この世の中には様々な男性がいますが、「一度くらいは女装してみたいと思う男性は意外と多い」と私は勝手に思っています。その本格版が俗にいう女装癖ですが、そこまで行かない「チョイ女装」の願望ならば、たいていの男性は持っているのではないでしょうか。

かく言う男の私もそのひとり。いつかは堂々と「女装してみたい!」と思い続けて33年経ちましたが、つい先日のハロウィンで仮装しているフリをしつつ思い切り女装してみたのです。その結果、「女装しなければわからなかったこと」が15個ほどありました。女装経験者だけではなく、女性の皆さんにも読んでほしい。以下がその15項目なの!

その1:「かわいい」「きれい」と言われるとすごく嬉しい
男性でも女性でも、容姿を褒めてくれるとメチャクチャ嬉しい! テレながら「そんなことなぁ〜い♪」とごまかしますが、内心は小躍りしたいほど喜んでいます。

逆に考えると、男性のみなさんは女性のことをどんどん褒めたほうがいいです。私も褒めるようにします。だってだって、無条件に嬉しいんだもん!

その2:「オカマ」「キモい」「あいつ男だぜ」とか言われると大ショック
誉められると嬉しい一方、「ブス」だとか「オカマ」だとか「やっぱりオッサン」なんて言われると大ショック。「だよね〜」と笑顔で返しますが、心のなかでは号泣です。

なかでもショックだったのは、男性3人グループとすれ違ったその瞬間に「あいつ男だぜ」と聞こえるように言われたこと。悲しかったわ。どうせ言うなら聞こえないように言ってほしいなー。

その3:スネ毛やワキ毛の処理が想像以上に面倒
今回は網タイツをはきましたが、タイツからモジャモジャのスネ毛がハミ出るのは私の美学に反します。ということでスネ毛は全剃り、腕毛もワキ毛も全て剃ってみたのですが、これが想像以上に骨の折れる作業でした。

シェービングクリームを塗ってT字カミソリでひと剃りして、水入りの桶に入れて毛を流す。これを延々と繰り返し、すべて剃り終わったのは2時間後! 生える度にワキ毛やスネ毛を剃らなければならない女性のみんなは大変だなと痛感です。

その4:化粧や髪の毛の崩れがないか気になるので鏡が見たくなる
お化粧やウィッグをかぶって分かったことですが、化粧や髪の毛が乱れていないかが常に気になります。エスカレーター途中の鏡でチラリ。画面の消えているiPhoneに自分の顔を映してチラリ。

お化粧落ちてない? 口紅は大丈夫かしら? 髪の毛はボサボサになっていないかしら……? 汗を拭くにも、鼻をかむにも、食事をするにも飲み物を飲むときにも、とにかく気になって気になってしょうがないのです。女性がコンパクトなどの鏡をパカリと見ている意味がよく分かりました。

その5:ヒールの高い靴はメチャクチャ歩きにくい
「セクシーにキメるならハイヒールでしょ」と高いヒールの靴を履いて外を歩いてみたのですが、とんでもなく歩きにくい! ぱっと見は平たく見えても実はガタガタなレンガ敷きの歩道なんて、罰ゲームに匹敵するほどの歩きにくさです。

しばらく我慢して歩いていたけれど、もう限界に近いほど足が痛い! 足の指が全て内側に丸まっている状態です。走ることなんて絶対ムリ! ふつうの徒歩スピードでも「待って! 待って!」と追うのがやっと。男性のみなさんは女性をエスコートするとき、歩行スピードにも気を使ってあげてくださいね。

その6:ナースサンダル最強
あまりにも足が痛いので、後日、女性モノの靴を売っているお店に出向き、普段歩き用の靴を買いました。女性らしく見えるうえに、ガシガシと歩いても疲れなさそうな女性用の靴……と探していると、ナイスなサンダルを発見したのです。

それこそが通称「ナースサンダル」。オフィスサンダルとも呼ばれているようで、価格も手頃。本当は内履き用なのかもしれませんが、気にせず外用のサンダルとして使ってみました。そしたらこれが、実にイイ! 女装してなくても使ってみたくなる履き心地でした。

その7:昼間の外出、電車での移動はやっぱりちょっと恥ずかしい
夕方に墓場に行って日が暮れて真っ暗になると、とたんに空気が変わります。一気に怖い雰囲気になり、「ここはオマエたちの来る場所ではない」と霊界から言われたような気がするのです。それとは逆に、太陽の出た昼間に行動していると「ここはオマエのいる場所ではない」と言われているような気がしてくるのが女装時でした。

さすがは東京、道行く人が「ああ、単なるオカマだな」とチラ見スルーしてくれるのはありがたいのですが、逃げ場のない電車内はやっぱり恥ずかしい。なるべく壁側を向き、オーラを消す。しかしたまに「……んっ!?」と二度見してくる人も、ガン見してくる人もいました。ちょっとつらかったよ。

その8:夜になると安心する。さらに新宿二丁目エリアに入るとホッとする
その一方、同性愛者や女装をしている人たちが集まる新宿二丁目のエリアに入ると「安全地帯に入った!」といった感じでホッとします。さらに女装をしている同志がいると、思わずアイコンタクトで「こんにちは」、「どうも」と挨拶したくなるほどの親近感。

