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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは12月20日公開のジム・ジャームッシュ監督作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。インテリでクリエイティブな吸血鬼の生をラブと音楽とユーモアに痛みを加えて綴った新しいヴァンパイア映画です。

米・デトロイトに住むアダム(トム・ヒドルストン)は、伝説のミュージシャンだけれどその正体は何世紀も生きる吸血鬼。ある日、モロッコのタンジールに住んでいた恋人の吸血鬼イヴ(ティルダ・スウィントン)がアダムに会いに来ます。

久々に再会をした二人は語り合い、愛を確かめ合いますが、二人の愛の巣にイヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が転がり込んで来ます。露骨に嫌な顔をするアダム。アダムは87年前にエヴァが起こしたある事件を許せずにいたのです。そしてエヴァは再びアダムとイヴを困らすせる事件を起こしてしまい……。

人間の世界でひそやかに何世紀も生きる吸血鬼たち。その吸血鬼のなかにもクリエイティブな吸血鬼がいたのですね。それがアダムとイヴです。彼らは過去のミュージシャンや作家などに詳しく、血液を凍らせた血のアイスキャンディをなめながら会話を楽しみ、音楽に身を委ねるという文化的な生活を送る吸血鬼なのです。

何世紀も生きている彼らは知識が豊富で会話もスマート。ジャームッシュ監督の手にかかると、吸血鬼もこのような個性を纏うのだなあと、そのセンスに感服。「二人合わせてジム・ジャームッシュの分身?」とさえ思いましたよ。

ジャームッシュ監督はこの映画について「吸血鬼映画は金が儲かるぞと聞いたので作ろうと思った」なんてジョークを飛ばしていますが、この映画は完成まで7年もかかったそうです。

「7年前に脚本はできていたけど、なかなか製作にたどり着けなくて。でもティルダは “まだ機が熟していないだけよ”とずっと待っていてくれたんだよ」と監督が語っている通り、ティルダ・スウィントンはそのときからイヴ役に決まっていたようです。7年前というと容姿も変わってしまいそうですが、ティルダは現在53才。まーったくその年齢には見えません。白い肌はすべすべでプロポーションは抜群。ちょっと浮世離れした雰囲気はイヴ役にピッタリです。

またアダムを演じたトム・ヒドルストンは、あの『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』といったアクション大作でロキを演じた人と同一人物とは思えないミュージシャン吸血鬼を好演しており、そのカメレオンぶりも見ものです。

これまでのエンターテインメント性の高い吸血鬼映画を期待すると、ちょっと趣が異なりますが、そこをはずして映画作りをするのがジム・ジャームッシュ。上品でクラシックな香りをさせながら、現代を斬る描写も備えた『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。デートムービーに最適な映画です。
(映画ライター=斎藤 香)

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『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
2013年12月20日公開
監督: ジム・ジャームッシュ
出演: ティルダ・スウィントン、トム・ヒドルストン、ミア・ワシコウスカ、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト、ジョン・ハートほか