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[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品の主演インタビューをお届けします。

今回取材したのはフランス映画『イヴ・サンローラン』(9月6日公開)の主演俳優ピエール・ニネです。『イヴ・サンローラン』は、伝説のデザイナー、サンローランの人生を描いた作品で、彼がデザイナーとして成功した裏側を描いています。

イヴ・サンローラン財団所有の衣装の貸し出しも許可された、ブランドが初めて公認した映画なのです。その主演俳優のピエール・ニネが来日。映画ではサンローランそっくりだった彼ですが、さて本物は……と、サロン会見に行ったら、ヨーロピアンエレガンスな雰囲気をたたえた超絶美青年でした!

【物語】

1957年、クリスチャン・ディオールの亡きあと、後継者に指名されたのは21歳のイヴ・サンローラン(ピエール・ニネ)でした。周囲の不安を一蹴するようにイヴは初めてのオートクチュールコレクションで成功をおさめ、若き天才デザイナーとして認められます。彼は後援者のピエール(ギョーム・ガリエンヌ)と恋に落ち、彼の支えでデザインの仕事に集中……できるかと思ったら、兵役の問題が降りかかります。イヴは招集されフランス軍に入隊しますが、神経衰弱で苦しむことに……。

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【サンローランを演じるために生まれた男?】

記者会見は通常ホテルの宴会場で行われることが多いのですが、ピエール・ニネの会見はペニンシュラホテルのスイートルーム。とてもプライベートなサロン会見という形で行われました。いつもの会見よりも少人数で懇親会みたいな感じです。
記者たちが待つところへ、ピエールが登場! 白い肌、驚くほどの小顔、大きな瞳、スタイルもよくて、それはもうまぶしいほどの美青年です! ちなみに初来日。日本について問われると

「世界をプロモーションで回りましたが、僕にとって日本に来ることは重要でした。来る前から日本に対して尊敬の念を持っていました。日本人は礼儀というものを大切にしていますし、エレガンスな感じがします。サンローランがとても愛した国でもありますからね。今日はよろしくお願いします」

それにしても、映画スタッフは彼をよく見つけたと思います。骨格など確かに写真で見るサンローランに似ているのですが、目の前の本人はそれほどソックリさんというわけではないからです。この役に選ばれた経緯は……

「思いがけない出演依頼だったんですよ。パリで舞台の稽古をしているときにジャリル・レスペール監督から“ビール飲みに行かない?”と誘われて行ってみたら、この映画のオファーでした。“世紀のラブストーリーでありクリエーションについての作品。イヴ・サンローランの映画だよ”と言われたのです。即OKし”僕の役は?“と聞いたら”イヴ・サンローランの役だ“と言われて。こんなに鮮烈で魅力的な役の依頼が、僕みたいな若い役者に来ることはめったにないので、これはチャンスだ! 自分は凄く幸運だと思いましたね。準備することがたくさんあるので、すぐに役作りに入りました」

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【イヴ・サンローランの役作りの秘密】

イヴ・サンローランを演じるにあたって、ピエールは3人のコーチについて、サンローランの外見、デッサン、スタイリングなどを学びました。

「役作りについては、まずiPodにサンローランの声を入れて1日3,4時間聞いて、彼の話し方を学びました。ほか3人のコーチは、一人目はデッサンを教えてくれる人、二人目は、サンローランの体型の変化について教えてくれるフィジカル専門の人、三人目はデザインとファッションのコーチで、デザイナーとしての仕事について詳細を学びました。僕とサンローランの共通点はないか探したのですが、彼は躁うつ病だったし、孤独で、とても複雑な内面を抱えた人でした。僕とは違いますね。でも、サンローランも僕も若くしてクリエーションの世界に入り、自分の道が定まったことは共通点と言えるかもしれません」

確かにピエールは、映画で見るサンローランのような孤独の影を抱えている人には見えないですね。知的で好奇心旺盛な美しい好青年って感じ。サンローランとピエールは陰と陽みたいです。

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【サンローラン顔に要するのは4時間以上!】

この大役を演じて、ピエールが一番大変だったのはラストシーンだったそうです。

「ラストのファッションショーは大変でしたね。サンローランになるためのメークは4時間30分、そして、監督がワンテイクに撮影したいと言っていたので、準備が終わったあともずっとステージの横で本番まで5時間待ちました。たくさんのモデルが僕の横を行ったり来たりして、エキストラの数も300人はいて、その中で待つのはストレスがたまりましたよ。でも、いざ撮影が始まるときに気づいたんです。このストレスは実際にサンローランが感じていたストレスじゃないかと。フィクションとリアルが交じりあう瞬間でした」

確かにデザイナーはずっとバックステージで指示を出したりしながら待機します。ましてや自分のショーですから、サンローランのこのときのストレスはMAXだったでしょう。

【華やかなデザイナーの世界の陰を見て!】

クリエイターは何もないところから何かを生み出す作業を繰り返し、そして世界的な人になると新作が発表されるたびに注目をあびます。そのプレッシャーたるや凡人には理解できるものではないでしょう。加えてサンローランは兵役も体験していますから、「死」を目の前にして繊細な心はすぐに壊れてしまうガラスのような状態だったかもしれません。ピエールはこの映画の見所をサンローランの陰の一面だと言っています。

「何もないところから自分の帝国を築いていったサンローランですが、この映画はその華やかな業績の裏のドラッグ、アルコール、セックスなど私生活も描いています。でも、その苦悩をクリエーションに昇華させてしまうところが彼の素晴らしさなのです」

フランスの美青年がタイトルロールを演じる映画『イヴ・サンローラン』。サンローランの貴重な衣装の数々も麗しく、ひとつの時代を築いた伝説のデザイナーの映画は見応えありますよ。ピエール・ニネとサンローランの美の競演に酔ってください。
インタビュー撮影・執筆=斎藤 香(C)Pouch
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『イヴ・サンローラン』
2014年9月6日公開
監督:ジャリル・レスペール 出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット、マリー・ドゥ・ヴィルパンほか
(C)WY productions – SND – Cinefrance 1888 – Herodiade – Umedia