電車に乗っている時も、「はやく新宿三丁目駅に着いてちょうだい!」「新宿御苑前駅はまだなのっ!?」とソワソワするほどです。そして、駅から早歩きして二丁目エリアに入った時の安心感。新宿二丁目、いい街です。

その9:優しい気持ちになる
単に女装をするだけで、もしかしたら世界平和につながるかもしれません。なぜならば、女装をすると「なぜか優しい気持ちになれる」からです。トロンとした瞳になり、殺伐とした気持ちも吹っ飛びます。

しぐさや口調にも「女らしさ」を意識していると、もはや本当は男である自分の人生をスッカリ忘れて別の人生を歩んでいるような気になってきます。言わば女装トリップです。目がトロンとするのもトリップしているからなのでしょうか。

その10:しぐさも女性っぽくなり自然とオネエ口調になるが、たまに出る「男っぽさ」
普段は「俺」という男性でも、きっと女装したら「わたし」になるでしょう。そして、なぜか自然とオネエ口調になってくるのです。女装をしているだけで。女性モノの服を着ているだけで! しかしです。

たまに出る詰めの甘さに大ショック。たとえば女らしく座っているのに、膝がパッカリ開いていたり。歩くときもガニ股で、広い歩幅で歩いていたり。指摘されるたびに「いかんいかん」と反省します。女性らしくいることは、けっこう大変なのです。

その11:すっぴんは絶対に見せられない
男性の時には微塵も思えなかったこと。それは「すっぴんは絶対に見せられない」ということです。なぜ普段は見せている顔が見せられないのか。それは化けているからです。化粧を落としたその瞬間、そこにいるのは33歳の女装したオッサンなのです。絶対に見せられません。

また、すっぴん以外にも見てほしくない場面は山ほどあります。たとえば「何かをガッツリ食べているところ」など。要は油断しているときの顔です。よく女性が「すっぴんは見せられない!」と言う時の気持ちがよく分かりました。

その12:プリクラが楽しいけど、写りが悪いとショック
単に写真を撮ってもらうだけでも楽しいのですが、ガッツリと顔を美しく補正してくれる最近のプリクラの楽しさったらありません。目は大きく、肌も白く。そしてシワまで隠してくれる! なんという夢のマシン、新宿二丁目にも是非とも一台ほしいところです。

ところが! そんな最強の補正能力を持つプリクラでさえ、オトコ臭さを消せなかったときの悲しさったらありません。自分ではメチャクチャ可愛く撮れたと思った写真に単なるオカマのオッサンが写っていたときのショックといったらもう。

その13:公共のトイレの「男」に入るとき勇気がいる
身なりは女性。でも男。困ったのが外出時のトイレです。もちろん、もともと男なので女性トイレに入るわけにはいきません。でも男性トイレに入るのも気が引けます。

確実に「ギョッ」とされるでしょうし、女の気分になっているのに男トイレに入りたくもない! ということで、最終的にはコンビニなどにある「男性でも女性でもOK」なトイレで用を済ませました。ありがたい。

その13:ヒゲが生えてくるとシンデレラな気持ちになる
「男性のヒゲは午前10時ごろに生えてくる」と、どこかで聞いたことがあります。ということで10時過ぎにT字カミソリでツルッツルまでヒゲを剃ったのですが、夜になると……うっすらと生えてくるのです。鏡を見てショックを受けます。「ついに終わりの時間が来たわね」と。

その反省を生かして、2回目以降の女装時は事前にヒゲを剃るのではなく、毛抜きを使って一本一本抜いてみました。すべて抜くのに2時間ほどかかりましたが、これなら生えてくるまでに数日かかる。夜通し女になりきっていても、ヒゲに終わりを告げられることもありません。

その14:「女だと思った」とか言われると背筋がゾクゾクするくらい嬉しい
「かわいい」や「きれい」も嬉しいのですが、それより嬉しいのが「女だと思った」というお言葉です。特に、女性からよりも男性から「女だと思った」と言われると、「あらそう? じゃあ胸、さわっていいのよ」と言いたくなるほど嬉しいのです。

もっともっと女っぽく見られたい。美しく見られたい。たとえ寒くても網タイツ。女装している他の男より「あたしのほうがキレイ」と思いたい。高価なお化粧品も買っちゃおうかしら? どんどん意識はエスカレートしていくのです。

その15:女装タイムが終わったときの空虚感
異常にハイになっている女装タイム。しかし、いつまでも女でいることはできません。この「元に戻る」作業が想像以上に切ないのです。メイクを落とし、ウィッグも外し、もともと着ていた男性用の洋服に着替えたときの「ああ、終わったな」という空虚感。

鏡を見たとき、冴えない顔した単なるオッサンが映っていたときのやるせなさ。思わず涙がポロリと出ちゃうほどです。もしも夜の街で女装しているおじさんを見かけても、法に触れた悪さをしない限りは、どうかそっとしておいてあげてください。

(モデル、文=ハトポン / 撮影、メイク=メル凛子)
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