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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、3月2日公開の益田ミリの人気漫画「すーちゃん」シリーズの実写化『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』です。ほのぼのタッチの益田ワールドが実写になると、どうなるのか。映画は、人気女優を配して、一見、おしゃれ雑貨やおいしそうな食べ物で彩られたほんわかした世界だけど、これがけっこう胸にズシンと来る!痛いところを突いてくるリアルムービーに仕上がっているのです。

すーちゃん(柴咲コウ)まいちゃん(真木よう子)さわ子さん(寺島しのぶ)は、かつてのバイト仲間。すーちゃんはカフェ勤務。真面目な彼女は職場のマネージャー(井浦新)に片思い。まいちゃんは、OA機器メーカーの営業。仕事では、上司やクライアントに振り回され、私生活では不倫しており、ちょっとストレスたまり中。さわ子さんはWEBデザイナーとして自宅でお仕事。母親とともに、祖母の介護もしています。結婚願望はあるけど、相手探しをする暇もなく……。そんな彼女たちの日常にちょっとした変化が訪れます。

すーちゃんの昇進と片思い、まいちゃんの不毛な恋、さわ子さんの思いがけない出逢いなど、彼女たちは、ある意味、人生の選択を余儀なくされます。それは決して幸福へとまっしぐらに突き進むものではないけれど、みんなこういう風にモヤモヤしながら、周囲に振り回されながらも、自分で結論を導き出していくのだなあと、ついつい自分と重ね合わせてしみじみ……。若いときは勢いで何でもできちゃうけど、30代になり、将来を考えるようになると、思い描くことは明るい未来だけではないのです。そりゃ不安ですよ、誰だって。この映画のヒロインたちのように「一生ひとり?どうしよう!」なんて考えてしまうこともあるでしょう。

すーちゃんのかわいらしいカフェ、まいちゃんの家での女子会、ほっこりした雰囲気に心なごみながらも、現実は厳しい!特に彼女たちの恋の行方には茫然です。無神経な人との恋は、ただ傷つき疲れるだけ。「恋なんてしない方がましね!」と思いつつ、でも「孤独はイヤ」と思うと心が揺れる……。わかりますよね、その気持ち。もう記者は「みんな、負けるな!」と超感情移入しちゃいましたよ。

それにしても御法川修監督、男性なのに女の気持ちをよくとらえているな~と思ったら、監督はこの原作漫画にほれ込み、映画化権を取るために出版社に乗り込み、情熱的に口説き落として映画を実現に結びつけたそうです。それだけ大好きな原作だったからこそ、その魅力をしっかり描ききることができたのですね。

またメインキャストに、柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶという、演技も人気も折り紙つきの女優が揃ったのも功を奏しました。やはりスクリーンが華やぎますよね。柴咲さん演じるすーちゃんの可愛い微笑みの裏の心細さ、真木さん演じる美人OLまいちゃんの毒気たっぷりの本音、そんな二人を温かく包み込むような寺島さん演じるさわ子さんの繊細な心。ひとつひとつが胸に響いてジーンとするのは、彼女たちの演技があってこそ。

女子の本音は細部も丁寧に描かれています。特にすーちゃんが勤めるカフェ店員のちゃっかりした言動は秀逸。いちいち「いるいる、こういう子!」と思わずニヤリ! ふんわり優しげな雰囲気の映画だけど、見ると意外とスパイシーな『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』。ぜひ女の子同士で見てほしい映画ですね。
(映画ライター=斎藤香)

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『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』
2013年3月2日公開
監督:御法川修
出演:柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ、染谷将太、井浦新、木野花、銀粉蝶、風見章子、佐藤めぐみ、上間美緒、吉倉あおい、高部あい
(C)2012 映画「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」製作委員会