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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、フランス大統領の専属料理人に抜擢された女性シェフの挑戦を描いた実話の映画化『大統領の料理人』。ミッテラン元大統領のプライベートシェフを務めたダニエル・デルプシュの体験に少々のフィクションを織り交ぜ、格調と温かみをミックスした美味な映画です。

フランスの片田舎で小さなレストランを営んでいたオルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)のもとにフランス政府の公用車が迎えにきました。なんと彼女はフランス大統領(ジャン・ドルメッソン)のプライベートシェフに抜擢されたのです。

これまで官邸の厨房で作られていた料理は、デコレーションのしすぎで、大統領は不満を募らせていました。「シンプルで素材の旨みをいかした料理が食べたい」という大統領の願いを叶えるシェフとしてオルタンスは選ばれたのです。ところが厨房は男の世界、よそから来た女のシェフということで差別の対象に。おまけに食材に気を遣い、丁寧に美味しい料理を作っても、大統領はどう思っているのかがわからない。側近に聞いても「お忙しいのだ」と言われるだけ。彼女はそれでも諦めず、大統領の気持ちを汲み取ろうとします。すると……。

フランスの家庭料理を大統領の官邸に持ち込んで新風を巻き起こした女性シェフ、さしずめ日本だったら、小林カツ代さん、栗原はるみさん? そんな感じでしょうか? プライベートシェフに大抜擢された彼女は、いきなり官邸のシェフたちから冷たい視線で見られ、イジワルをされます。嵐の予感……。普通ならくじけそうですが、自分がやるべきことがわかっている彼女は、アシスタントとともに料理を開始! ここからがもうワクワクですよ!

フランス料理といえば、庶民には高級料理のフルコースというイメージが強く、この映画でも家庭料理とはいえ、大統領のための料理なので超高級です。でも高級なのは食材で、調理法の基本は家庭料理的なのでしょう。「サーモンのファルシ」(キャベツとサーモンのミルフィーユ風料理)や「美しきオーロラの枕」(フォアグラや鴨などをパイ生地で包んだ料理)「サントノレ おばあちゃんのクリーム」(プチシューとクリームのスイーツ)など、どれもこれもボリュームたっぷり。それもアートのような飾りつけではなく、思わず「いただきま~す」とナイフとフォークをザクっと入れたくなるような料理。肉汁がジュっと出そうだったり、パイの焼き加減が絶妙だったり、スープの色が澄んでいたり……付け合せの野菜までペロリといけちゃいそうです。

彼女が大切にしているのは食材の旨みを活かすこと。その料理はきっとすべて平らげても胃にもたれるということはないでしょう。最高級の食材にこだわりすぎて側近に注意されたり、厨房のシェフたちの理解を得られなかったり。問題は山積みだけれど、いじめにも毅然とした態度で、最後まで自分のやり方を貫いた女性シェフは立派!「自分も頑張ろう」と思わせてくれます。

ちなみに、この映画に登場する大統領官邸のエリゼ宮は、セットではなく本物だそうです。サルコジ大統領が不在のときに撮影されたとか。エリゼ宮はフランスで最高の宮殿と言われているそうですが、さすがにとてもゴージャス。美しいヴィジュアル、美味しそうな料理、素敵な女性シェフ、見終わったあと「フランス料理とか行っちゃう?」なんて友達を誘いたくなること必至。この映画がきっかけでフランス料理ブームが起こるかもしれませんよ!
(文=斎藤香)

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『大統領の料理人』
2013年9月7日公開
監督: クリスチャン・ヴァンサン
出演: カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド、アルチュール・デュポン、ジャン=マルク・ルロ 、アルリ・ホベール、ブリス・フルニエ、エルヴェ・ピエール、レシュ・レボヴィッチ、トマ・シャブロルほか
Les Saveurs du Palais (C)2012 –Armoda Films- Vendome Production –Wild Bunch – France 2 Cinema