近年テレビで人気のシェフといえば、川越達也氏。彼がシェフを務めるイタリアンレストラン『TATSUYA KAWAGOE(タツヤ・カワゴエ)』は、予約をとるのも数ヶ月待ちという人気ぶりです!

でもでも、その人気ってテレビに出演しているからでしょ? 本当においしいの? そんな疑問がいつも脳裏をよぎっておりました。やはり一度は食べてみたいと思いまして、先日レストランがある東京・代官山へ足を運んでみることに。

さあて、どんなお料理が出てくるのかしら♪

【シックで落ち着いた客席】 (※やや暗所のため画質が荒く大変申し訳ない)
店内はブラックやレッドを基調とした洗練されたシックな雰囲気。テーブル席のキャンドルが周囲を淡く照らし出し、とてもロマンチックです。恋人と一緒なら、思いっきりこの雰囲気にのまれてしまいたい気分ですわ。

今回通された席は厨房の隣にあり、料理を作るスタッフの顔が見えるようになっています。これは川越シェフをひと目見るチャンスだわ! と思ったら、残念。この日たまたま本人不在でお会いできず。仕方ないけれど、やっぱり残念。

まあまあ、ここは気を取り直して!

【コース “今月のお料理” を注文】
さて、ディナーはふたつのコースがございます。軽めのコース(5,500円)と、今月のお料理(7,700円)。もちろん記者は後者をセレクト。メニューの内容は、川越シェフと同レストランにいらっしゃる成田シェフのおふたりで考えているんだそうですよ! 楽しみ~っ!!

【奇抜なネーミングの料理名があるかも?】
そうそう、忘れちゃいけない。

以前、「カワゴエ・レストランはメニュー(の料理名)が奇抜!」とネットで話題になっていたのです。そのとき話題になってた料理名というのが、「ゆっくり歩いてきた仔牛」でした! な、なんと具体的な! のどかな田舎道を歩く仔牛の姿が目に映るようです!

確かに、フレンチやイタリアンって料理名に素材名を入れるなどして具体的に表現することが多いけれど、それにしてもなんと斬新な表現。川越シェフならではというか、遊び心たっぷりで彼のユニークな人柄が伝わってくるようです。

ちなみに記者が注文した今月(6月)のメニューは次のとおりでした。(その日の仕入などによってもメニューが変わるそうです)

・とうもろこしで育てた『成田の卵』
・冷静フェデリーニ、フルーツトマトとシマアジ。
・牛フィレ肉の朴葉(ほうば)焼き、ヘーゼルナッツのピュレとズッキーニ。
・新レンコンのリゾット葉わさび風味、豆とホタテ添え。
・黒ムツの『トム ヤム クン』成田風。
・大山鶏のソテーとそのクネル添え。シェリービネガーとパセリのソース。
・エアリーなレモンのタルト。
・メレンゲの気持ち。ゲストは「ショコラとチェリー」
・オリジナルハーブティー

一見普通のメニュー名かな? かと思いきや、スイーツの名前はバラエティ番組のよう! ……っていうか「メレンゲの気持ち」ガチ番組名でしたわ。「成田の卵」っていうのは、そう、成田シェフの名前が由来。また、「トムヤムクン」の間の全角スペースも、そんなん強調したかったんか! と思わずツッコミたくなるジワジワ感たまらない。

【 さて、 実 食 !】
まず結論から伝えておきたい。記者も幾度となく、星がいくつか付いたレストランで美味しいものを食べてきてはいるけれど、このようにユーモアにあふれたレストランは始めてでしたわ。

ひとつひとつの料理への凝ったアイディア、意外性、エンターテイメント性、風味、総合的なまとまり、すべてにおいて素晴らしい。とにかく、もう楽しくて仕方がないっ! お客さまを「どれだけ喜ばせられるか」という信念のようなものが伝わってくるようです。

それでは長くなりましたが、味のレビューご覧あれ。(※重ね重ねお詫びしますが画質が悪くて大変に申し訳ないっ!)

