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日本は年間行事がとても多彩な国ですよね。季節の移り変わりごとにいろんな行事が待っていて、一年中楽しめちゃうのがニッポンの良いところ! 

そんな数々の季節の行事を、今回は「大奥」という視点からご紹介してみようと思います。大奥とは、江戸幕府の本拠・江戸城において、将軍の御台所(正室=本妻のこと)や側室・女中など1000人以上が生活していた場所。立ち入るには厳格な制限があり、また中の様子を他言することは厳禁であったため、秘密のヴェールに包まれた存在でした。

その中で生きる女性たちは、果たしてどのような生活をし、どのように季節の行事を楽しんでいたでしょうか。今回、江戸時代の浮世絵師・楊洲周延が大奥の四季折々を豪華な衣装・調度品とともに美しく描いた浮世絵集「千代田乃大奥」とともに、大奥ならではのユニークな行事の数々をご紹介いたします。

【遊び? いえ、教養です! 大奥かるた】

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お正月の風物詩として馴染みのある「かるた」。錦絵では、眼鏡をかけた老女が札を読み上げ、若い女性たちがプレイしている様子が描かれています。大奥の女性たちにとってかるたは「遊び」というよりも、教養を身につけるための大切なイベント。古典の和歌を覚えるだけでなく、教養・たしなみ・しつけにもつながったため、非常に教訓性の強いものだったそうです。

【男たちよ、盛り上げてちょうだい! 鏡餅曳(かがみもちひき)】

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男子禁制の大奥ですが、正月七日だけは別。数十人の男衆が大奥内に入り、諸大名から献上された超巨大鏡餅を舟そりに乗せ、祭り神輿のごとく曳き歩く行事があったのです。男衆たちは頭に天狗のお面や伊勢エビまで乗せちゃって、見に来ている女性たちを盛り上げようと必死な様子も伺えます。

【「鬼は……女たちの方だッ!」逆セクハラ地獄! 節分】

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当時の節分も今と似たように、豆を投げていたといいます。絵にも描かれている通り、上品にお豆をぱらり、ぱらり……で終わらないのが当時の豆まき。なんとこの後「胴上げ」をするのです! 女性たちに胴上げされるのは、豆まき行事の為に大奥に入ってきた老中や御留守居役の男性方。選ばれた男性は身動きがとれないように布団でグルグル巻きにされ、胴上げ開始と同時に大奥女性たちにモミモミと身体中触られまくったそうです。逃げ場のないモミモミ地獄に、男性たちは誰も大奥に行きたがらなかったとか。

【田舎のおっかさんも呼べちゃう! 雛拝見(ひなはいけん)】

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今で言う雛祭り。「秘密の花園」のイベントとはいえ、この時ばかりは大奥の親類縁者の参加がOKなのです! 参加した小さな女の子もきらびやかな大奥女性たちをみて憧れちゃうこと間違いなし。でも、女の世界ほど恐ろしい場所はないのよ、と教えてあげたくなります。

【はしゃぎすぎて転んでるよ! 御花見(おはなみ)】

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満開の桜の下で桜を愛でている大奥の女性たち。徳川の家紋が描かれた和傘の下にいるのは、御台所。艶やかな着物を身につけ、満開になった桜を優雅に見ている様子がわかります。が、奥には目隠しした女性と、走って転んでいる女性も。普段は大奥に閉じ込められている分、はじけちゃったのでしょうか。

【マジなお願いは書きにくい…! 七夕】

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大奥でも、七夕には短冊に和歌や願い事を書き、笹に下げていたそうです。しかし、ここは大奥。自分の欲望を赤裸々に書いた短冊を他の人に見られちゃったりしたら……! 女の世界ですから、うわさ話がすぐに流れちゃうわけで。下手をすると身の危険にさらさることもありえる環境、恐ろしいですよね。なお、スイカやお菓子などのお供え物もしていたそうです。

以上6つご紹介いたしました。ほかにもたくさんの絵が「国立国会図書館デジタルコレクション」で閲覧できるので、興味のある方は下のリンクからのぞいてみてください。

いつもの行事に刺激がほしくなったなら、今年の節分は「大奥風」でやってみるのもいいかもね★

画像所蔵:国立国会図書館「千代田乃大奥」
執筆=百村モモ (c) Pouch