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先日、香港に行くことになりまして。記者の香港のイメージといえばウォン・カーウェイ監督の映画『恋する惑星』。この映画では重慶大厦(チョンキンマンション)という場所は、ドラックディーリングの現場として描かれています。

この重慶大厦(チョンキンマンション)、安宿がたくさんあることで世界的にも有名。でも評判が全くよろしくない。

「そんなところに泊まるくらいなら周りにいっぱいホテルはあるよ」「バックパッカー上級者以外は泊まるな」と皆さん激辛。

加えて「入口付近の両替商は激しくレートが悪いぼったくりだから注意せよ!」という噂も。こんなに酷評されるなんてどんな悪がはびこるおぞましいところなのかと思って潜入してきましたよ。

◼︎潜入開始は夜の9時

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「香港の暗黒世界の象徴であった九龍城砦が取り壊されたあと、その混沌を引き受けた」というのが、記者が入手した重慶大厦(チョンキンマンション)の説明。「暗黒部に夜踏み込むなんて怖すぎる! 遅くとも夕方に行きましょ」と思っていたのですが、段取りが悪すぎて到着したのはすでに夜9時。

思いの外現代風かつ明るい外観に拍子抜けするも、「どうしよう……、『何グラムほしい? 上物入ってるよ』とか言われちゃったら……」と中を想像してガクブル。5分くらい尻込みしていたのですが、「いや、ここで恐怖心に負けたら記者魂が廃る。せめて為替レートの噂だけは確認してこなければ」と意を決して突入。

◼︎入り口をくぐると、そこは異世界だった

なかに入ると、突き刺さってくる目、目、目。視線が突き刺さってくるよ。そしてなぜか香港なのにインド人っぽい風貌の人がいっぱい。ほどんどインド人っぽい人。ちと怖い。
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ビビりながらも両替商のレートを確認すると、チョンキンマンションの入口にある両替商は1円が0.0609香港ドル。でも、10メートルくらいなかに入ったところでは1円が0.0654香港ドル! ウワサ通り、ほんの数歩くらいでけっこうレートが違います。1万円分両替したら700円分くらい変わってきちゃう。700円だと香港ではミシュラン星付きレストランでご飯が食べられるから、内部に潜入して両替するのがオススメ!

◼︎「ここはインド人街」と気付くと怖くない! カレーがうまそう!

ドラッグの売人に声をかけられるかと思っておどおどとしていましたが、両替商を見て回るうちにハタと気付いたことが。ドラッグ、売ってないみたい。上物のJの字もありゃしない。
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そして気づいた! チョンキンマンションは、ここが香港だから怖く感じるのであって、「ここはインド人街」と思うと怖くない! 当たり前のような顔をして歩き回っていたら、あんまり客引きも声をかけてこなくなりました。あはは。恐るるにたらん。そう思うと、急に目に飛び込んでくるのがおいしそうなインド料理店。チョンキンマンションは、カレーがおいしいと有名なんですって。
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◼︎若いにーちゃんについていき、不気味な階段を連れて行かれてビビる

調子に乗ってきたので同行者と「やっぱり激安ホテルのなかも見に行ってみよう」と相談。そんなタイミングで若いインド系っぽいにーちゃんが「ホテルの部屋あるよ。ふたりで250香港ドル!」と話しかけてきたっ! 

飛んで火に入る夏の虫とは彼のこと。「えー、250香港ドルって、チョンキンマンションで一番安い値段? 部屋、きれいなの?」と返すと、「じゃあ200香港ドルでいいよ! 部屋、見るだけでもいいから来てよ」ですって。一瞬で値下がり。「見るだけでもいいのね!」と聞き返し、同行者と顔を見合わせてニヤリと笑う記者。
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彼に連れられて閉まりかけたB棟のエレベーターに飛び乗り、14階へ。ゴトゴトと音を立てるエレベーターに、「あーこれ火事になったら大変そうだな」とチラッと思いつつ降りると、なぜかものすごく古びた、ホコリまみれの汚く暗い階段に向かう彼。これはもしやヤバイ場所に連れて行かれるのでは? そのまま大変な事件に巻き込まれるのでは? やっぱりチョンキンマンションって怖い場所なのではっ!?
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◼︎1泊2人3000円なのに、意外にきれいな室内にびっくり!

心臓をドキドキさせながら階段を降りて連れて行かれたところは……13階のめちゃ明るく掃除されたホテル! 階段が汚かったからか、ホテルがむちゃきれいに見えたよ! ホテルのにーちゃん、なんて策士! そう思ったのですが、単に13階にエレベーターが止まらなかっただけでした。
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同行者と記者をカップルだと思ったにーちゃんにダブルベッドの部屋とツインの部屋を見せてもらいましたが、窓はないもののちゃんと掃除されてシートも洗いたての様子。これでふたりで200香港ドル(約3,000円)ならけっこういいんじゃないでしょうかー。
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◼騙した記者の方がよっぽどワルだった

見るだけ見せてもらったあと、「ごめん、実はホテルはもう別のところに予約してて……ちょっとチョンキンマンションのなかを見たかっただけなんだ」と伝えてみると、みるみるしょんぼりしてしまったインド系にーちゃん…… ごめん、悪の巣窟とかいって君らを悪者扱いしてたけど、記者の方がよっぽどワルかった…… 重ねて謝ると「OK、OK」と気弱に笑って1階に連れ戻してくれました。
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◼︎結論:チョンキンマンションは、香港内の別の国と思って楽しむといいかも!

なんだかあんまり危ない気がしなかったチョンキンマンション。香港に行ったのではなく、インドなどに行ったと思えばお得感があるかも。また、ここも宿泊先の候補に入れると「LCCを使って、激安ミシュランで食べる、爆安香港旅行」とか「3泊激安宿、1泊超高級ホテルの甘辛旅行4日間」など楽しみ方が増えそうです。チョンキンマンションのロケーションはかなり良いですし!

とはいえ油断は禁物です。にこやかに偽ロレックスを売りつけられそうになるなど、イリーガルな香りがするシーンもありましたので、あくまでも自己の責任でどうぞ。記者は行ってみてよかったです。ごめんね、にーちゃん。

撮影、執筆=山川ほたる (c) Pouch

▼買ったら税関でとがめられるタイプの商品……かも?▼

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▼ちゃんと掃除されているようでした▼

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