"London" by Pet Shop Boys

4年にいちどのスポーツの祭典、ついに開幕ですね! みなさんは誰と楽しんでますか? わたくし(記者)はもちろん、酒瓶とふたりきり。テンション上げて深夜まで、テレビに向かって全力で応援しています!(でもアパートだから小声)

さて、今回のオリンピック開催地はロンドン。美しい街並みや新しい建築、長い歴史や優れた音楽にデザインなど、食べ物以外のあらゆるものがとっても魅力的な古都です。ひかえめな性格の人々や彼らのつくる文化は日本人にとってなじみやすく、どことなく共感を覚える土地柄でもあります。

そんなロンドンを、イギリスが誇るブリティッシュ・ロック/ポップからも楽しんでみましょう!

イギリスといえばまずはロック、とお考えの方も多いはず。ビートルズやローリング・ストーンズを筆頭に、イギリスのミュージックシーンはじつに多種多様な音楽作品を世界に発信し続けてきました。

そして、あまたある名曲の中には、首都たるロンドンの街をテーマにしたものもまた多数存在します。ロンドンの雰囲気を伝えてくれるような曲、そこで生活する人々の姿を描く曲。いろんな「ロンドン」を聴きながら、日本選手たちが熱い闘いを繰り広げる地球の裏側に思いを馳せてみましょう。

ただしそこは雨と霧の街! あんまり明るい曲はないから注意だよ!

01. 『ロンドン』/ ペット・ショップ・ボーイズ
London by Pet Shop Boys

1985年に『ウエスト・エンド・ガールズ』(これもロンドンの歌!)でデビューして以来、一貫してビッグヒットではなくとも愛らしいポップソングを発表し続ける職人気質の2人組。ロンドンにやって来たロシア人の若者を歌ったこの曲、ロンドンの街のいたるところが映されるPVが見ものです。なお、彼らはオリンピックの応援歌『ウイナー』を発表しています。

02. 『ボーン・スリッピー(ナックス)』/ アンダーワールド
Born Slippy(nuxx) by Underworld

ロンドン五輪開会式の音楽監督を務めたテクノ2人組・アンダーワールド。出世作であるこの曲は、これまた開会式総合演出を務めたダニー・ボイル監督の出世作『トレインスポッティング』の主題歌でした。ロンドンのテーマ曲かっていうぐらいの有名曲ですが、歌の内容は表向きロンドンにいる「酔っぱらい」、実際はおくすり好きの子の寝言。ある意味でロンドンの日常を正しく描いています。

03. 『ニュー・ロンドン・アイ』 / エイジアン・ダブ・ファウンデーション
New London Eyes by Asian Dub Foundation

かつて広大な植民地を誇ったイギリス。ロンドンには、それら旧植民地からやってきたさまざまな民族の人々とその子孫が多数暮らしています。ADFは、インドやバングラデシュの移民の子弟たちが作ったミクスチャー系のユニット。マイノリティが抱える問題や不満などを織り込んだ攻撃的な音楽で人気です。ロンドンの大観覧車「ロンドン・アイ」から名前を頂戴したこの曲、PVは超有名なネズミさんのカブリモノをした若者がいろいろやらかすという、かなり気まずい仕上がりです。

04. 『ロンドン・タウン』/ ポール・マッカートニー&ウイングス
London Town by Paul McCartney & Wings

開会式では口パクを拒否して「ヘイ・ジュード」を生で歌った元ビートルズのポール・マッカートニー。イギリス最大の輸出品とさえ言われるビートルズですが、出身がリヴァプールであるからか、あまりロンドンっぽい曲は残していません。かわりに、雨のロンドンをテーマにしたポールの曲をどうぞ。明るい性格のポールなのにロンドンを歌うときは暗い、それもこの街の特徴なのでしょう。

05. 『ロンドン・コーリング』/ クラッシュ
London Calling by The Clash

1970年代イギリスにおけるパンク・ムーブメントの中心バンド・クラッシュ、その代表曲です。叩きつけるような演奏に暗めの旋律、そして政治的な歌詞という構成で、失業率が高く若者たちが不安や鬱憤を強く感じていた70年代のロンドンの雰囲気を色濃く反映しています。ロンドンと言われるとこの曲を思い浮かべる方も多い模様。タイトルは「こちらロンドン」という無線などでの呼びかけを表します。

