[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは小山宙哉の人気漫画の実写映画化『宇宙兄弟』です。先週の『テルマエ・ロマエ』に続いて、漫画の実写映画化が人気ですね。漫画には熱狂的なファンがいるので実写化は楽しみな半面リスクも大きいと思うのですが、話題性はありキャスティングがバッチリはまると大ヒットするのも強みです。『テルマエ・ロマエ』も大ヒットスタート! さて、これに続くでしょうか『宇宙兄弟』!!

幼いころUFOを目撃し、「いつか宇宙へ行こう」と約束していた六太と日々人。19年後、日々人は若き宇宙飛行士になったけれど、六太は自動車会社をクビになり無職に。宇宙で飛び立とうとする日々人と対照的にモタモタしている六太。そんな兄に日々人は「ムッちゃん、行かないの?」と……。そして六太は宇宙を目指すことに。

できる弟にコンプレックスを抱く兄という設定はよくありますが、兄弟の葛藤の背景を壮大な宇宙にしたことで、物語も映画的ビジュアルも大きく広がりを見せています。何より興味深いのは、宇宙飛行士になるために六太がチャレンジする数々の試験です。とりわけ閉鎖環境試験は、一見ゲームのようだけれどキツイ!

窓のない宇宙船のような閉鎖的な空間で、監視されながら6人の宇宙飛行士志望者がミッションをクリアしていく。チームワークは必須だけれど、わざわざ裏切り者を作りだすようなミッションをしかけられて、さあ、どうする究極の選択! というシーンにはハラハラします。これは実際に宇宙飛行士になるための試験にかかせないそうです。モーニングの公式HPでは、宇宙飛行士の油井 亀美也氏が、閉鎖環境試験の様子について語っています。油井氏は自衛隊のハードな訓練に耐えてきた方なので、閉鎖環境試験も快適だったそうですが……。

小栗旬、岡田将生、麻生久美子、濱田 岳ら人気俳優が出演していますが、そのなかでちょっと異色なのが、米国で六太に宇宙の素晴らしさを語るアメリカの老人。「誰? 稲川素子事務所の方?」と思ったら、なんと映画でも有名な「アポロ11号」の乗組員のバス・オルドリン氏なのです。あのニール・アームストロングの次に月面を踏んだ男だそうです!

すっかりおじいちゃんですが、米国では今でもヒーロー。ちなみに『トイ・ストーリー』の人気キャラクター、バズ・ライトイヤーのバズという名は、彼から取ったそうです。六太の心を揺るがすというワンポイントですが重要な役。けっこうセリフもあるのですが、さすが米国のヒーローは堂々としたもの。本当に月へ行った男なだけに説得力があります。

選ばれた者だけが実体験できる宇宙空間。諦めかけた夢を六太がどうやって乗り超えるのか、弟と宇宙へ旅立てるのか……。夢を叶えるなんて言葉にすると恥ずかしいけど、この映画は真正面から夢を叶える力を押しだしていて、爽快! クラインクイン3日前に六太を演じるためにアフロヘアにしたという小栗旬。彼が凄くいい芝居で、映画をぐいぐいリードしているのも必見ですよ。

(映画ライター=斎藤 香


『宇宙兄弟』
5月5日公開
監督: 森 義隆
原作: 小山宙哉「宇宙兄弟」(講談社『モーニング』連載)
脚本: 大森美香
キャスト: 小栗 旬、岡田将生、麻生久美子、濱田 岳、新井浩文、井上芳雄、塩見三省、堤 真一
(C) 2012「宇宙兄弟」製作委員会
参考元:モーニング公式サイト宇宙兄弟コラム