あなたの母校には、二宮金次郎(二宮尊徳)像が建っていませんでしたか? 薪を運びながら本を読むその姿は、努力家・勉強家の模範であり、彼のように時間を惜しんで勉学に精を出すようにと教えられたものです。

ところが、東京のとある場所には薪を背負ってはいるものの、ベンチに腰掛ける金次郎の姿が。しかも手にしているのは、電子書籍リーダーではないですか。すぐにでも立ち上がらせて、「働け!」と言いたくなってしまうほど、落ち着いたたたずまい。それだけならまだしも、彼が手にして読んでいるものが……。

金次郎は、農村復興政策を指導した農政家・思想家として知られています。彼は若くして両親を失い、親戚に身を寄せて農業に励むかたわら、勉学に励み、20歳で生家を立て直したそうです。

彼の生きた江戸後期、田畑を失っているにも関わらず、家を再興するのは大変な困難が伴ったに違いありません。増してや若き身、血のにじむような努力を自らに強いたはずです。現在でも、彼の姿勢から学ぶことが多いでしょう。学校や公共施設に建てられている金次郎像は、そのことを物語っています。

しかし、東京・紀伊国屋新宿本店の像は、薪を背負ったままベンチに座っています。たしか私(記者)の知る金次郎は、時間を惜しんで働き、勉強していたはずなのですが……。しかも手には電子書籍リーダー「SONY Reader」が。

驚くべき事実はそれだけではありません。金次郎は何を読んでいるのかな? と覗いてみると、書籍の「お試し版」の選択画面が開かれているではありませんか。つまり、何も読んでいないのです! 「おい、金次郎! 勉強しろよ! その前に立て! 立ち上がれよ!!」と絶叫したい気持ちになってしまいます。

実はこれ、同書店とSONYが電子書籍を訴求するために、2011年10月に店頭に置いたものなのだそうです。「勉強家金次郎も、仕事のかたわらに愛用している」というメッセージを伝えたかったのでしょうか。大変インパクトはあるのですが、「金次郎が怠けている」という印象を与えかねません。

ちなみに、東京・八重洲ブックセンターの店頭には、金色に輝く二宮金次郎像があります。こちらはしっかりと立って、手に本を持ち勉学に励んでいる姿です。やっぱり金次郎には立っていて欲しいと思うのですが……。

(文、写真=チャーミー)

▼ 金次郎! 立て! 何を読んでいるんだ!!

▼ 何にも読んでね~