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夏になるとカブトムシやクワガタ、セミを飼うご家庭も多いのでは? 先日、甥っ子の3兄弟に会ったのですが、3人は1つずつ虫かごを持っていて、なかでは黒い虫がうごめいていました。ひぇえ~。また男児子育て中の友人たちの話を聞くと、男児らはカブトムシやクワガタが繁殖してむっちりとした幼虫が出てくると喜ぶというではありませんか。男児はかわいいけど、それはかなり辛い。

なーんて思っていたのですが、もしかしたらそんなことを言ってはいられない日が来るかも。もっと言うと、スーパーとかで食用虫を買う日が来るのかも。「今日の幼虫、おいしそう〜」とか言って。

というのは、国連食料農業機関(FAO)が昨年、「昆虫は栄養価が高く採集も容易で、世界の未来のために理想的な食料と考えられる」という報告書をまとめたから。

む、虫が理想的な食べ物、だと……? だったら、未来のために早めに虫嫌いを克服した方がいい、のかも……。というわけで、ミャンマーのシャン民族料理が食べられるノングインレイ@高田馬場に行って虫を食べてきましたよ。「ずぼら栄養士の15分ご飯」の記事でおなじみの川村郁子さんと一緒にね。

ノングインレイでは竹蟲、セミ、コオロギが食べられる

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ミャンマーのシャン民族料理が食べられるノングインレイは、高田馬場で17年以上続く老舗。お店で働くのはシャン民族の方々で、メニューに載っている料理もほとんどがシャン民族料理(一部はミャンマー民族の料理)とのこと。日本にいながらミャンマーの味が楽しめます。
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ノングインレイで食べられるのは竹蟲、セミ、コオロギ。記者はイナゴの佃煮等は食べたことがあるので、今回は竹蟲に挑戦しました。竹蟲=若い竹にすむ芋虫です。
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■スナック菓子のような見た目の竹蟲

芋虫と聞いて想像したのが、カブトムシなどの幼虫。口の中でブチュッと潰れたらどうしよう……と心配しながら待つこと5分。出てきたのは、「小振りのサッポロポテト」もしくは「小振りのかっぱえびせん」と表現でき……なくもない竹蟲のフライです。頭の部分を見なかったフリすれば、ね。
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ただ頭の部分を見ちゃうと、やっぱりどうにもこうにも虫。オーナーさん曰く、日本にも似た虫がいて、魚釣りに使うのだとか。つまり釣り餌ってこと! あー、確かにペットショップで見たことがある! そう思うと食べる気がぐんぐん失せてくるのですが、シャン民族の方々が食べているものを「ぐえー」とか言えない。自分で注文したんだし。
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■サクッとした食感

手を伸ばす勇気がなかなか出ず、しばし凝視……。
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でもいつまでもたじろいでいるわけにはまいりません。気を取り直して、いざ1匹つまんで食べてみると…… 揚げてあるからか、中は空洞になっていてサクッとした食感。芋虫が口の中で潰れる様子を想像して恐れ戦いていたけれど、そんなことはまったくありません。
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■味は青臭い……けど、食べられなくはない&慣れたら病み付きになるのかも!?

竹蟲の調理方法は、揚げて塩をふるのみ。素材の味が生きています! 肝心のお味は、一言で言うと青臭い! 独特の風味があります。鼻の奥の方にむわっとした草いきれっぽい香りが漂う感じ。最初、塩気を控えめにしてくださっていたので風味がちょっと辛かったのですが、塩を増やしてもらったら、割といけました。
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何か食べたことのある味に似ている……と二人で考えながらぽりぽり食べて、ひらめきました! 骨せんべいとか、海老とか、生臭さのある魚介系の味に似ています。

もし食糧難の時代がきて、竹蟲を食べるっきゃないとなったら、記者は「味はともかく長靴いっぱい食べたいよ」と思うでしょう。見た目は……要は慣れだしね。慣れたら、この草いきれっぽい香りが癖になるかもしれません。

■竹蟲は「ホールフード」&「オーガニックフード」&「天然モノ」!

