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あんな鉄の固まりが空を飛ぶなんてやっぱり腑に落ちないのですよ。スペースシャトルが宇宙と地球とを往来する時代になったというのに、飛行機が大空を飛ぶことに納得できずにいるのはきっと記者だけではないでしょう。

こういうことは飛行する理屈を何十回と解説されたところで理解できるというものでもなく。搭乗したらもう何も考えず、開発されている皆さんを筆頭に、パイロットや客室乗務員に身を委ねるしかないのでありますよ。いざというときどうやったら助かるかなんて、ひたすら脳内デモンストレーションをしたところで「ゴルゴ13」のようにはいかないものね。

そんな無力な私たち乗客を前に、いざというときキャビンアテンダント(以降、CA)のみなさんは、どんな対応をしてくれるのでしょう。気になるなぁ!

というわけで、JALのCA緊急保安訓練を見学してきました。緊急時、私たち乗客はどのような行動をすることになり、守られるのでしょうか。

【いざ、訓練現場へ!】
到着したのは、羽田空港からほど近くにある整備場駅。ここにJALの訓練施設があるというのです。思わず気分は旅行気分! ワクワクしてきましたあ!

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通されたのは、以前は飛行機の格納庫だったという施設。広い倉庫のような内部に入ると機体の胴体部分がいくつも配置されているじゃないの! わわ、スゴイ、まるで映画のセットみたい!

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まるでテーマパークにでも遊びに来たかのようなユルイ気分でいたら、向こうのほうで教官の厳しい声が聞こえてくるじゃないの! わわ、びっくりしたぁ! 何かと思ったら、育児を終えるなどをして復帰予定のCAたちが訓練を受けているところだそうです。教官の厳しい声を聞いていると……華やかだとばかり思ってたCAという職業の厳しさを少し垣間見た気がしました。憧れの職業こそ、厳しさはつきものなんですね。

それにしても、なんだか軍隊に近いものを感じるような……。

【CAの存在目的は、接客がメインではなかったーっ!】
なんでこんなに厳しいの? と思っていたら、実はCAのお仕事の本当の役目は、緊急時に的確にお客さまを誘導する「保安要員としての役割の方が大きい」からなのだそうです。

むしろお料理を出したり、必要なものを持ってきてくれたり……そういった、私たちが良く目にするサービスこそ、時間があるときにおこなわれるサブ的な役目なのだそうな。CAがサービスをしてくれるシーンが日常の光景になっているけれど、つまりそれは事故がないということ! ありがたいことです。

とはいえ、いつなんどき非常事態が起こるともわからない。そういうときにすぐに動けるよう、年に1度、CAのみなさんはこの施設で必ず訓練を受け、それらに合格しないと次の日から乗務することができなくなってしまうのだそうな。なかなかシビアですね。現在JALのCAは5千人弱在籍しているため、つまるところ毎日実施されているそうです。

【迫力の緊急避難訓練を実体験してみた】
まずは教官のみなさんと一緒に、身体を慣らすべくラジオ体操。うわー何年ぶりだろう! すっかり動きを忘れてそう……と思いきや、さすが義務教育でやってきただけあって身体に刻み込まれているものですね。久々の体操に、思わずリフレッシュ!

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つづいて、避難時に機体から脱出するためのスライドを滑る際のポーズを教えてもらうことに。緊急事態は絶対にないとは思うけれど、ないとも限らない! この際なのでポイントを覚えておくことにしました。

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1 まずは足を伸ばして地面に座り、前屈姿勢をとる。このときつま先を上にする。
2 両手とも握り拳をつくり、腕をまっすぐ前に伸ばす。
3 スピードが出たらより前屈姿勢をとって速度を落とす。(逆に寝転がるとスピードが出ます)
3 着地したら、後ろの人の邪魔にならぬよう駆け抜けましょう。
以上

【いざ、スライドを滑走! …と思ったら】
よーし、滑るぞーっ! と意気込んでいたら、記者はタイツ&スカートで今回は滑ることが叶わず。なんでも、摩擦で火傷の危険性もあるため、服装は厚地のズボンが理想的なのだそうです。とはいえ、緊急時は身の安全を確保することが最優先。飛行機に乗る際のスタイルは、厚地ズボンは欠かせないかも?

