったそうですね。


ジョンボム監督
「ネットで感動したというレビューが広まり、ヒットに繋がりました。おかげさまで、次回作を支援しますと言ってくれる方がでてきて、映画作りの環境が整ってきましたね。それまでは脚本を書き上げても、これ映画になるのかな?と不安になることばかりでしたから……」

そして監督の構想には『アジョシ2』もあるそうです。

ジョンボム監督「テシクがアジョシと呼ばれる男になるまで。特殊部隊要員時代の物語を作りたいと思っています。というか、これは結構実現の可能性高いですよ」

本作では、愛を失ったテシクが、少女(キム・セロン)を救うことで自身の中に封印されていた愛を取り戻す物語。物凄いバイオレンスアクションをこなしながらも、いつも寂しそうな瞳のウォンビンの強さと美しさにメロメロになる女子が多数現れそう。いま話題のチャン・グンソクの人気をおびやかすであろう、ウォンビンの底力、かなり強力ですよ!

(映画ライター=斎藤香

『アジョシ』
9月17日公開
監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ、キム・テフン、ソン・ヨンチャン、タナヨン・ウォンタラクン
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