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愛があふれる日、バレンタイン。でも愛って1年に1日だけ確認すれば良いってもんじゃない。特別じゃない日に当たり前のように仲良くできるのが幸せだよねえ。ただ夫婦や付き合いが長いカップルになると、だんだんと愛が薄くなっちゃって「もう、愛じゃなくて情よ!」って言いたくなることも。

せっかく好きで一緒にいるのに、生活しているうちに仲良しじゃなくなるのは、ちょっと残念。ということで、仲良しカップルでいる秘訣を聞いてきましたよ。誰に聞いたかって? 宇崎竜童さんです!

宇崎竜童さんといえば、妻の阿木燿子さんと一緒に仕事をし、ラブラブ生活を続けていることで有名。18歳で阿木さんを初めて見た瞬間に「オレの嫁が歩いてきた」と思ったというエピソードの持ち主です。ま、真似できない!(とはいえ、阿木さんはピンと来ていなかったそうですが。) 

でもね、宇崎さんのお話を聞いているうちにわかったことがあったの。おふたりが仲良しなのは、宇崎さんが運命を感じたということよりも、おふたりの、日々の小さなことの積み重ねに理由がありそうなのです。

というわけで、さっそく “おふたり” のなさっていることを紹介しましょう!

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■その1 「自分たちは4分の1人前だという意識を持つこと」

夫婦で山口百恵さんの黄金時代を支えた楽曲を作り、宇崎さんはロック歌手、作曲家、俳優、映画監督で成功し、阿木さんは作詞家・女優・小説家・エッセイストとして成功しているおふたり。おふたりのことを一人前でないという人はいないはず。

なのに、宇崎さんたちはご自分たちのことを “4分の1人前のふたり” だと考えているんですって。夫婦ふたり力を合わせても半人前だから、周りの人の力を借りながら、ふたりで協力して普通の人の70%、80%までに達しなくちゃと思っているそうなんです。

「世の夫婦がケンカをするのは、お互いが立派に一人前だから文句が出るんじゃないかな。一人前の働きをしてよって思うんだろうね。でも、オレたちは相手が4分の1人前だってわかっているから、『しょうがないよね、4分の1人前だもの』って話になるわけ」

っておっしゃっていました。謙虚!

確かに自分も相手も4分の1人前と考えたら、相手が思い通りの行動をしてくれなくても当たり前だって思える。けんかをするよりも、ふたりで一人前のことができるように協力方法を考えなくちゃならなくなります。記者はこの話を聞いてから夫に優しくなれました。「私達、4分の1人前以下だもんね、仕方ないよね」って。

■その2 「夫婦でもお互い敬語で!」

それから宇崎さんも阿木さんも、お互いにお願いごとなどを敬語で話しているんですって。「今日、私は仕事で夕方いないから、猫にごはんをあげておいてくれますか」「はい、わかりました」とか。

宇崎さん「世の夫婦間の言葉遣いが邪険すぎると感じるんだよね。親近感を感じるために荒い言葉を使うのかもしれないけれど、そういう言葉遣いをしていると、相手のことを自分の所有物と思ってしまうんじゃないかな。オレたちは相手を尊敬しているから、敬語なんだ」

ロッカーなのに! かっこよすぎます! 確かに相手に対するお願いごとを「やっておいてよね!」って言うよりも「やっておいてくれますか」って言った方が相手も良い気持ちになりそうだし、やってくれなかったときにそこまで腹が立たなそう。

■その3「相手に要求しない」

宇崎さんと阿木さんはケンカを全くしないそう。宇崎さんによると、阿木さんが怒るのは宇崎さんが全部悪いから。

ゴミ出しがオレの仕事なんだけど4分の1人前だからよく忘れちゃう。それで怒られても、オレが悪いに決まっているでしょう。怒られたら、翌週は忘れないようにと努力する。でも港区のゴミ出しは大変なのよ! えらく分類がある。マジメに分類するんだけれど、分類に集中していると4分の1人前だからゴミ袋をひとつ出し忘れたりする……。もう、怒られても『おっしゃる通りです』って感じだよ」

加えて宇崎さんは阿木さんに対して、なんの要望もないとのこと。宇崎さんは「過去世に何回も会って、何回も添い遂げられなかった相手に出会えて添えているんだから、もう何もいらない。ただ淡々と日々の生活を過ごすだけ」と言うのです。くー、そんなことを言ってくれるダンナさんだったら、そりゃケンカせずに仲良くできるのも当たり前だわー。

■その4 「相手に押し付けがましくしない」

でも、すごいのはダンナさんの宇崎さん側がだけではなく、奥さんの阿木さん側もそうだったんです。

「結婚してからしばらくの間、稼いだものはすべて渡していたけれど、今の価値なら10万円くらいだった。10万円でふたりが食えるわけがないんだけど、オレは食えると思って何の心配もしていなかったし、その状態に気づいてもいなかった。10年くらいたって印税で食えるようになってからそのことに気づいて、『オレ、ひもみたいだったね』って言ったら、妻は『同じお財布ですから』とだけ言ったんだ」

ですって。

つまり、最初の10年くらいは何にも言わずに阿木さんが稼いでふたりは食べていたってこと。押し付けがましくないというか、ふたりが補い合うのが当たり前という発想で過ごしていたってことなんですね。なんてステキなの! 

【「運命の恋」に関連する作品に関わり続けるのも秘訣!? 】

そんな宇崎竜童さんと阿木燿子さんは、1978年に宇崎竜童さんが映画「曽根崎心中」に出演したのをきっかけに、「曽根崎心中」にこだわり続け、2001年からはフラメンコと「曽根崎心中」を融合させた公演を続けています。

「曽根崎心中」とは、江戸時代に近松門左衛門が、実際の心中事件を元に作った作品。遊女・お初と商人・徳兵衛が命がけで運命の恋を全うし「恋の手本になりたい」と願ったことを描いた作品です。

宇崎竜童さんと阿木燿子さんがステキなのは、おふたりが「運命の恋」の話にずっと関わり続けていることも一因かも。

ちょっとカップル仲がよろしくないと思われる方は、4月に行なわれるフラメンコ版「曽根崎心中」を観に行ってみてはいかがでしょうか。情熱的な気持ちを思い出せるかもしれませんよ。情熱的な気持ちを思い出したら、宇崎竜童さんの教えてくれた夫婦のコツを思い出して実践してみてくださいね。

***「フラメンコ曽根崎心中」公演情報 ***
近松門左衛門の代表作「曽根崎心中」を、フラメンコで表現した衝撃作。カンテ(歌)に三浦祐太朗らやバンドリーダーに横田明紀男(Fried Pride)らを新たに迎え、さらなる高みへと進化をとげ、極限の愛を描く。

2014年4月2日(水)〜 6日(日)
新国立劇場中劇場
プロデュース・作詞:阿木燿子
音楽監督・作曲:宇崎竜童
主演:鎌田真由美
主演・演出・振付:佐藤浩希
公式サイト http://sonezaki.jp/

撮影=川島浩之
取材・執筆=FelixSayaka (c)Pouch 

▼フラメンコ曽根崎心中のワンシーン(画像提供)
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