しかも、スライドの上から下をのぞいてみると、なかなかの高さ! こ、こわそ~っ!
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で、実際に滑った方にお話を伺ってみたところ、「スライドはプヨプヨしているが、安定していて思ったよりも速度が出ず怖くない」とのことでした。これなら、いざというとき落ち着いて滑れそう。

【海へも脱出可能】
このスライドは水陸両用で、なんとボートにもなるのですよ! 万が一海に不時着したら、スライドを自動で膨らませて海に浮かべ、乗客はその上に避難します。記者もプールに浮かべたスライドに実際に乗ってみたところ、スライドがプクプクしているので立って歩くのは困難。低姿勢になって移動するのが良いです。
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でも、いったい何人乗れるの? と、そのコンパクトなスペースに少し心配になりましたが、80名程も乗れるというから驚きです。一見、そんなスペースがあるように見えないのに! ボートには1日分の避難食やお菓子、道具などが入った避難用具が装備されております。

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ちょっと興味深かったのは、避難用具のなかにある緊急時を生き抜くためのサバイバル本。
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主に緊急時の対処法や危険な魚の種類などが明記されているのですが、一番最後には聖書の一部が刷られています。最後は神に祈れということですね。しかもこのサバイバル本、英語版しかないというのには不謹慎ながら面白いと思ってしまいました。

【CAのお仕事、華やかなだけの世界だと思ったら大間違い】
ちなみに新人訓練では、教官の元で厳しい訓練を朝から夜まで1週間みっちり叩きこまれ、そのあとようやく制服を着ることができるそうですよ。厳しい訓練を受けながらも、笑顔を絶やさず接客するというのは本当に大変そうですよね。

とはいえ冒頭でも述べたように、CAから遠ざかっていた方でも訓練次第でまた復帰ができるという、さすが女性社員が多い企業らしく誰もが働きやすい環境は羨ましい! ちなみに、これまでCAを題材としたTVドラマがいくつも放送されましたが、なかでも最もリアルだったのが『アテンションプリーズ』だと教官のみなさん各々頷いてました。ご参考までに。

冬休み飛行機に乗られる方も多いと思いますが、くれぐれもCAのみなさんの言うことを良く聞いて空の旅をお楽しみくださいませ。

(取材、写真、文=メル凛子)

▼みなさんもシッカと一連の動作を覚えておくよーにっ!

▲前に席がある場合は、このように

▲前に席がある場合は、このように

▲前に席がない場合は、このような姿勢をとる

▲前に席がない場合は、このような姿勢をとる

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▲訓練とはいえ、ただならぬ様子。こちらも本当の非常時のようにソワソワしてくる。

▲訓練とはいえ、ただならぬ様子。こちらも本当の非常時のようにソワソワしてくる。

▲緊迫した雰囲気に、記者は頭真っ白に。救命胴衣を着るのに、記者は随分と手間取ってしまった。

▲訓練だというのに頭真っ白! 救命胴衣を着るのに、記者は随分と手間取ってしまった。

▲ずっしりと重い救命胴衣

▲ずっしりと重い救命胴衣

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▲演習用スクリーンに映しだされたコックピットの様子

▲演習用スクリーンに映しだされたコックピットの様子

▲機体中に煙を出したりなどコントロールする場所

▲機体中に煙を出したりなどコントロールする場所

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▲ほかの機体を覗くと、CAたちが訓練を受けていました

▲ほかの機体を覗くと、CAたちが訓練を受けていました

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▲サバイバル本

▲サバイバル本

▲サバイバル本に書かれている、食べたら危険な魚の種類

▲サバイバル本に書かれている、食べたら危険な魚の種類

▲サバイバルキッドの中身

▲サバイバルキッドの中身

▲火災などの場合には、このようなマスクをかぶることも

▲火災などの場合には、このようなマスクをかぶることも

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▲(※写真の方は記者とは無関係) 救命胴衣ですが、なんと記者、テンパリすぎてひとりで着用することができず。教官に手伝ってもらいました。また着る機会があったとしても、前後ろ逆に着用してしまいそう。

▲救命胴衣をさらにふくらませるための管

▲救命胴衣をさらにふくらませるための管