<パン+アンチョビソース+豚肉のリエット>
パンにはシンプルにオリーブオイルやバターなどが付いてくるのが一般的かと思いますが、「アンチョビソース」や「豚肉のリエット」の2品付いてきました。アンチョビとレバーペースト好きな記者にはのっけから嬉しいサービス。ビジュアル的にも最高のおもてなしをされている感満載で嬉しくなっちゃいます。

このアンチョビソースにはバターやクリームが入っているそうで、濃厚ながら上品な風味! 一般的なバーニャカウダソースよりも、濃厚でまろやかで一度食べたら止まらなくなる。パンにこんなにも合うなんて衝撃的。

さらに、豚肉のリエット! 何度もいうけれど、本当レバーペースト好きには本当にたまらない嬉しい一品なんですわ。

なんというかもうね、コレですよコレ! こういうの待ってたんです! って感じデスわよ。口のなかは旨みでいっぱい。思わず「ひゃああぁあぁ」って心のなかで叫びました。最初っから、こんなに喜ばせちゃって大丈夫なの? と余計な心配したりして。

「味のエンターテイメントとは、こういうこと!」って川越シェフにアドバイスしてもらってるみたいで、それもまた楽しい!

<とうもろこしで育てた『成田の卵』> (※本当に画質が荒くて本当に申し訳ない)
さて、お次は気になっていた成田シェフの名前が付いたお料理。

ポタージュ風味のもったりっしたスープ(ソース)の上に、贅沢にもトリュフのスライスが乗っているではないですかっ! (こんなにたくさんスライストリュフ食べるの初めてかも……ゴクリ)。


中央には、卵黄が……と思って崩してみると、なんと出てきたのはとうもろこし風味のクリーム! まったりとした優しい甘みのあるポタージュスープを飲んでいるかのよう。トリュフの深い風味が全体の風味を上品に整えてくれます(もう、たまらんっ!)。

<冷静フェデリーニ、フルーツトマトとシマアジ。>
さて、お次は新鮮なシマアジと、冷静パスタ。フェデリーニは、細めのスパゲッティのこと。丸く大きなガラス皿の中央に盛られ、煮こごりのジュレやキュウリなどが散りばめられており、初夏にピッタリの爽やかなイメージです。

紫蘇(しそ)のピンクのお花が散りばめてあり、彩りがとてもキュート! 食べる前からワクワクします。

ぷりっと新鮮な肉厚なシマアジ。ほのかな紫蘇の風味とあいまって、シマアジの旨みがいっそう引き立つ!

さらにパスタ。爽やかで甘みのあるフルーツトマトのソースが絡んだ優しい風味に、思わず微笑んでしまう! ひとつのプレートでいろんな歯ごたえと風味を楽しめる贅沢さも楽しくてたまりません。

<牛フィレ肉の朴葉(ほうば)焼き、ヘーゼルナッツのピュレとズッキーニ。>
うわあ、何かが葉っぱに包まれてる! 包みを開く楽しさって、どうしてこんなにも好奇心をかきたてられるのだろう。これまた、見た瞬間に期待させられちゃいます。

焼かれてカサカサになった葉っぱの包みを開いてみると……。

分厚い牛肉のステーキでした! その上にはお味噌風味のソースが乗っていますよ。

切ってみると、中は超レア! 口に入れると、わあっ! まるで溶けちゃうくらいに柔らかい! 甘辛い味噌ソースの風味が、なんだか懐かしい気分にさせられます。なんて相性抜群の組み合わせだろう。さらに、付け合せのジューシーなズッキーニとヘーゼルナッツソースが、口中に広まった味噌の甘みと肉の旨みを適度にリセットしてくれます。交互に食べるとそれらが渾然一体となって、幸せすぎですわ。ふむーっ(旨すぎて悶絶)!

