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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップする作品は、1月18日公開のコメディ映画『テッド』です。公開前から、テディベアのテッドの可愛さが話題になり、フェイスブックの「いいね!」が80000突破したとのこと。すでに大人気! 子ども受けしそうな愛らしいテッドの姿を見て「ファミリー映画かな」と思う人も多いでしょう、しかし、この映画は堂々R15+指定(15歳以上は鑑賞可)。なぜなら、テッドはとてもスケベな中年オヤジのようなテディベアだからです!

1985年のクリスマスに、両親からテディベアのテッドをプレゼントしてもらったジョン少年。その日からテッドはジョンの大親友。ジョンは「テッドが本当にお話ししてくれたら……」と星に願います。すると翌朝、テッドがしゃべったのです! ジョンの願いは叶った~! そして、しゃべるぬいぐるみテッドは世間にも知られ人気者になるのです。

時は流れ、ジョン(マーク・ウォールバーグ)は35歳。幼くダメダメなジョンにぴったり寄り添うのは、中年になったテディベアのテッド。一発屋の芸人のように、すぐに世間から忘れられたテッドは、1日中ソファでダラダラし、下品なジョークと毒舌ばかり。そんなテッドとジョンは、いまでも「あ・うん」の呼吸の大親友! けれど、ジョンの彼女ロリー(ミラ・クニス)は、それが気に入らないのです。ジョンも彼女のために「しっかりしなくちゃ」と思い、テッドと別れて暮らすと決心。テッドは自活を始めることになるのですが……。

見た目は本当に可愛いぬいぐるみのテッド。でも、この映画を見るとテディベアの見方が大きく変わることでしょう。まあ、下品だわ、スケベだわ、最低の中年オヤジそのものなのですから!

かわいいぬいぐるみに命を宿らせるところまではありがちですが、そのぬいぐるみを究極の下品クマにしたのが、この映画の成功の秘密。また、ただの下品クマじゃないテッド。彼はここ一番で、ジョンに気付かせるのです。彼がいかに甘えていたか、テッドに依存していたかということに。35歳にしてやっと大人になれるというストーリーも、今の時代にフィット。ジョンはまさに、大人になりきれないいまどきの永遠の男の子ですからね~。

この映画を生み出したセス・マクファーレン監督は『テッド』の大ヒット効果のおかげか、第85回アカデミー賞授賞式のホストに決定! まさに全米では時の人なのです。
そのマクファーレン監督、『テッド』を企画した当初はアニメにしようと考えていたそうです。しかし、視覚効果の進歩により「実写でイケるかも」と思い、ぬいぐるみのテッドがリアルに見せられるように技術が進歩するまで、辛抱強く待ったのです。

ちなみにテッド演じたのはマクファーレン監督自身。自分の声と体でテッドというキャラを創り上げ、モーション・キャプチャー・スーツを着て視覚効果チームと共にテッドを完成させました。監督&主演という映画は多いけど、ぬいぐるみを演じつつ演出をする監督って、ちょっと珍しい!

通常、CGキャラクターの声の吹き替えはあとからするものが大半だけど、『テッド』は、マクファーレン監督が、ウォールバーグやクニスとともに現場に立って演じていました。

プロデューサーのジョン・ジェイコブスは「監督とキャストのライブ・パフォーマンスのようなものだね。これはとても重要なんだ。コメディにとって、現場で生まれる即興はすごく大切だからね」と話しています。

撮影しながら生歌を収録した『レ・ミゼラブル』のようですね。これから「やっぱりライブじゃないとね」と、映画撮影のライブ・パフォーマンスが流行るかも?

マクファーレン監督がアカデミー賞のホストということは、授賞式にまさかのテッド登場もあり? 授賞式をかきまわしてくれちゃうのもあり? と、思わず想像してニヤニヤしてしまった記者。すでにそのキャラクターが独り歩きしている映画『テッド』。女子ならヒロインのロリーの気持ちに共感し、男子ならジョンを見て「俺のこと?」と思ったりして。そして、「下品でもいい、テッドがいたら、生活が楽しくなるな~」なんて人が続出するかもしれません!

(映画ライター=斎藤 香

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『テッド』
2013年1月18日公開
監督:セス・マクファーレン
出演:マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス、ジョエル・マクヘイル、ジョヴァンニ・リビシほか
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