knit1

クレア・サムズさんは、通常「ニット」という素材からは想像もつかない、ブラックテイストな柄の作品を数多く世に生み出す、テキスタイルアーティスト。

ポップなカラー、テイストと相反するかのごとく、その内容は痛烈な風刺であり、社会における見過ごされがちな側面を、深く鋭く切り取っています。

たとえば、織り込まれた夜空に光る星と複数の人間の姿が、一見楽しい雰囲気を醸し出している『Camp X-Ray』という作品

こちら実は、キューバ・グアンタナモ湾、グアンタナモ米軍基地に設置されているアメリカ南方軍・グアンタナモ共同機動部隊運営の収容キャンプ。アフガニスタン紛争およびイラク戦争時、テロリストを収容する場所として設立されました。

しかし同キャンプ、過去に一旦テロリストと見なした容疑者らを、裁判をすることなく逮捕・長期拘留していた模様。

しかも一部の容疑者らに心理的・物理的な強制を行っていたこともわかっており、『赤十字国際委員会』や『アムネスティ・インターナショナル』などから「拷問が行われている可能性」「対テロ戦争を口実にした人権侵害」と告発を受けた過去が。オバマ政権は現在、同キャンプの早期閉鎖を目指しているようですが、未だ叶ってはいません。

そのほかにも、ホームレスの女性がゴミ箱から瓶を拾う姿を織り込んだ『Bin Lady』や、市役所の外で1年間抗議活動を続ける家を失った男性の姿を織り込んだ『Trolley Protest』など、作品はどれもこれもセンセーショナル。その激しいギャップによって心に沸き起こる衝撃を、あなたも今すぐ体感してみて。

参考元:Clare Sams
執筆=田端あんじ (c)Pouch

▼『Bin Lady』

knit5

▼『Trolley Protest』

knit7

▼『Ballpoint Man』/胸にボールペンを5本もさし、行ったり来たりする男性。情報提供者? それともギャンブラー? でももしかしたら単に、あのボールペンのメーカーが好きなだけかもしれないけれど。

knit6

▼『The Mole Man of Hackney』/自身の家の地下にワインセラーを作るべく深さ8m距離18mものトンネルを掘った、通称「モグラ男」をテキスタイルに

knit4

▼『E Gibbons』/ハックニー・ロンドン特別区で起きたデパート火災の様子

knit9

▼『Hackney』シリーズ/ロンドンでもとりわけ治安が悪いとされているハックニー、同地をフィーチャーした作品をたくさん製作しているようです

tx