<新レンコンのリゾット葉わさび風味、豆とホタテ添え。>
さあて、お次は、まろやかなリゾットと肉厚ホタテ! 見た目的にひと口サイズかなと思いきや、なかなかどうして食べ応えがある一品でした。

ホタテはプリップリ! こんな肉厚ホタテ、そうそう食べられるものではないです。ちなみに、上に乗ってるのは白インゲンですって。こんなのがあるんですねえ!

リゾットは、シャキシャキレンコンと爽やかな葉わさびが入っていて、リゾットとしてはもっすごい斬新かも! いつもリゾットといえば定番ポルチーニダケ入りを注文する記者ですが、このレストランに来てからというもの、新しい組み合わせや発見が多くて楽しくて仕方がありません。


<黒ムツの『トム ヤム クン』成田風。>
とうとうきました。メニューを見てからずっと気になっていた、「トム ヤム クン 成田風」! 全角スペースが入ったトムヤムクンの強調っぷり、いったいどんなのが来るというのか。

目の前に差し出された料理を見てびっくり!

スープの上には、なんと、黒ムツがデーンと乗っているではないですか! ……え、えーと、これは、トムヤムクン……なんですか? どう見ても海老が入っているようには見えないのだけれど。

と思って、スープをひとすすりすると……!! 完全なるトムヤムクン! しかもめっちゃ、コクがあって本場さながら! そう、記者はタイ料理好きでもあるので、まったく違うトムヤムクンが出されたらシェフにひと言モノ申そうと思っていたのであーる (冗談です)。

気になる黒ムツを食べてみると……これがなんと、驚愕の旨さでありました。皮はカリカリしていて香ばしく、塩加減もちょうど良い。さらに、身がふっくらと柔らかいこと!! 何度目でしょうか、ここに来てから衝撃を味わうのは。しかもこれがまた、スープと良く合うんです。しっかりトムヤムクンという伝統の味を引き継ぎつつ、香ばしい焼いた魚を入れることで、より日本人好みの一品に仕上げている。

きっと、洋食やエスニックが苦手な方でも、思う存分食を楽しむことができるだろうなあ、と確信した瞬間でした。

付け合せはパクチーではなく、西洋パセリが用意されていたので……


パクチー大好きな記者は当然ながら、パクチーだと思ってごっそりとスープに投入しました。ここは、やっぱりパクチーであってほしかった。ちなみに先述でもご説明したとおり、料理名の「成田」は、成田空港でもなく成田市でもなく、シェフのお名前です。

<大山鶏のソテーとそのクネル添え。シェリービネガーとパセリのソース。>
まだまだお料理は続きます。お次は、大山鶏のソテー! パセリのソースの緑色が美しい。クネルとは、いわゆるペースト状にしたものです。


鶏の皮が、これまたカリカリッと良く焼きあがっております。お肉はもちろん柔らかくて、めちゃくちゃジューシーッ! そこに、シェリービネガーやパセリのソースをつけると風味が複雑になり、より完成された料理になりました。うーん、たまらない。っていうか、このラインナップ、ちょっと贅沢しすぎやしないかしら、なんて。うふふ。


<川越サービス 万願寺とうがらし+からすみのパスタ>
お次はですね、なんとなんと、ご要望であれば出してくれるかもしれないし、ないかもしれない、とにかくメニューにはない川越シェフからのおもてなし一品料理。サービスなんだそうです……って、え、こんなに食べてるのに、いいの!? って感じでした。

記者は食べてみることにしました。だって気になるもの。もっとKAWAGOEレストランを満喫したいもの! もっともっとワクワクしたいもの! ってなわけで、頂いたのがこちら。

