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もうすぐ3月11日、東日本大震災発生から3年が経過することになります。そして、あの福島原発事故からも。

これほど月日が経っても、未だ震災の爪跡は根深く、こと原発事故にいたっては、その解決まで途方もない時間が要されているというのが現実です。

本日ご紹介するのはメディアカンパニー『VICE JAPAN』が制作したドキュメント映像、原発20キロ圏内に生きる男 続編

2013年3月10日にYouTubeにて公開された前作『原発20キロ圏内に生きる男』。その続編である同作に出演しているのは、事故当時立ち入り禁止の警戒区域に指定されていた福島県双葉郡富岡町に暮らす男性、松村直登さん。彼は今もなお誰もいないこの地で、犬や猫、牛に馬にダチョウなど、多くの動物たちを世話しながら、たったひとりで生活しています。

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『VICE JAPAN』はこのたび、世界中の放射線データを収集し共有するというシステムを構築した民間団体『SAFECAST』のスタッフであるジョー・モロスさんと共に、松村さんを1年ぶりに訪問。自作のガイガーカウンター、つまり放射線測定器開発で知られている同団体の手によって、松村さん宅に据え置き型ガイガーカウンターを設置するのが目的です。

というのも、東京電力(以下、東電)は現在、使用済み核燃料の取り出し作業を実施中。危険か否かに関わらず、このことに関する情報が圧倒的に少ないことが問題である。そう考えた同団体が、松村さん宅の放射線量を随時チェックするべく、今回の策に踏み切ったのだそう。

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こうしておけば、設置箇所周辺の放射線量データが5秒おきにネット共有されます。そのため万が一事故が起きた場合でも、情報は東電や大手メディアが発表する遥か前にインターネット上に公開される、そういった仕組みのようです。

同プロジェクトの素晴らしさもさることながら、個人的に気になったのは、「爆発が起きて避難した際、向かった親戚宅に滞在を断られ、次に向かった避難先でも滞在を断られた。もう帰ることしか、松村さんには選択肢がなかった」という事実。

富岡町に残る。最終的に松村さんにそう決心させたのは、逃げることができず留まることでしか生きられない、多くの動物たちの存在でした。しかしそれ以前に、逃げ場所がなかったという現実があった。そのことが深く深く、胸に突き刺さるのです。

壊れたままの建物、荒れた土地。人影ひとつ見あたらない警戒区域の状況を目にしたときいつも、福島県出身の記者は、言いようのない思いにとらわれます。

松村さんから放たれる言葉はすべて、そこで暮らす人だからこそ出てくる、なにひとつ虚飾のないもの。だからこそ、一切の先入観を持たないまま、福島原発事故の現状を、ありのままとらえることができるような気がするのです。

多くの人々の人生を一変させた原発事故は、未だ解決していません。同作はその事実と改めて向き合う機会をくれる、必見の1本。お時間があれば前作と合わせてぜひ、ご覧になってみてください。

参考元:YouTube
執筆=田端あんじ (c)Pouch

▼『原発20キロ圏内に生きる男 続編』

▼こちらは前作『原発20キロ圏内に生きる男』です