90s_songs_alike

夏っぽい音楽が聴きたい今日このごろ。洋楽に詳しい先輩ライターに夏っぽい曲をいろいろオススメしてもらったお返しに、自分のイチオシ夏ソングを貸してあげました。

それはカジヒデキの『ラ・ブーム ~だってMY BOOM IS ME~』、1997年のヒット曲! 当時流行っていた「渋谷系」サウンド、今となっては少しこっ恥ずかしい歌詞もまたいいじゃない。どうしてか、最近全然耳にしないけれど……。

そして数日後、先輩がCDを返してくれたときに添えてくれた言葉が、自分にはあまりに衝撃的でした。

『いいカバーだね! あの曲やるなんていいセンスだね』

え? あ、いや、カバー曲じゃありませんぜ、クレジットにも別にガイジンさんの名前書いてないし。先輩の思い込みでは? ほら、ちょっと似てる曲とか、いっぱいあるじゃないですか。アルフィー『星空のディスタンス』とイーグルス『ホテル・カリフォルニア』とか……。

キョドる記者に、先輩はその「元曲」と目されるものを貸してくれました。聴いてみると……フゲェェェェェ似てるどころじゃねえェェェ!

そんなわけで、記者がドギモを抜かれた正面からのパ……もとい、シャレにならないくらい洋楽曲に似てしまっている90年代ヒットソング・ベスト3をご紹介します。

第3位 T-BOLAN『SHAKE IT』(1996年)

90年代に飛ぶ鳥を落とす勢いだった音楽事務所『ビーイング』所属のアーティストたち、いわゆるビーイング系。このT-BOLANもその一員として、数々のヒット曲を飛ばしていました。それまでのしっとりしたロックからいきなりハードになったことで話題になったこの曲ですが、その2年前にヒットしたプライマル・スクリーム『ROCKS』(1994年)にビートと主旋律と構成がびっくりするほど似ています。スタンダードなロックといえばそうかもしれないのですが、あまりに時期がよくなかった気もします。それまで&それ以降の彼らの持ち曲とあまりにテイストが違っている点もなんだか気になるところ。そして歌詞が「そのままの自分で勝負しろ」的な内容なのはどんな冗談なのか。もしかしたら、こういう曲をやらせる事務所への宣戦布告だったのでしょうか。

第2位 小沢健二『ダイスを転がせ』(1997年)

記者は大好きオザケン! 90年代に大活躍し今でも根強いファンの多い渋谷系のプリンスさんですが、一部に洋楽曲への強烈な「オマージュ」を入れた作品を多く残していることでも知られています。あの曲のイントロはこの曲そのまま(※あくまで「オマージュ」)、なんていうのはザラなのですが、中でも軽くヒットしたこの『ダイスを転がせ』については特徴的なリズム・旋律・リフ・アレンジなど、メインフレーズが見事なまでにアダム・アント『Goody Two Shoes』(1982年)そのままです。ファンといえどもビビるレベル。反省したのか権利とかでいろいろアレなのか、オザケンさんは近年この曲をベスト盤に入れることも再発することもライブで演奏することもしていません。素直にカバーって言えばいいのに言えない意地っ張りなところも記者は大好きさ! 息子誕生おめでとう!

第1位 カジヒデキ『ラ・ブーム ~だってMY BOOM IS ME~』(1997年)

小沢健二の後継者という位置づけで、ともすれば存在自体がオザケンの「オマージュ」と思われかねないカジヒデキ。マンガ『デトロイト・メタル・シティ』でクラウザー化していない主人公が好む(キモい?)おしゃれポップはこの人の活動をモチーフにしていると思われます(映画版では実際に音楽を担当)。さてそんなカジくんの唯一ともいえる大ヒット曲が『ラ・ブーム(以下略)』ですがこれが真っ向正面からXTC『Mayor of Simpleton』(1989年)に大激似! アレンジと出だしこそ違うものの、サビからあとは間奏に入るまでのあいだ、メロディーが細部にいたるまでパックリと瓜二つでございます! 当時誰も気づかなかったのか! かくいう記者も先輩に言われるまで気づかなかったよ! あれほど当時ウケたのに最近ぜんぜんかからないのは、こういう事情のせいなのでしょうか。ちなみに『Mayor of Simpleton』って「バカ代表」みたいな意味らしいですね!

記者個人としては、やっぱりポップミュージックである以上ある曲がどこかの誰かの曲と似てしまうというのはどうしてもあることだと思っています。あまり重箱の隅をつついてこの曲とこの曲のここが似てる、というのをやるのは好きではない、のですが! やっぱりサビ全体がそのまんまとか、曲半分が同メロディとかいうのはビビっちゃうね!

インターネットが本格的に普及するより少し前である、90年代。ネット経由で細かい検証がなされてしまう現在ではありえないようなことが起こった時代なのかもしれません。でも、どんなものであれ、みんなが親しんだものにはそれぞれに大きな意味があると思うのです。目くじらを立てるのではなく、こういう形でネタにしつつも、懐かしみ慈しんでいけたらいいなと思う記者でありました。

(文=纐纈タルコ)

▼T-BOLAN『SHAKE IT』(1996年)

▼プライマル・スクリーム『ROCKS』(1994年)

▼小沢健二『ダイスを転がせ』(1997年)

▼アダム・アント『Goody Two Shoes』(1982年)

▼カジヒデキ『ラ・ブーム ~だってMY BOOM IS ME~』(1997年)

▼XTC『Mayor of Simpleton』(1989年)