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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはドキュメンタリー映画『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』です。

2001年W杯の予選でオーストラリア代表に0対31で敗れたアメリカ領サモア代表チームが「W杯予選で一勝!」を目標に掲げ、オランダ人監督とともに勝利のために突き進む姿を描いた作品です。

【物語】

2001年、FIFAW杯予選でオーストラリアに大敗したサモア代表チームは、公式戦30戦で200ゴール以上の失点&全敗という、FIFAランキング最下位のサッカーチームです。そんなチームに米国サッカー連盟が送り込んだのが、オランダ人監督のトーマス・ロンゲンです。ロンゲン監督の指導は細かく厳しく反感を買いますが、次第にサモアチームに意識革命を起こしていくのです。

【勝ち方を知らないサモア代表チーム】

映画の前半で、このサモアチームがいかに弱いかがわかります。大量得点を与えて負けてしまった試合が延々映し出されるから。それはもう小学生とプロチームがやっているような感じでした。おもしろいようにゴールを決められ、GKが気の毒になってしまったくらいです。「かわいそうだよ、もうやめて~」と言いそうになりましたよ。

そんな世界最弱のサモア代表チームのメンバーはみんな働きながら練習しているアマチュア選手です。公式戦で一度も勝ったことがないけれど、彼らは止めようとは思わない。サッカーが大好きだからです。サッカーが大好きだけど、チームが弱いのは、勝利を引き寄せることがどういうことがわからないからでしょう。

【オランダ人の鬼監督が起こした奇跡!】

そんなチームをガラリと変えたのが、オランダからきたロンゲン監督です。サモアのノンビリとした空気を切り裂くようなダミ声にビックリ! いつも怒りながら仕切りまくるロンゲン監督に、選手たちはとまどいますが、確実に意識改革されていきます。勝つために必要なこと、心技体を叩きこまれていくのです。

しかし、ブレッド監督とジェイミソン監督は、監督が来る前から、サモアチームの撮影をしており、ロンゲン監督が来ると聞いて「彼がこの映画を台無しにするだろう」と悲観的だったそうです。プロデューサーのブロディはこう語っています。

「ネットなどでロンゲン監督のコメントをたくさん見たんだ。そのとき、気が強くてズケズケと物を言う、この高飛車なコーチが来たら、僕たちは作戦会議もチームの話も聞かせてもらえないだろう。この映画は完成できないかもしれないと本気で思ったよ」

ところが、ロンゲン監督が、この映画の最高の部分を担う存在になったのです!ブレッド監督はこう言っています。

「ロンゲン監督は、すぐに僕たちがこの映画で成し遂げようとしていることを理解してくれたんだ。彼は僕たちがチームの成功を本気で祈っているだけじゃなく、僕たちが練習やミーティングを撮影することが、その時点で僕たちと友情を育んでいた選手たちにやる気を起こさせる要因になると気付いたんだ」

なるほど。やはりできる監督は、物事の本質を見極める目を持っているのですね。そして、ブレッド監督たちは、ロンゲン監督が起こした奇跡を目撃するのです。

「試合中、彼がチームのやる気を起こさせるのを見て、僕たちも奮い立ったよ。ロンゲン監督が『君たちにも歴史を作れる!』と選手たちに信じさせることができれば、どんなに低い確率であっても結果はついて来ると思ったんだ」

弱いチームが覚醒されていくような、彼らの中で確実に何かが動き出したような……。ホノボノ暖かい空気が、確実にカッカと熱くなっていく様は、見ているこっちも「よっしゃ!」という気持ちになります。

W杯の日本代表が発表され、6月のブラジル大会への士気が高まる今こそ見てほしい『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』。1勝をもぎ取るのがどんなに大変なことかがわかるし、決して諦めないで勝ちに行く気持ちは、サッカーだけでなくいろんな場面で必要なことかもしれないなあと。やる気と勇気と感動をくれるドキュメンタリーです。

執筆=映画ライター・斉藤 香
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『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』
5月17日より角川シネマ新宿、シネ・リーブル梅田にて公開
同時にオンデマンド配信スタート
監督: マイク・ブレット、スティーヴ・ジェイミソン
製作: クリスチャン・ブロディ
撮影: スティーヴ・ジェイミソン
(C)NextGoalWinsLimited.

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