これがもう、口当たりがまったーりとしてヤバイほどに旨みが凝縮されておりまして、すっかり気に入ってしまいました。願いが叶うならば、もう一回食べたいくらいですわ。

上に乗っているのは、京野菜の「万願寺とうがらし」というもの! 始めて食べたのですが、程よくピリっと辛味が利いて非常に口当たりが良いのです。万願寺とうがらしが欲しくなりました。東京でもスーパーに売ってるのかな。さらに、パスタには「からすみ」がたっぷりと絡められていて、も、もう、魚卵好きには、グウの根も出ない風味に! 大変に品の良い、大人のパスタです。

さらに、なんと、トッピングするための“からすみ” のフレークまで付いてきました。ぜ、贅沢っ! 欲を言えば、かなり薄くてもいいのでソーサーの周りに“スライスからすみ” があれば!! なんて思うのは、さすがに図々しいですよね(笑)。

もちろん、からすみフレークを惜しみなくパスタにかけます。まるでチーズでもかけるように! そうか、チーズのかわりにもなっているのですな。とにかく、今回のコース料理のなかで、この思いがけない川越シェフのおもてなしパスタは大変心に残るものとなりました。まったりとしたあの風味、未だに忘れられません。自分で作れたらどんなに良いか!

<エアリーなレモンのタルト。>
はい、一連のにぎやかな食事が終わり、デザート。“エアリー” って、なんだか川越シェフっぽくて思わず笑っちゃいました。

で、いったい何がエアリーかっていうと……。この上にかかっているもの、なんだかわかりますか? 実はこれ、「パチパチ」です! 正式名称はしらないけれど、ほら、子供の頃食べませんでしたか? 口に入れるとパチパチはねる、あれです! あれが乗っていて、口に入れるとパチパチって、もっすごい懐かしい感触が楽しめるのです。

意表を突かれて、思わず顔がほころぶ記者。とても良い時間が過ごせていることにも、思う存分幸せを感じちゃいましたわ。これは、成田シェフのアイディアだそうです。さすが、川越シェフに任されているだけある!

香り高いレモン風味のクリームの下には、タルトが入っています。まったく違う食感が楽しめる一品。いろんな味覚と素材を堪能したあとに食べるレモンのタルトは、口直しとしても良い役目果たしてます。

<メレンゲの気持ち。ゲストは「ショコラとチェリー」>
さらに、デザートふたつめ! もったりしながらも爽やかなチェリーのジェラートとショコラが、ディナーの〆にぴったり。

実は、このショコラクリームのなかにチェリーが丸ごと入っているのです。細部に渡ってサプライズに余念がない、川越シェフと成田シェフのおもてなしに、記者も最後の最後まで感激しっぱなしでした。すでにお腹はいっぱい、ごちそうさまっ!


<オリジナルハーブティー>
さて、最後はハーブティでまったりと過ごしながら食べたものをひとつひとつ思い返す。これで7,700円って安いとさえ思ってしまう。テーマパークにでも来たかのような一連のメニューに、レストラン『タツヤ・カワゴエ』の魅力をひしひしと感じました。ここに来れば想像以上に充実した時間が過ごせるわけで、月一で来ても良いかもしれない、なんて思っちゃったり。

実はこの日、男性とふたりで来店した記者。といえば、なんだかステキな響きだけど相手は残念ながら恋人ではございませぬ。日頃あまり口を交わすことのない調理師免許の資格を持つ同僚男子(妻子あり)だったのですが、数々の華やかなレパートリーのおかげで珍しく笑顔と会話が尽きませんでした。これがありきたりのお料理だったら、きっともう二度と会話をすることはなかったのではないかと思うほどに、お料理に助けられました、はい。

そんな、ちょっと気まずい人間関係でも楽しく優雅に過ごせる、さらに食べる楽しみを本気で思う存分教えてくれるレストラン、それが『タツヤ・カワゴエ』の魅力だということが今回よくわかりました。みなさんにも川越シェフと成田シェフの本格エンターテイメント料理、ぜひご賞味になってみて欲しい。

(写真、文=メル凛子)

撮影機種:iPhone4

▼シャンパンで乾杯〜っ♪