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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、先に行われた第87回アカデミー賞で、堂々主演男優賞を受賞したエディ・レッドメイン主演の『博士と彼女のセオリー』です。スティーヴン・ホーキング博士の半生をつづった映画と聞いて、女子の皆さんは「天才物理学者の話か~」とちょっと腰が引けたかもしれません。

が、ちょっと待ってください! この映画はホーキング博士の半生を描きつつも、彼と妻の夫婦愛の物語でもあるのです。正統派のラブストーリーといっても過言ではありません。またホーキング博士を演じてアカデミー主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインのメガネ美男子ぶりにも注目です!

【物語】

1963年、ケンブリッジ大学大学院生だったスティーヴン(エディ・レッドメイン)は同じ大学に通うジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会います。宇宙論に夢中のスティーヴンと才媛のジェーンは愛し合うようになるけれど、ある日、スティーヴンの体に変化が表われます。医師の診断の結果、脳からの命令が体に伝わらなくなり体の筋肉が衰える難病ALS(筋委縮性側索硬化症)で、余命2年と宣告されます。ショックを受けた彼は引きこもってしまいますが、そんなスティーヴンを支えたいというジェーンの決心は堅く、二人は結婚。子供にも恵まれます。しかし、スティーヴンの病の進行は止まることはなく……。

【知られざる天才物理学者の私生活】

スティーヴン・ホーキングが有名になったとき、彼はすでに病に侵されていました。難病を抱えながらも彼が素晴らしい業績を残すことができた理由は、元妻ジェーンの支えがあったからです。この映画はジェーン・ホーキングの回顧録が元になっています。プロデューサーのひとりリサ・ブルースはこう語っています。

「ホーキング博士の私生活を知らない人は多いわ。彼はかつて話したり、歩いたり、父親業をしていたことを知らないでしょう。彼の生活を深く見つめていると天才物理学者以外の一面が見えて来るの。父親、夫、そして永遠の楽観主義者の姿……。21歳のときに爆弾を落とされたように余命を告げられたけど、二人はそれに立ち向かうの。これは現代人に勇気を与えてくれるラブストーリーなのよ」

【永遠の愛は三角関係で崩れる?】

正直、ホーキング博士の宇宙に関する著作を読んでも、記者などは理解できないでしょう。けれど、この映画で描かれるホーキング博士とジェーンの恋はとてもわかりやすい恋です。大学生にありがちの可愛い恋ですからね。でもそんな恋する二人の間に難病が立ちふさがるのです。が、その大きな障害をジェーンは思い切りはねのけてしまう! それも悩み抜いて支える決心をするのではなく、即決しているような。それ以降、記者は「ジェーンすごすぎ!」と驚きっぱなしです。
子供3人育てながら、難病と闘う夫の介護もしているんですよ。彼の体はどんどん動かなくなり、普通に食事もとれなくなり、それでもジェーンは諦めない。物理学者としてのスティーヴン・ホーキングでいられるように誠心誠意支えたのです。そんな二人の間に、なんと三角関係という障害が訪れます。この関係もまた丁寧に描かれているので、胸が痛くなるのですよ、切ないなあ……と。

【人生における希望】

アカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインの演技の素晴らしさは難病に侵されて徐々に体の自由が利かなくなっていく、その“徐々に”の部分を丁寧に演じたことでしょう。この手の芝居はオーバーアクトになりがちですが、そこを抑制していたのが良かった。妻を演じたフェリシティ・ジョーンズも知的で情熱的で献身的なジェーンを好演。おそらくこの二人はこれから多くの映画で活躍していく演技派ですから、覚えておいて損はないですよ。
余命2年と言われたホーキング博士は今も元気です。この映画の撮影も見学に訪れたほど。そのホーキング博士はこんな言葉を語っています。
「どんな困難な人生でも、命ある限り、希望はある」
ホーキング博士が語ると説得力あります。夫婦愛の強さに胸をつかまれ、そして困難に立ち向かう勇気をくれる映画。それが『博士と彼女のセオリー』なのです。

執筆=斎藤 香(c)Pouch
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『博士と彼女のセオリー』
2015年3月13日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

監督:ジェームズ・マーシュ
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、デヴィッド・シューリスほか
(C)UNIVERSAL PICTURES