[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回のピックアップは本日公開の映画で、いまや007でおなじみの英国俳優ダニエル・クレイグとハリソン・フォードが共演するSFアクション大作『カウボーイ&エイリアン』です。このタイトルを聞いたとき「B級なオバカSFかしら?」と思いました。西部のカウボーイとエイリアンですから、このミスマッチ感! ギャグにするしかないでしょうと。

ところが本作は意外にも真面目に作られた大作感たっぷりのSFアクション。それもそのはず、製作総指揮はスティーブン・スピルバーグ、製作はロン・ハワードというハリウッドの大御所で、監督は『アイアンマン』のジョン・ファブロー。このスタッフの名前だけでも大作感がヒシヒシと……。

原作はスコット・ミッチェル・ローゼンバーグの同名コミック。まだ企画の段階で90年代後半にスピルバーグらが映画化権を取得しました。「え、そんな前に手をつけた映画がなぜいま?」と思ったら、映画化にあたり脚本が立ち止まってしまったようです。何しろ本作の脚本には6人の人物が名を連ねているのです!
ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフ、マーク・ファーガス、ホーク・オスビー、スティーブ・オーデカクの6人はいずれも『トランスフォーマー』『アイアンマン』ドラマ「LOST」などに関わっていた辣腕スタッフ。オーチーとカーツマンは、最初はワクワクしたそうです。
「これまで見たこともないやり方で、ふたつのジャンルを組み合わせる可能性がありましたからね。その点にとてもワクワクしました、SFとウェスタンを同時に作れるチャンスに懸けてみようと思ったのです」(カーツマン)

ところがこれが至難の道の始まりでした……。
「タイトルを聞いて“よし、やろう!” と思ったのですが、実際に書こうとすると想像以上に難しいことに気付きました。自然に、当然のように、ふたつの世界を物語の中に織り込んでいかなければならなかったからです」(オーチー)

試行錯誤を重ねて苦しんだ脚本。その脚本を現実のものとしたのはファブロー監督でした。
「『アイアンマン』をやっているときに、このプロジェクトの話は聞いていました。私は両ジャンルを取り入れて、エイリアン侵略とウエスタンの世界、両方の典型的な形式を並列させて、新しい世界を作ろうと思いました」(ファブロー)

これまで一緒に語られることがなかったエイリアンとカウボーイの物語に監督は真正面からひたむきに取り組んだのです。新しいジャンルの映画にするために……。
その挑戦が実を結び、本作は「ギャクですか?」と勘違いされそうなタイトルながら真面目で大作感たっぷりのSFアクションに仕上りました。ファブロー監督の真面目さが映画の中にたっぷりつまっているのですね。

ちなみに監督は「キャストは最初に決めた役者たち」と語っていますが、噂ではロバート・ダウニーJr.に決まりかけていたけれど、彼はシャーロック・ホームズの映画があり降板。かわりに「ぶっきらぼうでハンサムなスティーブ・マックイーンのような俳優」と、監督が評価するダニエル・クレイグに決まったとの話も。
英国俳優がカウボーイ? と思ったものの、彼の青い瞳とあまり泥臭さを感じさせないカウボーイ姿は、純粋な西部劇だとかなり浮いていたかもしれないけど、この奇想天外なSFアクション・ウエスタンの世界では、不思議さを醸し出していてよかったですよ。
(映画ライター=斎藤 香

『カウボーイ&エイリアン』
10月22日公開
監督:ジョン・ファブロー
出演:ダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、サム・ロックウェル、オリヴィア・ワイルドほか
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