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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

トム・クランシー原作の人気シリーズ“ジャック・ライアン” シリーズの最新作として登場する『エージェント・ライアン』。このシリーズは、これまで原作の映画化がお約束でしたが、本作は、ジャック・ライアンというヒーローのオリジナルストーリーになっています。そしてアレック・ボールドウィン、ハリソン・フォード、ベン・アフレックが演じたジャック・ライアンに続く4代目は『スター・トレック』のカークことクリス・パイン。フレッシュなジャック・ライアンの登場です。

【物語】
CIAアナリストのジャック・ライアン(クリス・パイン)は、上司ハーパー(ケビン・コスナー)より、モスクワの投資会社の不穏な動きを追うように命令され、現地へ飛びます。ところが命を狙われる状況に巻き込まれ、その後、突然やってきたハーパーに「君はもうアナリストでなくエージェントだ」と通告されます。今までデスクワークをしてきた彼は、戸惑いを隠すことができないまま、投資会社の代表チェレヴィン(ケネス・ブラナー)の企みを暴くという任務を遂行することになりますが、その仕事に婚約者のキャシー(キーラ・ナイトレイ)を巻き込むことに……。

さて、この新ジャック・ライアンの映画には3つの「おっ!」という特徴があります。

その1:初のオリジナルストーリーによる映画化
『レッド・オクトーバーを追え!』『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』『トータル・フィアーズ』と4作続いたシリーズの最新作ですが、今回は初めてトム・クランシーの原作ではなくジャック・ライアンという主役を基に創り上げたオリジナルストーリーなのです。いわゆるリプート作品というわけですね。

クランシーの原作はファンが多いので「おっ!賭けに出たな」と思ったのですが、トム・クランシー亡きあと、プロデューサー陣は「ジャック・ライアンシリーズを過去の物にしてはいけない!」と思い、この企画を立ち上げたそうです。そうしてできたのがジャック・ライアン成長物語でもある『エージェント・ライアン』。ジャック・ライアン役がクリス・パインが演じると知ったとき「いやに若返ったな」と思っていたけど、成長物語なら納得です。

その2:シェイクスピア俳優が監督&助演!
なんと監督はケネス・ブラナーというのもビックリ。「おっ!変化球できたな」という感じです。英国のシェイクスピア役者というイメージが強いブラナー監督がスパイ映画の監督ですからね。でも実はブラナー監督はサスペンス好き。今回は監督やりながら、敵役として出演もしていますからかなりやる気。

ブラナー監督曰く「脚本にとても惹かれたんだ。これは感情に訴えて来る作品だ。この映画を見た観客は本当にライアンのことが心配になるはずだよ」と。

そうなのです! シリーズでいちばん若いライアンはけっこう危なっかしくてハラハラさせてくれます。主人公の未熟さも描くのがブラナー監督の狙い。弱点があるゆえにサスペンスが高まるというわけですね。

その3:助演で光るケヴィン・コスナー
ケヴィン・コスナーはかつて主演級の大スターでした。監督作『ダンス・ウィズ・ウルブス』はアカデミー賞を受賞したし、『ボディガード』では世界中の女子を萌えさせました。が、しかし、主演映画がヒットしなくなり、あまり見なくなったな……と思ったら「おっ!こんなところに」。

最近は名脇役として数々の映画でいぶし銀の魅力を発揮していたのです。今回は若いライアンの上司役。やっぱり渋くて素敵です。もともと男前ですから老いても色気は健在、しっかりフェロモンを放っていますよ。主演じゃなくても輝くのがスターの証明。そういう意味ではケヴィン・コスナーを見直す作品にもなっています。

新シリーズとして発進した『エージェント・ライアン』。映画で主役の成長を見続けるというのもなかなか楽しいものですから続くといいですねえ。ケネス・ブラナー監督の演出は手堅く、デートムービーにも最適! ぜひ劇場で楽しんでくださいね。
執筆=斎藤香(c) Pouch 
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『エージェント・ライアン』
2014年2月15日公開
監督: ケネス・ブラナー
出演: クリス・パイン、ケヴィン・コスナー、ケネス・ブラナー、キーラ・ナイトレイほか
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