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ホテルのロビーや部屋のデザインは、どこであれだいたい無難で、そう大差ない――。そんな考えを一気に払拭してくれるホテルが、東京・東新橋の「アーティストインホテル」(2013年2月オープン)です。しかもよくある「デザイナーズ系」とも、かなり毛色が違っている模様。

このホテルのウリは、日本文化のさまざまな要素をアーティスティック&おしゃれに再構成した部屋ごとにまったく異なるデザイン。これがいま、外国人のお客様に大ウケなんだとか!! 

部屋ごとにひとつひとつ違うデザインは、各方面で活躍する実力派アーティストたちが担当。彼らが実際にそこに滞在して制作したものです。部屋で生まれるインスピレーションを元に部屋の壁紙に直接絵を描いたり、原画やオブジェを壁に設置したりしたのだそう。

本日は、最近完成したばかりのお部屋「祭り」と「妖怪」、そして以前からあるお部屋のなかでも特に人気が高い「百人一首」をご紹介しようと思います!

■ 「日本語」の美しさを発見できる「百人一首」の部屋

はじめにご紹介するのは、実力派書道家が手がけた「百人一首」がテーマのお部屋! 壁一面に「百人一首」と「日本の四季」が描かれています。なんとミヤビな……!

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ふと天井をみると、全面が漆黒に染められていて、美しい金色の流星群が描かれています。でも、よく見てみると……! 織りなす星々は、無数の「ひらがな」で表現されているのです。

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ほかにも、水墨画を連想させるような「雨」や「雪」なども仮名書で表現。鋭いものや丸みを帯びたものなど、同じ文字でも表情が違うことをうまく使い、各要素を表しています。こうしてみると、やはり日本の「美」って力強くてしなやかで複雑で、なんとも言えない美しさがありますねぇ。

これらの文字は「百人一首」からの引用だそうで、眠れない日はひとつひとつ読んでみるのもよさそう(草書体だけど……)。

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「仮名書の美である余白と線の美しさを感じながら、落ち着いた空間を楽しんでいただければ幸いです」と、この部屋を手がけた書道家の院京昌子さん。

文字で季節感を表すなど、日本語、とくに「ひらがな」の奥深さに日本人の記者も感心してしまいます。外国からのお客様が泊まった際は、たとえ文字が読めなくても「日本とはなんぞや」をイマジネーションできるのかもしれません。

■ めでたさ120パーセント! 日本の粋「祭り」を表現

次にご紹介したいのは、「祭り」をテーマにした新しいお部屋。この部屋、壁に空白部分が一切なく、全面的に「お祭り騒ぎ」をしちゃっているド派手ぶりです。浴衣やハッピを着た人たちが踊り狂い、太鼓を叩き、獅子舞や龍が飛んだり跳ねたりし、さらには制服姿の女の子たちまで弾けています。

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漁船旗を思わせる元気のいい海の波や紅白幕も背景に取り入れて、おめでたさを120%演出! 

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さらには、クローゼットを開けるとまるでハッピが掛かっているかのように描かれていたり、エアコンの空調口は獅子舞の口になっていたり、ドアの上には日光東照宮にある「眠り猫」のような味のあるネコが描かれていたりなど、小ネタ要素も満載。どんなイラストが描かれているのか、ひとつひとつ確認したくなっちゃいます。

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この部屋を担当した現代画家の石原七生さんは「旅先の高揚感と祭りの高鳴りが共鳴。終わらない祭りを描きたい」とコメント。いやはや、一瞬にしてあらゆる旅をしたような気分になれますよ。

■ 「妖怪」の部屋から感じ取る日本の想像力と創造力

数あるデザインルームのなかでも、もっとも制作時間が長かったというのが「妖怪」のお部屋。妖怪、と聞くとおどろおどろしい絵がたくさんあるお部屋を想像していたのですが、なんとまったく逆! 天界まで続いていきそうな青空に描かれた妖怪たちは、どの子も愛嬌と茶目っ気たっぷり。特に、担当された日本画家の馬籠伸郎さんご自身がお気に入りのカッパは、どどんと大きく描かれているうえ、とっても愛らしいお顔をしていて癒し効果大。
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しかし唯一怖い顔をしている妖怪が描かれている場所があります。それは、クローゼット内にある金庫の近く。なんと、金庫を見張ってくれているんですって! これは効果ありそう〜!!SONY DSC

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おまけに金庫には小判がザクザクふってくる様子も描かれて、なんだか本当にお金が溜まりそうな予感。先ほどご紹介した「祭り」のお部屋にもクローゼット内に絵が描かれていましたが、作家さんによって、描き方や捉え方がまるで違うのも面白い。

こうして改めて日本の妖怪を見てみると、その多種多様さに感心します。擬人化文化は、実は妖怪からきているのでは……とも思ったり。とにかくイマジネーションがすごい、ジャパン!

■いい思い出をつくってほしい

「ホテル名は忘れても、面白いホテルに泊まったという思い出を残してほしい」と広報担当の早乙女さん。旅とは思い出の積み重ね。こんなユニークなホテルに泊まることができたら、むしろ一生忘れられない気がします。

もちろん、好みのお部屋を指定しての予約が可能です。今後さらに部屋数を増やすとのことで、予約が楽になるかもしれません。記者(私)もこの取材で日本の良さを再発見できたので、外国人の方だけでなく、日本人の皆さまにもぜひオススメです。

【各種情報】
ホテル名:パークホテル東京
住所:〒105-7227 東京都港区東新橋1丁目7番1号 汐留メディアタワー
TEL : 03-6252-1111
チェックイン:14:00 チェックアウト:12:00

参照元:アーティストインホテル, パークホテル東京
客室画像提供=パークホテル東京
一部撮影・執筆=百村モモ (c)Pouch
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▼ロビーも日本人アーティストによる作品が展示されています。/ロビー撮影=百村モモ
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