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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回はフランス・アメリカ・ベルギーの合作映画『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』(2014年12月6日公開)をピックアップ。『スパニッシュ・アパートメント』で学生時代『ロシアン・ドールズ』で社会人として描かれてきた主人公グザヴィエの10年後を描いたのがこの『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』。シリーズですが、初めて見る人でも安心してよいです。

グザヴィエのドラマは作品ごとで続きものではないので、この映画が初めてでも彼のキャラはよくわかるし、逆に『ニューヨークの巴里夫~』から『ロシアン・ドールズ』『スパニッシュ・アパートメント』と時代をさかのぼってみてもいいかも。さて、子持ちになったグザヴィエがなぜ、ニューヨークで巴里夫になるのか?を見てみましょう!

【物語】

妻のウェンディ(ケリー・ライリー)との間に二人の子供を授かり、小説家としても上々のグザヴィエ(ロマン・デュリス)のパリ生活は快適なはずでした。ところがグザヴィエが親友のレズビアンに精子提供をして、父親になることを承諾したことから、ウェンディとの仲は微妙に。彼女はNY出張から帰ると、恋人ができたと別居を言い渡しNYへ。諦め切れないグザヴィエは子供を連れてウェンディを追ってNYへと旅立つが……。

【グザヴィエはいいヤツだよ】

主人公のグザヴィエを演じたロマン・デュリスはグザヴィエとの再会に喜んだそうです。

「監督が僕に“クザヴィエに戻ってほしい”と思っているような気がしたんだ。だから僕は“絶対にやる、知ってるだろう”と言ったんだ。自分の中のグザヴィエを再び見つけて演じることはユニークな体験だった。だって彼はいいヤツだからね。もう基礎はできていたから、あとは年を取らせるだけだったよ」

同じ役を続けてやることは、シリーズ映画にはありがちですが、『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』のようなラブコメディ映画ではちょっと珍しいかもしれません。風変りなグザヴィエが父になっているのにビックリですが、でもしっかりしたのかと思ったら、なんとレズの親友に精子提供! それもアッサリと。そのへんの物事を深く考えず感覚的に行動するところ、夫だったら「何コノヒト!」と女子ならみんな思うでしょう。だからこそウェンディも別居を決めたのです。浮気じゃないけど、別の女性が彼の子供を身ごもっているわけですから、そりゃイヤですよ。でもそれはグザヴィエの優しさだったりするので、そこが彼の憎めないところなのです。

【二人は別れる運命?】

グザヴィエの妻のウェンディは、彼に振り回されながらも合わせてきたけど、精子提供でついに堪忍袋の緒が切れます。

「セドリック(クラピッシュ監督)は、グザヴィエとウェンディを別れさせたかったの。事態をもっと複雑にするために。でも私はウェンディが嫌われるんじゃないかと思ったわ。彼女がとても単純な人のように見えたから。でも私はウェンディが好きだからそれは嫌だった。でも10年も一緒にいると、グザヴィエとウェンディは違う物の見方をするようになるの。とても残念だけど、それは二人にとって幸福になるチャンスでもあるのよ」

こう語るのはウェンディを演じるケリー・ライリー。
彼女はウェンディが嫌われることを心配しているけど、別れるきっかけを作ったのはグザヴィエだから、けっこう女子はウェンディに共感する人は多いはず。彼女が正反対の男に惹かれる理由もわかるしね。

【意外とタフなグザヴィエ】

グザヴィエが子供たちとNYに滞在するために中国人女性と偽装結婚をしたり、元カノと再会したり、グザヴィエにはいろんなことが起こりすぎです。でも、マイペースな彼は、一見チャランポランに見えますが、意外とタフ。最初は精子提供!と若干引き気味だった女子も、映画の最後には「この人と一緒にいると飽きないかも」と思うはず。取扱説明書が必要な男ですが、魅力的であることに変わりありません。

執筆=斎藤香(c)Pouch
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『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』
2014年度12月6日よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、セシル・ドゥ・フランス、ケリー・ライリー、サンドリーヌ・ホルトほか
(C)2013 Ce Qui Me Meut Motion Picture – CN2 Productions – STUDIOCANAL – RTBF – France 2 Cinema