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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、ジョニー・デップ主演作『ローン・レンジャー』です。テレビシリーズの映画化ですが、古いので、この映画が『ローン・レンジャー』初鑑賞! という人は多いかも。西部劇ではありますが、いわゆる真面目に男の世界を描いた西部劇と違い、ファミリーピクチャーとして家族で楽しめるジェットコースター的なお楽しみがつまった西部劇なのです。

若き検事となり故郷に帰る列車に乗ったジョン(アーミー・ハマー)は、囚人の脱走騒動に巻き込まれてしまう。囚人のひとりキャヴェンディッシュ(ウィリアム・フィクトナー)は逃走し、ジョンはもうひとりの囚人トント(ジョニー・デップ)を捕えて牢屋へ。

その後、ジョンはテキサス・レンジャーの兄とともに、逃走したキャヴェンディッシュを追跡。しかし、敵の一味に襲撃され、兄は死に、ジョンは瀕死の状態に陥ります。そこにやってきたのは牢屋を抜け出したトント。彼は復讐に燃える悪霊ハンターで、復讐を遂げる相棒としてジョンを甦らせます。そして彼のことを「キモサベ」と呼び、ジョンとトントは復讐という共通の目的のために組むことに。ジョンは孤高のレンジャー「ローン・レンジャー」になりましたが、真面目なジョンと復讐のためなら手段を選ばないトントは、どうにもこうにもかみ合わず……。

コスプレ好きなジョニーらしく、今回もものすごい白塗りメーク。「言われなきゃジョニー・デップとわからないんですけど」というほどの凝りようで、トントを嬉々として演じています。この映画はディズニー印で、監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのゴア・ヴァービンスキーですが、今回のジョニーに『パイレーツ~』のジャック・スパロウのようなセクシーさはなく、ジョニーは道化色をより強化させて演じています。復讐心を胸に秘めたキャラのわりには、すっとぼけたトント。相棒のジョンが生真面目なイケメンなのでその対比を狙ったのでしょうか。ベタなギャクを展開させるわけではないのですが、表情やしゃべりの間の取り方にトント独自の世界があり、そこがクスっという笑いにつながっています。この役についてジョニーは

「テレビでこのドラマを見たとき、トントに魅力を感じながらも、助手的な扱いに疑問を持ったんだ。僕はいつもはみ出し者に興味を持つからね。頭にカラスを乗せているのは、先住民が頭にカラスを乗せている絵を見て、トントでやってみようと思いついたんだよ」

テレビシリーズでもトントはジョンの相棒ですが、このような白塗り顔でもないし、カラスも頭には乗せていないようです。映画のトントはかなりジョニーのアイデアを盛り込んだトントになっているようですね。助手的な存在だったトントが、映画ではしっかり主演。出世したわけです。

またなんといってもディズニー映画ですから、ジェットコースター的なアクション展開が楽しい。暴走する列車のシーンはハラハラしつつ「これはアトラクション?」という思いが頭をチラっとかすめたほどです。そのへんは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのヴァービンスキー監督ゆえ、見せ所をわかってらっしゃる!

トントの可笑しみが後を引く『ローン・レンジャー』は夏映画の注目作! 白塗りジョニーの熱演をゼヒご覧ください。
(映画ライター=斎藤香)

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『ローン・レンジャー』
2013年8月2日公開
監督: ゴア・ヴァービンスキー
出演: ジョニー・デップ 、アーミー・ハマー、 トム・ウィルキンソン、ウィリアム・フィクトナー、バリー・ペッパー、ヘレナ・ボナム=カーター、ジェームズ・バッジ・デール、ルース・ウィルソンほか
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