女子なら誰だって、『バービー』で遊んだことがあるはずですよね。アメリカから来たちょっとゴージャスなこのドールに託すのは、小さな乙女の大きな夢。素敵な彼氏に素敵なお洋服、素敵なお部屋……いま、どんなに貧相なアパートに住んでたって、いつか人生ひっくり返してやるから。そんなほんのりダークな情熱さえ、ときにはこの1体のドールに込めたりするものです(実話)。

一方、最近ではそんな『バービー』で身も蓋もない悲惨な現実を表現する遊び、言ってみれば「夢こわし系」のバービーネタも、長引く世界的な不況を反映してか、アメリカを中心に最近増えてきています。以前Pouchで紹介した「バービーの汚部屋」もそうでした……。今回ちょっと話題になったのは、「まるでうれしくない日常を生きる」バービー!

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某ファストフード店の衣装を身につけ、フードを運ぶバービー……ですが。よく見ると、パッケージのタイトルは「Minimum Wage Barbie」……「最低賃金バービー」!! 法律で定められたギリギリ最低ラインのお給料で生きてるバービーなのね! アメリカ平均だと時給600円弱(2012年3月現在)、そりゃまたなんて夢のない!!

某ファストフードがどうこうというのでなく、いつまでたっても社員になれず賃金も最低のままということは、仕事が長く続かない子だっていうことなのでしょうね……。

ドルが飛び去る柄(芸が細かいね!)のパッケージには、ほかにこんなことが書いてあります。

【GIRLS! This will be you if you don’t study!】
ガールズ! おべんきょうしないとあなたもこうなっちゃうよ!

Collect the Whole Set!/セットであつめよう!
・Barbie’s Low-Rent Apartment
バービーの、やちんのやすいアパートのおへや

 ・Barbie’s Thrift-Store Wardrobe
バービーの、リサイクルふるぎばっかりのクローゼット

Deadbeat Ken Sold Separately
別売りの「はたらかないケン」もよろしくね!

小さいうちからなまけてばかりいると、こんなふうに生きてくことになっちまうぞ、っていうかなり衝撃的なメッセージ! 子供に勉強させるのにいいかもしれないけど、こんなもんが誕生日プレゼントのハコから出てきたらギャン泣きですよね。

もちろん、こんなアブナイものが売られているはずもなく、アメリカで作られたと思われるネタ画像です。ただし、なかのドール自体はM社とバービーのコラボから生まれた実在の製品。ううむ、こうしてみると「最賃バービー」は「夢の存在のバービーを、バイトで働かせてくれちゃってんの?」というファンからの抗議に見えなくもありません。

そしてこれが実際のマクドナルドバービー

外資系コンサルタントに勤めるジョナサン氏に、その背景をちょっと解説してもらいました。

「アメリカの非正規雇用者の悲惨さといったら、日本の比じゃない。日本のファストフードチェーン店は学生とか主婦とかが働いてて文字通りパートタイムジョブなんだけど、うちの国のは『それしか行き場がない』ってやつらが働くところでもあるのさ。特にカウンターで接客してるってのはまあ……ご想像のとおりだ」

この画像自体はどう思います?

「僕としては「はたらかない(deadbeat)ケン」ってのが最高だよ。アメリカでも、美人でおつむのちょいと足りない女子は、仕事しない暴力男にひっかかるのがお決まりなのさ。ホイットニー(=ヒューストン)なんかその代表だ。ほんと不思議だよね」

(取材、文=纐纈タルコ)

画像:ebaumsworld.com(http://goo.gl/DGq35