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お店の人によると、竹蟲は山の中の自生している竹で育ったものとのこと。養殖などは一切していないそうです。つまり、農薬を使用しない「オーガニックフード」であり、「天然モノ」ってこと。また、頭からしっぽの先まで丸ごと全部食べる「ホールフード」でもあります。ある意味、最近話題の食の価値観に合っています。

■シャン民族のちょっと珍しい「おつまみ」なのだ!

この竹蟲、シャン民族の方々にとっても「毎日食べるもの」というほどは市民権を得ていない様子。またシャン民族の東側、北側でしか採れないので、全員が食べているわけでもなさそうです。でも、子どももお菓子代わりに食べるし、大人はおつまみとして手でつまんでぱくぱく食べるとのことでした。

■加工された状態で販売

ミャンマーでは、ペットショップのように生きた状態で売っているのかしら……と思って聞いてみると、揚げた状態で売られているとわかりました。ちなみにセミやコオロギは一度蒸して干した状態で売られているんですって。それを買ってきて家で再度素揚げするとのこと。なるほど。それだったらスーパーで売っていても慣れていけるかも。

■ノングインレイ、シャン民族の料理は超うまい!

竹蟲、コオロギ、セミを注文しなければ、ノングインレイのお料理に虫が食材として使われていることはありません。シャン民族のお料理はうるち米の米粉を使った麺が有名。記者もシャンそばをいただいてみましたが、もっちもちした米粉麺が絶品でした。
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川村郁子さんはミャンマー民族の料理であるマトンカレーを注文。マトンカレーは香りがいいのにあまり辛くなく、こちらも美味
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ランチ時にはセットがあり、シャンそばなどには「揚げシャン豆腐」やスープ、お漬け物がついてきます。揚げシャン豆腐は外はカリッと、中はもっちりでとってもおいしかった!
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■竹蟲を食べる時は、4、5人でワイワイいくのがオススメ

竹蟲はお皿で提供されます。「どんな味だろう」と確かめながらぽりぽり食べていくとけっこう食べられますが、2人だと完食するのはちとキツい印象。ただ、命あるものを無駄にするのは良くない! ということで、4、5人でワイワイ行って1皿頼んで、あとは別の絶品料理を頼むが吉。爽やかな飲み心地のミャンマービールも置いてあるので、導入は珍体験、その後は絶品料理を堪能する飲み会などを開いてみては? 異文化体験気分で楽しいはず!
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■見直されている虫食

ロイターが以前に報じたカナダの研究結果によると、人口の増加や所得水準の向上を考慮すると、2050年までに1人当たりの肉の消費量を世界平均で19%〜42%減らさなければ、現状レベルの環境は維持できないそう。肉食は、菜食よりもはるかにエネルギーや水を利用するのです。

そこで、肉食よりも環境負荷が低く、菜食よりもエネルギー効率が良いとして見直されているのが虫食なのです。日本にもイナゴや蜂の子などを食べる文化があります。そこらにいる虫をむやみやたらに食べるのは安全上問題がありそうですが、各地で伝統的に行なわれている虫食をもっと大切にしたほうが良いのかもしれません。

えっ? それはいいけど残った竹蟲はどうしたのかって? 食べましたよ、全部。ぐわーっとね。
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【お店情報】
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店名:ノング インレイ (Nong Inlay)
住所:東京都新宿区高田馬場2丁目19-7 TAK11 1F
アクセス:JR高田馬場駅 早稲田口から1分
電話:03-5273-5774
日本在住33年のオーナーさんが渋くてステキです!
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参照=ロイター

モデル=川村郁子、取材・撮影・執筆=FelixSayaka (c) Pouch
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

日本, 東京都新宿区高田馬場2丁目19−7