写真 1

2013年、ネットを中心に話題を集めていた『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』という漫画。どんな内容かというと、「いい年して夢を捨てきれず、サブカルにまみれて自意識ばかりが肥大した、残念な20代、30代男女の肖像をシニカルな筆致で描く連作短編集」(amazonより)。

たとえば表題作の「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」の主人公・カーミィ。ミュージシャンを目指して活動するも、芽が出ないまま35歳に。彼女のなんとしてでも有名になりたい、そのためなら手段は問わないという自己顕示欲っぷりは、読んでいて思わず戦慄するレベル。

そんな自意識が肥大化して手がつけられなくなってしまった通称「ボサノヴァ女」にみんなはなっちゃっていない? その特徴を今からチェックリストでご紹介。当てはまるのがあったら、もしかしたら実はあなたも立派なボサノヴァ女かも!?

【「ボサノヴァ女」チェックリスト!】

1 とにかく有名になりたい。そのためには手段は問わない
2 90年代はオリーブ少女だった。ピチカート・ファイヴやカヒミ・カリィにあこがれて上京
3 休みの日はカフェで自分だけの特別な時間を過ごすのがスキ☆
4 Twitterにはカワイイものの写真をアップ。自称・カワイイものジャンキー
5 これまでの彼氏は肩書で選んでる。無能な男とつき合うなんてありえない
6 別れた彼氏が次に付き合う女は総じて自分よりブス。自分のほうが勝ってる
7 つるんでる友達はライター志望や劇団員など意識が高い人たちばかり
8 自分には夢があるから結婚とか言ってる場合じゃない
9 絶対に夢はあきらめない。夢をあきらめる奴は無能
10 夢破れて田舎に帰る奴らは人生の負け組だと思ってる
11 小西康陽や中田ヤスタカにならプロデュースされてもいいかなって思ってる。そんでもって、アパレルブランドを立ちあげたりモデルも兼ねたアーティスト活動をしてもいいかなって思ってる

****

こんな女、いるいる。見てて超痛々しいよねー……なんて笑いつつ、なんだか胸が痛くなるのはなぜ? それは、自分にも身に覚えがあるからぁぁぁぁ!!!!

そう、このやるせないほどのサブカルこじれっぷりが、90年代に若者だった私たち30代の心をズキズキと刺激してくるのです! カーミィのこと笑ってるけど、実はそれがそのまま自分に返ってくるというブーメラン! 私なんて、大学生のとき、渋谷のクラブにお忍びでカジヒデキが来ると友達に誘われキメキメで行ったら自分だけ服がめっちゃ浮いてた過去がふつふつと蘇ってきて「わああああああ!!」ってなったわ! いててててて……。

他の収録作品も……

「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」
「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」
「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 (MASH UP)」

など、タイトルだけでグサグサつき刺さるものばかり。自意識を持て余した同年代の皆さんは、『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』を読んで、己のサブカルこじれっぷりに身悶えするべし。一年の締めくくりにふさわしい一冊かもしれません。

参考:「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」(著=渋谷直角)
(文=鷺ノ宮やよい