2
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、お正月一番の話題作とおもわれるミュージカル映画『レ・ミゼラブル』です。日本では舞台「レ・ミゼラブル」も人気があり、「レミゼ」ファンは多数います。ゆえに、この映画への期待は相当高い! では、ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』はどうだったかというと、セリフをすべて歌にしているザ・ミュージカルな構成ながら、映像はミュージカルの演出というより、ザ・映画になっているという力作でありました。

1815年、小さな罪で19年間服役をしたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、仮釈放されますが、新たな人生を歩もうと逃亡者となります。8年後、ジャンはマドレーヌと名前を変えて出世しますが、そこに逃亡者となったジャンを追いかけるジャベール警部(ラッセル・クロウ)が現れます。彼の疑惑をすりぬけつつ、彼はフォンテーヌ(アン・ハサウェイ)の娘コゼットを引き取ります。フォンテーヌは娘のために体を売るほど身を落としており、病に倒れてしまったのです。

9年後、貧富の格差に嘆く労働者や学生たちは、革命を起こそうとしています。その先頭に立つマリウス(エディ・レッドメイン)は美しく成長したコゼット(アマンダ・セイフライド)に恋を……。しかし、そんなマリウスを恋しい瞳で見つめるエポニーヌ(サマンサ・バークス)の姿がありました。追われる者の人生と若者の恋と革命! この3つがパリの街で火を噴くのです。

この映画のキャストはオーディションで選ばれました。ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウらの大スターたちもオーディションを受けたのです! ヒューはオーディションでフーパー監督の心をわしづかみにしたそうですが、監督はラッセルに不安が……。「演技力は申し分ないのだが、歌唱力に不安があった」。というわけでオーデョションを受けることになったラッセル。

「若い頃、オーディションの結果次第で、その日に食事ができるかできないかが決まったものだ。そのときのことを思い出して、ホテルから28ブロックも離れていたオーディション会場まで歩いたんだ。凄い雨が降っていて、タクシーに乗ろうと思えば乗れたけど、乗ったらオーディションがうまくいかない気がしてね」。
オーディション会場にずぶ濡れで現れたラッセルを見て、スタッフはさぞやビックリしたことでしょう。

アン・ハサウェイはかつて母親が「レ・ミゼラブル」の全米公演に出演していたことがあり、この役には並々ならぬ情熱を持って臨んだようです。オーディションの結果まで1カ月も待たされたそうですが、決まるやいなや役のために体重を5週間で11キロ以上落とし、髪を切られるシーンでは実際に自分の髪をカット。もう全身全霊をこの役に注ぎました。すでに彼女は映画賞レースで、助演女優賞を数々獲得していますが映画を見れば受賞も納得! 記者は、彼女が歌う「夢やぶれて」のシーンでオイオイ泣いてしまいました……。

この映画にはいろいろなスター俳優がオーディションを受けており、オーデョション落ちをした有名スターも! よく名前が挙がるのはテイラー・スウィフト。エポニーヌ役でオーディションを受けていましたが、新星サマンサ・バークスに破れてしまいました。ほかドラマ「glee」のキャストやエマ・ワトソンもオーディションを受けていたという噂もあります。相当レベルの高いオーディションだったのかも。

またこの映画は、撮影をした映像に合わせて、キャストの歌を収録したのではなく、撮影時から歌も収録していたのです。つまりライブ感を大切にしながら撮影をしていったそうで、まさにミュージカルそのもの! だから役者の歌唱力は重要で、厳しいオーディションを課したのでしょう。その反面、映像はミュージカルというより、ドラマの撮り方で、ソロを歌う人をしっかりアップで見せるなど、舞台では見られない演出をしているなと感じました。

諦めない心、チャレンジする精神を奮い立たせ、人を強く愛する気持ちを思い出させてくれるミュージカル映画『レ・ミゼラブル』。見終わったあとも数々の名曲が頭から離れず、感動の余韻にどっぷりひたれる本作は、年末から新年への幕開けにふさわしい感動作と言えるでしょう!

(映画ライター=斎藤 香
3
77186
『レ・ミゼラブル』
2012年12月21日公開
監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン、サマンサ・バークス、アーロン・トヴェイト、イザベル・アレンほか
(C)Universal Pictures