06. 『ホバート・ペイヴィング』 / セイント・エティエンヌ
Hobart Paving by Saint Etienne

1990年代からずっと、純正ブリティッシュ・ポップといった趣きのおしゃれ系ポップソングで人々を和ませ続ける男女3人組。メランコリックなバラードのこの曲、直接ロンドンを指す言葉は出てこないものの、タイトルがロンドン南部に実在する道路舗装の会社の名前であるなど、ロンドンのありふれた風景を背景としています。PVではロンドン市街のさまざまな光景がモノクロで流れていきます。

07. 『セメタリー・オブ・ロンドン』/ コールドプレイ
Cemeteries of London by Coldplay

iPodのCMで使われた「美しい生命(Viva la Vida)」があまりに有名なこのバンドも、ロンドン出身。影響を受けたバンドにノルウェーのa~haを挙げるだけのことはあり、作り出すサウンドはどこまでも美しくかなりの程度陰鬱。アルバム「Viva la Vida」収録のこの曲なんて「ロンドンのお墓」ですよ、お墓。でもやっぱり美しいサウンドとその暗さ、それこそはまさしくロンドンの雰囲気。(アルバム曲のため、PVはありません)

08. 『パニック』 / スミス
Panic by The Smiths

1980年代前半に活躍し、今でもイギリス人には絶大な人気を誇るバンド。その理由はたぶん、素晴らしくキャッチーなメロディーに乗る歌詞がものすごく後ろ向きなこと。「ロンドンのストリートで暴動発生」から始まるこの曲は、イギリス全土が混乱に陥る中でどうでもいい曲ばっかりかけるDJを吊るし上げようぜ、というわりととんでもない内容です。

09. 『ホームタウン・グローリー』/ アデル
Hometown Glory by Adele

いまもっとも注目されている世界の歌姫、そのデビューシングルは自分の出身地であるロンドン・トットナムを称える歌。わずか500枚のプレスだったこのシングルのあと、アルバム『19』でUKチャートの1位に輝いてから彼女はスターダムにのし上がっていきます。セクシー女が好きなら他に行きやがれ、などと言い出すあたりはイギリス人っぽいですね。

10. 『ロンドン行き最終列車』/ E.L.O.
Last Train to London by Electric Light Orchestra

1970年代に人気を博した、ビートルズ直系の超ポップな聴きやすい曲づくりが売りのバンド。ロックバンドなのにストリングス(バイオリンなど)が数人いる、というわけで「オーケストラ」を名乗ってます。フロントマンのジェフ・リンは後にビートルズ『フリー・アズ・ア・バード』のプロデューサーを務めるちょっとした大物。この曲は1979年の発売、終着駅であること以外にロンドンとどれだけ関係があるのかはさておき、イギリスっぽいっていうことで。

ついでにロンドンの歌・日本代表も置いときますね!

『北ウイング』 / 中森明菜

日本の歌姫、通算7枚目のシングル。この曲が発売された1984年当時はまだ「新東京国際空港」という名前だった成田空港の、国際線出発ターミナルを指した名前が「北ウイング」です。愛する人のいる街へ国際線で飛び立つ、というこの歌ですが、目的地はそう、「霧の街」つまりロンドン。まだ米ドルが230円前後、英ポンドともなるとえらい高かったであろうこの時代に、ロンドンと日本の遠距離恋愛。外交官か商社マンだなこりゃきっと。

いかがでしょう? お気に入りの1曲にめぐり会っていただけたなら幸いです。でもほんとに、暗めのラインナップだなあ。夏の暑さはひかえめ、冬はずっと曇りで陽がささないというロンドンの気候は、やっぱりメランコリックな音楽を生み出すのでしょう。そしてそのちょっと暗い感じは、われわれ日本人にも共通する何かであるようにも思います。

この夏、ロンドン。スポーツに音楽にと目いっぱい楽しんで、長く思い出に残るシーズンにしたいものですね。みなさんもお気に入りのロンドン・ソングをお持ちでしたら、ぜひぜひPouch編集部まで教えてください!

(文=纐纈タルコ)

▼ペット・ショップ・ボーイズ

▼Born Slippy(nuxx) by Underworld

▼New London Eyes by Asian Dub Foundation

▼London Town by Paul McCartney & Wings

▼London Calling by The Clash

▼Hobart Paving by Saint Etienne

▼Cemeteries of London by Coldplay

▼Panic by The Smiths

▼Hometown Glory by Adele

▼Hometown Glory by Adele

▼『北ウイング』 / 中森明菜