[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはトム・クルーズ主演の人気シリーズ『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』です。お正月映画として最大の話題作ゆえ、トム・クルーズも来日し、大々的にキャンペーンをしていたので、ご存知の方も多いでしょう。

このシリーズは毎回、監督をかえながらも、スパイ・アクション映画として成功を収めています。第1作目はブライアン・デ・パルマ、2作目はジョン・ウー、3作目はJ.J.エイブラムスと組んで成功をおさめてきましたが、今回はピクサー映画『レミーのおいしいレストラン』『Mr.インクレディブル』のブラッド・バードが担当しています。

トムがドバイの超高層タワーから落下するアクションをスタントなしで行ったことが話題の本作。スタント・コーディネーターは「トムは何でも自分でやりたがるんだ。危険だし、スタントマンに任せようと言ってもダメなんだ」と語っています。が、しかし、バード監督はトムに挑戦してもらって良かったと思ったそうです。

「トムにトライしてもらって思ったんだ。本物が演じていると緊迫感が生まれる。恐怖に落ちる表情ひとつとっても演技が必要になるだろう。見ればわかるよ、あれはスタントマンじゃない。やはりトムがやっているんだって」

試写を見て、記者も「確かにすごいなトム!」とは思いましたが、スタッフに「そこまでやらんでも……」と言われるほど危険なシーンに、トムが挑むのはなぜか。ジャッキー・チェンにでもなりたいのか? 答えは「楽しいからやるんだよ」とアッサリ。

が、しかし、トムは本作のプロデューサーでもあり、何でも自分で仕切らないと気が済まない人というのは有名。宣伝にも口を出すという噂があり、自分の映画をヒットに導き成功させるためには何でもするのがトム・クルーズ。

そんなオレ様のトムですから「楽しいから……」というのは表向きで、たぶんスタントマンに任せて、イマイチ迫力に欠けるシーンになったら「納得できん!」というのが本音だと思います。オレ様というのは人にお任せできない性分ですから。

でも確かにあのシーンはすごいです。世界一の超高層ビルから飛び降りるのは、自殺に近い行為、相当怖いはずです。トム・クルーズの「何でもオレ!」の仕切り屋Sの一面と、「ゾクゾクするぜ!」と恐怖を楽しむMの一面が交錯するシーンとも言えるでしょう。ミッションシリーズでいちばんトム・クルーズがよくわかる映画かも?

このシリーズが始まった当初はあの名作ドラマ「スパイ大作戦」の映画化ということで、海外ドラマファンも大期待。結果、まったく違う「スパイ大作戦」になってしまい、ドラマファンはガッカリでした。でも本作はリリースされるごとに話題を集め、世界中でヒットし、イーサン・ハント役はトムのライフワークに! もうドラマ「スパイ大作戦」からは離れたひとつの「ミッション:インポッシブル」という世界を作り上げたのです。

今回も、畳みかけるアクションシーンの数々は工夫が凝らされ、まったく飽きずに楽しむことができます。まさにザ・エンターテインメント! ま、スパイのわりには目立ち過ぎ……という点には目をつぶりましょう。

(映画ライター=斎藤香

12月16日公開
監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、ポーラ・パットン、ミカエル・ニクヴィストほか
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