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~前回までのあらすじ~
『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』の作者・清野とおるさんと赤羽の新しいお店に潜入してみるという企画。しかし、どうにも愛想がなく目に光もなく淡々としたテンションの清野氏にうまく入り込めない記者(私)。幸福地蔵では写真がボケて撮れなくなるという失態を犯し、清野さんに話しかけたら墓穴を掘る……。最悪な雰囲気のまま、赤羽めぐりが続く。

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普段、霊感ゼロ、心霊現象などにも一切遭遇しない私が「幸福地蔵」で体験した怪奇現象。衝撃を受けつつも、またまた清野さんのあとをついていく。

ヨシコおばあちゃん(仮名・80歳)、登場!

赤羽駅東口を高架下沿いに少し進んだ裏路地にて、「ここに入ってみませんか?」と清野さん。そこには言われないと素通りしてしまいそうなこぢんまりとしたお店が一軒。
akabane23【清野さんより】

清野さんの赤羽レーダーが何かを感じ取ったのでしょうか。外からは中がまったく見えないため、一見さんならちょっと躊躇(ちゅうちょ)してしまうようなお店にも思えますが……さすが清野さん、何の迷いもなく入っていった

お店の中はオーソドックスな小料理屋というかんじ。気さくそうな初老のママがニコニコと迎え入れてくれました。そして先客はふたり。カウンターのいちばん入口側におじいさんがひとり、そしてカウンターの中ほどにおばあちゃんがひとり。おばあちゃんは私たちが入った瞬間、待ち構えていたかのように「まあまあいらっしゃい! どうぞどうぞー」と大声で話しかけてきます。

(ひぇっ、客なのにママよりも仕切ってる……!)

あまりの勢いのよさに、ひそかに慄然(りつぜん)とする私と清野さん。少し気圧され気味でカウンターのいちばん奥の席に座ったのですが、それから私たちがコートを脱いだり、メニューを渡されたり、注文したりする間、怒とうの勢いで畳みかけてくるおばあちゃん。こちらに少しののスキも与えないこと山の如しです。

しかし相手はこれまで百戦錬磨、数々のぶっとんだ方々を相手にしてきた清野さん。おばあちゃんへの受け答えも手慣れたものです。

「お名前、ヨシコさんっていうんですね」
「えー、80なんですか? とてもその歳には見えないですよ!」
「いやいや、おばあちゃんだってじゅうぶんおキレイじゃないですか」
「◯◯1丁目に住んでるんですか? 僕、2丁目ですよ!」

などなど、あいかわらずの独特なテンションで巧みにおばあちゃんの心をつかむ返しを繰り出していきます。

【ヨシコさんの身の上話を聞く】

ヨシコさんというおばあちゃん、自分の話に聴き入ってくれる清野さんがよほど好青年に映ったようで、「まあお兄ちゃん、うれしいわぁ♡」とますますヒートアップしてしゃべり続けます。

~ヨシコさんの回想録~
・生まれは東北の方。戦後のドサクサにまぎれて父が知人から赤羽に100坪の土地を譲ってもらったもんで、そこからずっと赤羽暮らしなのヨ
・アタイは小さいころからおませでサ、学生のころ体育教師を好きになったのが初恋サ
・若い頃は百貨店に勤めていてねぇ、上司に食事に誘われたりしたけど、あの上司は好かなかったねぇ。嫌な思いをしたものサ
・この店は常連でねぇ。開店と同時にタクシーで来てはお酒を飲むの。このママが、んまぁーーーーーー、いい人でサ、なんっでも話を聞いてくれんのヨ

などなど、これをローテーションして何度も何度も聞かせてくれるのです。最初は「へええー」と聴いていたものの、さすがに7巡目ぐらいになるといささかツライ……。しかも、途中にカラオケで五木ひろしの「おしどり」熱唱タイムもありました。

【記者の私、取材交渉したら清野さんからダメ出しされる】

それにしても、料理や店内風景を撮らなければ、記事に掲載する写真がなくなってしまう! ヨシコさんが清野さんに話しかけているスキをついて、私はお店のママに取材撮影の許可をお願いすることに。すると

清野:「今、ママと何話してたんですか」
私:「えーと、料理や店内の画像を撮影して記事で紹介させていただけないか先に承諾をいただこうかと……」

ここで清野さんからいきなりダメ出しが!

清野:「なにフザけたことしてるんですか。そういうの先にやっちゃうと、場の空気が堅苦しくなるじゃないですか。もしうまくいったとしても取材という事で構えられて自然体じゃなくなっちゃうし。許可を得るのは最後の最後にしてくれないと困るんですよ」
私:「わ、わかりました!(こ、こわいよー……!!)」

何度も言いますが、清野さんは目に光をたたえていないのです。心臓止まりそうなほどビビりました。少しでいいんで目をキラキラさせることってできないでしょうか……?

そんなわけでお店の名前も写真も掲載できないという、さすがノープランなだけあるこの取材。次回はヨシコさんのさらなる身の上話が! なんと詐欺に遭って1000万円ダマし取られたそうで……続きは連載第3回で!

参照元:清野のブログ『山田孝之の東京都北区赤羽』
取材・撮影・執筆=鷺ノ宮やよい (c) Pouch