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皆さんは、ナイジェリアのラゴスにマココと呼ばれるスラム街があるのをご存知でしょうか。記者は恥ずかしながら知りませんでしたが、10万人以上もの人々が暮らす、”水の上の” 巨大スラムです。

知るきっかけとなったのは、『Architizer』という海外の建築系サイトで見かけた写真。水の上に浮かぶ沢山のカラフルな三角屋根たちは、まるで素敵なリゾートの完成予想図のよう。でもその写真の裏には、異国が抱える出口のない問題があったのです。

今回は、遠いアフリカの街のスラム問題と、その解決に希望を託すある建築家のアイデアをご紹介します。

■メガシティ、ラゴス
ナイジェリアは内戦や紛争、部族間抗争が絶えず、クーデターや暗殺が繰り返される非常に不安定な政情で知られています。有力な石油算出国ですが、国自体は豊かな部類にもかかわらず、人々は著しい貧富の差に苦しんでいます。

そんなナイジェリアの旧首都ラゴスは、かつての悪名高き ”奴隷貿易” で栄えた港町。1960年のイギリスからの独立以降、急激に成長し、今や1000万人以上が暮らすアフリカ有数のメガシティに。

■マココ、水に浮かぶスラム
マココは、そのラゴスにある広大な干潟(ラゴス・ラグーン)の上に形作られた共同体。もともとは地元の漁師たちが集まる小さな村でしたが、街の発展とともに貧しい人々の集まるスラム街に。10万人以上の人々が水上の粗末な小屋で暮らしているそうです。

混乱した国の巨大都市にあるスラム街では、もちろん公共設備など皆無に等しい状況。衛生面や治安面、蔓延する病気など様々な問題を抱えているそうです。そこで政府は昨年、これを一掃するアンチ・スラム・キャンペーンを始めました。

■アンチ・スラム・キャンペーン
表向きは発展を続けるラゴスの新たな用地として埋め立てるため、とされていますが、そのあまりに一方的なやり方が世界で問題視されています。72時間前に突然立ち退きを命じ、チェーンソーを持った役人たちが容赦なく小屋を破壊して廻っているそうです。

この問題に心を痛めたのがオランダで活躍するナイジェリア出身の建築家Kunlé Adeyemi氏。Adeyemi氏と彼の会社NLÉは、水に浮かぶ住居の新たな可能性を模索すべく、「マココ水上スクール(Makoko Floating School)」というプロジェクトを発足。

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■マココ水上スクール
”水に浮かぶ校舎” の材料は、256個のプラスチック製ドラム缶と地元の木材。1階は緑のある運動場、2階は普通の教室、そして3階は開放感あるオープンエアな教室という3階建て!

シンプルな外観ながら、屋根のソーラーパネルが電力を供給し、雨水を貯める機能も備えた近代設計。コストも地上で建てるより安く済むといいます。

そして水に浮いているため、フレキシブルなコミュニティ形成が可能。この地方に多い洪水にも対応できるよう、なんと我国の「日本AIR断震システム株式会社」という企業の特殊技術による耐震構造を取り入れているそうです。

住居に適応していくには、もちろん政府ほかの協力が不可欠でしょう。スラム問題の根本的解決には繋がらないかもしれません。それでも、いまこのアイデアが世界中の注目を集めているのは、様々な可能性と前向きな精神に溢れているからではないでしょうか。

(文=黒澤くの)
参照元:architizer.comNLÉ

▼Kunlé Adeyemi氏。世界で活躍する視点で故国の問題に取り組む姿勢、素敵です。

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どんな状況でも遊んじゃう子供たちも、素敵です。

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