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Pouchでも何度か書いているのですが、私(記者)は三重県出身です。もう東京に住んで20年近くになりますが、それでもときどき、「ああ、あれは三重県特有の文化なのだな」と気づかされることがあります。

そのひとつが牛肉のこと。先日、Pouchのめる編集長とお話していて「お正月にすき焼きって食べますよね」と当たり前のごとく言ったところ、「えっ」と驚いた様子。……いやいや、こっちが「えっ」てなりましたよ! お正月にはすき焼きでしょう。何かのお祝いにはすき焼きでしょう。ハレの日の料理といえばすき焼きでしょう。……違うんですか?

というわけで、今回は三重県民特有のすき焼き文化についてご紹介したいと思います。

【三重といったら松阪牛】

三重県といっても広いので一概にはできませんが、津市や松阪市周辺(中南勢エリア)の人たちにとって牛肉は非常に身近な食べ物。振り返ってみると、私の実家の食卓に並ぶお肉は豚肉や鶏肉よりも牛肉がいちばん多かった。東京出身の夫や友人らに聞いても「食卓には豚肉がメジャーかなあ」という答え。これはやはり、三重県には「松阪牛(まつさかうし)」なるブランド牛がいるからに違いありません。しかし、牛肉といってもランクはピンキリ。普段は高価な松阪牛なんて三重県民だって口にできません。「おかあさーん、今日の肉って松阪牛? え、違うん? しけってんなー(ショボイなーの意)」なんて言いながら、スーパーのお手頃価格な牛肉を使った野菜炒めなどをモシャモシャと食べているのが私の日常でした。

【朝日屋っていう肉屋さんがあってだな】

しかし、普段は高価な松阪牛を見てるだけの三重県民も、年に一度ハメを外しちゃう日があります。それが年末! 三重県民には各家庭ごとにひいきにしている肉屋があったりしますが、なかでも有名なのが津市にある「朝日屋」という松阪肉専門店。年末に牛肉を買い求める人々でお店に長蛇の列ができるのは、もはやこのあたりの冬の風物詩であります。

【なぜ並ぶのか? そこに肉があるからだ!】

それにしても、なぜ年末の寒い中、ここまで人が並ぶのか? それは朝日屋では毎年、12月20日ごろから大晦日の正午までの期間、「松阪肉牛共進会」で落札された松阪牛を通常価格で販売する「名牛まつり」をやっているんです。松阪肉牛共進会というのは、毎年11月に行われている松阪牛の女王を決めるコンテスト。そこで競り落とされたいい肉がいつもと同じ値段となれば……そりゃあ並んででも買いたくなる! それからもうひとつの理由が、お正月にすき焼きをするため! 大晦日に肉を買い込み、正月三が日、親戚たちが集まったときにすき焼きをして食べるというのは三重県民にとって非常によくある光景です。

【ステーキ、焼肉もいいけれど……】

牛肉は誰にとってもごちそう。けれど、三重県民の牛肉にかける情熱はちょっと他県民よりもスゴイことがわかってもらえたでしょうか? そして、ステーキや焼肉もけっして「なくはない」のですが、なぜかやっぱり「すき焼き」なんですよね。ちなみに、私はこの年末も実家に帰省する予定なんですが、早々に父から「何日に来るのか。肉の注文の締切りがあるから早めに教えてくれ」とのメールがありました……父のやる気すげー。

ここまで読んで「三重県民じゃないけど、すき焼き食べたくなってきたじゃないかー!」という方。松阪市には「和田金」「牛銀」といった名店から気軽に立ち寄れるホルモン屋さんなどまで松阪牛のお店がいろいろ。ぜひ三重県まで足を運んで本場の味を堪能してみてくださいね! 伊勢神宮で初詣、松阪で牛肉……このうえなく幸先いい一年をスタートできそうじゃないですか?

画像=からあげ課長。@karaagelove
執筆=鷺ノ宮やよい