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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今週ピックアップするのはトム・クルーズの新作映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(7月4日公開)です。なんと原作は桜坂洋のSFライトノベル。これが面白い! 最近のトム・クルーズ映画の中では突出の出来です。日本のSFを実写化すると、こんなすごい世界が広がるんだと、ちょっと誇らしい気持ちにさえなりましたよ。

同じ日を繰り返す時のループに巻き込まれたケイジ(トム・クルーズ)が侵略者と闘う映画ですが、ケイジが一人の人間として成長する姿も描いたドラマでもあるのです。

【物語】

謎の侵略者ギタイの攻撃により、破滅寸前の地球。戦闘スキルゼロのケイジ(トム・クルーズ)は最前線に送り込まれますが、全く役に立たず、出撃してから5分で殺されます。

しかし、次の瞬間、彼は出撃前日に戻り、また同じ1日が始まるのです。殺されてはもう一度という日を何度も繰り返すケイジ。その闘いの渦中で、彼は兵士のリタ(エミリー・ブラント)と出会います。彼女はケイジの時のループに気付くのですが……。

【ダメ人間が時のループを経て闘う術を身に着けていく】

冒頭、ケイジは最前線へ兵士として送り込まれることに激しく抵抗をします。彼は口が達者でずる賢いので、なんとか逃れようとするのです。しかし、彼がどんなに抗っても、問答無用で戦闘ジャケットを着せられます。戦地へ送り込まれ、オタオタするケイジ。あのトムがこんな情けない男を演じるとは……と思ったら、なんとケイジは襲われてすぐに命を落としてしまうのです。

そして前日に戻り目覚めるところから、この映画の面白さはいきなりギュン! と加速します。何しろ一度経験したことがまた起こるわけですから、何度もやり直すうちに、ケイジは様々な事を学習していくのです。自分とかかわる人物の言葉はもちろん、クセ、性格も把握していきます。そして戦闘スキルもアップしていくのです。

ただ、謎の生物ギタイだけは倒せない。圧倒的に強く、また大量に襲ってくるわけですから何度も殺されては前日に戻るのです。そんなケイジのループにリタが気付き、実は彼女も同じ運命を背負っていることがわかってから、おもしろさはますます加速! ケイジとリタは運命共同体となって、侵略者に立ち向かうのです。

【桜坂洋のSFライトノベルにハリウッドが目を付けた!】

このSF小説に目を付けたのはプロデューサーのトム・ラサリーで、この小説を渡された同じく製作者のアーウィン・ストフは、すぐに映画化の可能性を感じたそうです。

「人類存亡の危機に放り出された主人公が状況を改善するために、肉体も精神もスキルアップしなければならなくなるというストーリーが気に入ったんだ」

漫画や小説が映画化のために買付されるのはよく聞きますが、実際に映画化に至るのはほんの一部。時間もお金もかかるし、実現するのは本当に難しいんですよ。それがトム・クルーズ主演の大作として映画化されるなんて、これは本当に凄いこと! 加えてこの映画、全米レビューでも絶賛されており、評価が高いのもうれしい限りです。

【映像、ストーリー、役者の演技すべてがスペシャル】

SFやアニメの実写化となると、映像や美術やデザインで世界観を徹底させないと安っぽくなり、簡単に二流作品に成り下がってしまいますが、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はそこに手を抜かなかった! 

兵士が着用している戦闘スーツは40キロ近い実にヘビイなスーツで、トムは来日イベントで「冷蔵庫を背負ってアクションしているようなものだよ」と語っていました。それを着用して壮絶なアクションをする役者魂! それは十分、映像に現れ、ギタイとのバトルが壮絶で迫力があるのは、役者たちが重いスーツを着て渾身の力を振り絞ってアクションしていたからです。ちなみに原作者の桜坂洋氏は、撮影現場を訪ねた際、トムにすすめられて戦闘スーツを着用したそうです。

「ダグ・ライマン監督は、戦闘スーツを着た僕をエキストラで出演させてくれたんだけど、あれを着たらほとんど動けなかった。10テイクくらい撮影したけど、立ったままだったのにクタクタになってしまった」と語っています。

【ラブストーリーの片鱗も!】

ケイジとリタの間にはラブも芽生えたりするのですが、何しろケイジは何度も死んで、記憶を残したまま、もう一度同じ日をやり直すという運命を背負った男です。ケイジはリタを覚えていますが、リタはケイジが復活するたびに初対面なわけ。どんなに好きになっても、二人の関係はすぐに振り出しに戻るところが切ないというか何というか……。ケイジとリタのねじれた関係は見逃せません。

また、ネタバレになるので多くは語れませんが、リタもケイジと同じ運命を背負っており、それが後半の物語をスリリングに展開させ、ケイジはピンチに陥ります。一難去ってまた一難、ドキドキしながらスクリーンにくぎ付けですよ。

原作のファンはもちろんのこと、SFが苦手な人でも『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はエンターテインメント大作として実によくできているので大丈夫。この夏一番、暑さも吹っ飛ぶおもしろさ! ぜひスクリーンで堪能してください。
執筆=斎藤 香(C)pouch

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『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
2014年7月4日より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:ダグ・ライマン
出演:トム・クルーズ、エミリー・ブラント、ビル・パクストン、ブレンダン・グリーソン、ジョナス・アームストロング、トニー・ウェイ、キック・ガリーほか
(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

▼おまけ! トム・クルーズ6月27日の来日会見にて(撮影:斉藤香)

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▼左:監督 ダグ・ライマン/ 右:製作 アーウィン・ストフ

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