140307_fg02
宴会での一品とか、居酒屋の単品料理なんかで時々目にするフグ料理。あれってフグはフグでも、高級とされる天然トラフグとはまったく違うフグなのだそう。

死ぬまでに一度、いや、一度と言わず二度、三度、その高級天然トラフグとやらをフルコースで食べてみたい! そしておいしく日本酒を飲みたい!

そんな高級天然トラフグを食べる機会が訪れたときのために、押さえておきたい4つのポイントがあるんだって。これは勉強しておきましょう。もしかしたら今日誘われるかもしれないじゃん!

■ ポン酢だけで酒が飲めるよ!

いきなりですが、身も蓋もないお知らせです。「お金さえ出せばいくらでもいいフグが手に入る」のだそう。あーあ、世の中結局カネなのね、ガッカリ……させません。お金だけではどうしても手に入らないもの、それは「ポン酢」

高級フグ屋さんのポン酢は手作り。使うかんきつ類も、かぼす・ゆず・すだち・ダイダイなどお店によって種類や配分が違います。「ダイダイをベースにして寝かせ、出す直前にスダチを絞る」とか「ほんのちょっとだけレモンを入れる」とか。知恵と手間と時間、もちろんコストも半端なくかかる! 手元の器には、そんなポン酢が惜しげもなく注がれているんです。アー、ポン酢だけでもお酒がすすむー!

ポン酢が美味しかったら、ぜひ板さんに伝えてあげてくださいね。フグを褒められるより嬉しいんだって。

■ 3種の皮で3杯飲めるよ!

フグには、ウロコがありません。代わりに、厚くてトゲのある皮が全身を覆っています。その皮の種類がなんと3種類! それは知らなかった! さきほどのポン酢と合わせていただきましょう。

1 鮫皮(さめかわ)別名:一皮(いちかわ)
140307_fg04
「フグ皮の湯引き」といえば、まず頭に浮かぶのがこちら。一番外側の鮫皮は、ゼラチン質でプリプリした歯ごたえ。黒っぽいのが背中側、白っぽいのが腹側の皮。しかし、フグ皮はこれだけではなかった!

2 本皮(ほんかわ) 別名:遠江(とうとうみ)、ニ皮(にかわ)
140307_fg01
鮫皮の内側にあるのは、本皮というプリンとした粘膜。小さいフグではこの本皮まで分けることができません。3キロ超のフグでしか食べられない貴重な本皮は、見た目はホルモン、歯ごたえもコリッコリでミノみたいな感じなのだそう。

なぜ遠江(とうとうみ)と呼ぶかというと、その内側にあるのが身皮(みかわ)だから。愛知県東部にある三河地方、その隣は遠江(静岡県)じゃん? っていうシャレなのでした。

3 身皮(みかわ) 別名:三皮(みかわ)
フグの本皮を剥ぐと、いよいよ身が表れ……と思いきや、まだ皮がある! 身をミクロの厚さでうすーく覆う、白いラップのような膜が身皮です。わざと身をつけて厚めに削いだ身皮は、刺身でもよし、軽く炙り焼きにしてもよし! アー! お酒がすすむすすむ!

■ 鼻から抜けていく香りで酒が飲めるよ!

いよいよ身の部分をいただきましょう。“てっさ” と呼ばれるフグ刺しといえば、お皿の柄が透けて見える薄造りを想像しますよね。でも、あまりに薄くしすぎると、ポン酢に負けてしまいます。自信のある高級フグ屋さんでは、少し厚めに提供するのだとか。

その刺身に、鯛のように赤いサシが1本入っていたら……わーい! そのサシは3キロ超えの証! かなり期待できるフグです!

刺身の盛り方も「牡丹盛り」「菊盛り」「孔雀(くじゃく)盛り」「鶴盛り」など様々。職人の技を鑑賞したあとは、薄造りなら2~3枚まとめて、厚めなら1枚ずつ召し上がれ。薄造りのときにつけるポン酢は、チョンと触れる程度でオッケー。

刺身をゆっくり、空気と混ぜるように噛んでいると、鼻からフグの香りがふうっと抜けていく……そこでお酒をゴクリとやれば、もはやコミュニケーションは不要です。無言でいただきましょう。

■ 箸など要らぬ! 骨までしゃぶり尽くそう!

フグって、筋肉質なんです。身の体脂肪率が0.1%と超淡白なので、油との相性がバツグン。から揚げも期待できちゃいますねー! 鳥皮のように弾力のある部分は、腹身です。フグには、他の魚のように内蔵を守る腹骨がないので、腹身が厚くてジューシー! 

骨の部分は迷わず手づかみでどうぞ。フグの旨みは、骨の周りに集中しています。お上品に箸を使うと、いちばんおいしいところを味わえません。逆に、箸で身が離れてしまうようなフグは、ちょっと残念な代物。から揚げが出てきたら、骨をチューチューをしゃぶる音しか聞こえなくなる……それでいいんです。もちろん、お鍋のときも骨周りは手づかみで。

よーし、ヒレ酒いっちゃうぞー!

*******
白子にヒレ酒に〆の雑炊にと、フグ料理を挙げていくとキリがない。でもこの「ポン酢」「皮」「刺身」「骨周り」の4つには、居酒屋の単品料理のフグにはない、高級フグ屋さんの本気を味わうことができるのです!

フグの旬は彼岸から彼岸まで。そろそろシーズンも終わりに近づいて参りました。この4つのポイントを確かめさせてくれる機会、どこかに落ちていないものでしょうかねぇ~。

撮影・執筆=綾部 綾 / 撮影=enomi (c)Pouch

▼ ヒレ酒も最高!
140307_fg03