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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは元英国皇太子妃を描いた映画『ダイアナ』です。36歳で交通事故により急逝した元プリンセス。

その死はいまだ謎めいていますが、そこに至るまでの数年間を描いているのがこの映画。その演出を務めたオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が来日し、記者はインタビューのチャンスを得ました! 映画『ダイアナ』の撮影秘話を聞いてきましたよ。

英国元皇太子妃ダイアナ(ナオミ・ワッツ)がチャールズ皇太子と別居したあと、本当に愛した男性ハスナット医師(ナヴィーン・アンドリュース)との恋愛を中心に描いたのが映画『ダイアナ』。ドラマチックな人生を歩んだプリンセスの映画化ですが、ヒルシュビーゲル監督は依頼当初はあまり乗り気じゃなかったそうです。

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「最初は脚本に全然興味がなかったんだが、エージェントに進められて渋々読んだら、あまりに刺激的で感動的なストーリーなので引き込まれてね。そして、ダイアナについて取材を始めたのです」

実在の人物で世界中の人が注目しているダイアナ元皇太子妃の物語ですから、より綿密にと資料を取り寄せ、徹底的に調べ上げたそうです。

「著作を20冊以上は読んだし、ダイアナに関する記事や記録映像もすべて見ましたね。部屋に85枚くらいのダイアナの報道写真などを張り巡らせて、彼女の表情や周囲の反応なども深くチェックし、事故に関する英国警察の報告書も見せてもらいました。彼女と関わりのあった人物に会ってインタビューもしています。1年くらいはリサーチに時間をかけました。幸運だったのは、以前手がけた映画『ヒトラー~最期の12日間~』に比べて、生きているダイアナ関係者が多かったことかな(笑)」

ダイアナを演じるのはナオミ・ワッツ。監督がダイアナを演じて欲しいと思った女優の第一候補だったそうです。ナオミが演じるダイアナは本当にソックリ。映画を見ていると、ナオミ・ワッツということを忘れてしまいそうです。でも監督は「私はナオミにダイアナに似せるように演じてくれと言ったことはないのです」と。

「ナオミには、物まねコンテストにするつもりはないと伝えました。私は特殊メイクを使って似せたりすることは好きじゃない。イライラするんですよ。キャラクターは内側から命が宿るものです。でも出来上がった映画を見て、あまりにも似ているので驚きましたね。まなざし、歩き方など、ナオミはアスリートのように体を訓練したのでしょう」

それにしてもダイアナは愛情深いのに、愛に縁がないことには驚きです。この映画は王室の裏側を描くわけでもなく、ダイアナの生い立ちを追いかけるわけでもありません。ダイアナが別居・離婚をしてまでも貫きたかった愛がベースになっている、恋愛映画でもあるのです。

「ダイアナは6歳のときに母が出て行って以来、愛に飢えていました。愛を知らない彼女が、チャールズ皇太子と恋に落ちて、愛を得たと思ったら、浮気されて、また愛する人に裏切られてしまった。その彼女がハスナット医師と出逢い、また愛を取り戻したのです。彼女は甦り、元皇太子妃としての責任感も強く出てきます。人道的な活動を続けてきたのはその証拠。彼女は愛を多くの人に与えたいと思っていたのです。だから、彼女の恋愛も含めてラブストーリーになったのでしょうね」

なるほど~。でも、ダイアナの愛情が豊かな分、それを失ったときのダメージは強く、それが事故にもつながっていったのかもしれないと思うと切ない……。ダイアナの愛と孤独は究極のセレブの裏側を見るよう。ドイツ人監督の冷静な目線によるダイアナの真実、悲劇のプリンセスの姿をぜひスクリーンでご覧ください。
(映画ライター=斉藤香)

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『ダイアナ』
2013年10月18日公開
監督: オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演: ナオミ・ワッツ、ナヴィーン・アンドリュース、ダグラス・ホッジ、ジェラルディン・ジェームズ、キャス・アンヴァーほか
(C)2013 Caught in Flight Films Limited. All RIghts Reserved/(C)Laurie Sparham