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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはデヴィッド・フィンチャー監督の最新作『ゴーン・ガール』です。正直、内容についてあまり多くを語れない(書けない)映画です。なぜなら後半から物語の様相がガラリと変わっていくからです。最後にドンデン返しというのではなく、前半と後半で分かれるといったらいいのか。物語が進めば進むほど、狂気の世界に突入して背筋がゾクゾクしていくのですよ。

フィンチャー監督のミステリーでは『ゾディアック』という良作もありますが、こちらの方がエンタメ色が強いので、誰にでもオススメできる作品になっています。

【物語】

ライターのニック(ベン・アフレック)は、美しいエイミー(ロザムンド・パイク)と大恋愛の末に結婚。ニックの故郷であるミズーリ州に引っ越して、子福な夫婦生活を送っていました。でも、結婚5年目にエイミーは失踪。居間は荒らされ、血痕も残り「エイミーは殺されたのか?」と、この事件は全米注目の的に。と同時にニックの隠された私生活が暴かれていくのだけれど……。

【ベストセラーの映画化は作者が脚色!】

映画『ゴーン・ガール』の脚色は原作者であるギリアン・フリン自らが行いました。

「この小説は入り組んでいて、簡単に合理化できるものではなかった。映画にすべてを盛り込むことはできないのもわかっていたけど、ダーク・ユーモアが入る混む余地が欲しかったの。それこそ、この気色悪い、中毒性がある物語が棲む場所だから」

確かに! そのダーク・ユーモアはニックとエイミーのキャラクターから発せられているのでしょう。この映画の面白いところは、共感できるまともな人物は、主役の男女ではなく、脇役のニックの妹や事件を捜査する女刑事だったりすることですね。ニックとエイミーは知れば知るほどおかしな二人だし、どちらかを応援するというより、どっちもどっち的な感じがしなくもない。そこがこれまでのミステリーにはなかった感じなのですよ。

【女優争奪戦だったエイミー役】

ヒロインのエイミーを演じたのはロザムンド・パイク。これまでトム・クルーズと共演した『アウトロー』などに出演していた美人女優ですが、認知度は低かった彼女。でもこの作品で一気にスター女優になりそうです。アカデミー賞主演女優賞候補になるのでは? とさえ言われています、というか、なりますね。上品で美しい女性なのですが、後半で爆発的なパフォーマンスを一気に見せ、観客の度肝を抜きますから。

エイミー役には、本作のプロデューサーであるリース・ウィザースプーンや、ナタリー・ポートマン、シャーリーズ・セロンなどの名前もあがっていたし、ほかの女優もフィンチャー監督にオーディションテープを送ってアピールしていたそうです。そんなよりどりみどりのなか、フィンチャー監督はよくぞロザムンド・パイクを抜擢したと思う。「次に何をするのか想像するのが難しい女優」という理由でロザムンドをキャスティングしたそうだけど、女優を見る目があるなあ。彼女が演じたことで、エイミーという女性は完全に血の通ったキャラクターになったのです。

【底なしの地獄を味わうラストシーン】

前半は失踪した妻を追うニックという男の視点と第三者の視点で描かれていますが、後半、エイミーの視点にスイッチすると、事件の景色がガラリと変わっていく。この事件、むけばむくほど、ニックとエイミーという夫婦のいびつな感情のもつれが浮かび上がって来るのです。

ひとつの真相をねじって、ひっくりかえして、犯人自らズタズタにして、ものすごいエンディングに持っていく『ゴーン・ガール』。特にラストは凄い! 思わず「底なしの地獄!」と思いましたからね。ぜひ皆さんも『ゴーン・ガール』を見てゾゾっとしてください。

執筆=斎藤香(c)Pouch
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『ゴーン・ガール』
2014年12月12日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ、キャリー・クーンほか
(C)2014 Twentieth Century Fox