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ここ数年でますます知名度がアップした「ヴィーガン」。いわゆる、動物性の食物をとらない菜食主義者のこと。ハリウッドセレブのアン・ハサウェイやアリアナ・グランデもヴィーガンと聞くと、「美意識高い女子ならヴィーガン」的オシャレ感すら感じられるほど。

うーん、健康への意識が超絶ゆるふわ系な私もやってみるべきかしら、ヴィーガン……。

と思っていたところ、先日TwitterやFacebookを激震させたのが、ある完全菜食主義者の男性が記した「僕が菜食をやめた理由」という体験記。約9年間ヴィーガン生活を実践したうえでの「菜食は完全に間違いだった」という告白なだけに、その反響はすさまじいものが。

連載第1回めはすでにTwitterのリツイートが1万件近く、Facbookの「いいね!」は約1万5000件におよび、あのホリエモンや高須クリニックの高須克弥先生までがリツイートし言及しています。

そこで今回はこの体験記を記したブログ「しあわせごはんとおやつ」の著者・neemさんにインタビューさせていただくことに。

肉食派と菜食はが仲良く暮らすには? 今は毎日、具体的にどんなものを食べてるの? なぜマクロビを宗教っぽく感じてしまうのか? などうかがってみました。

【9年間のマクロビ実践】

まずはneemさんのブログでの連載「僕が菜食をやめた理由」の要約を。3.11直前に沖縄に移住しマクロビのお弁当屋さんを営んでいたneemさん。自身も22歳から31歳になるまでの9年間、ほぼヴィーガン(完全菜食主義者)として暮らしていたそう。

しかし、マクロビの「心と体はどんどん元気になって、自分の生きたい人生を生きられる様になる」という教えに反し、菜食5年めあたりからneemさんの心身に異変が。汗を大量にかくと腕や背中に発疹が出る、汗が臭う、虫歯がひどくなる、気力・体力の低下……などさまざまな症状が現れ始めます。

【健康的なヴィーガンは皆無】

こうした結果、マクロビをやめることにしたneemさん。糖質を少なくし、タンパク質と脂質を豊富に含む肉や魚、卵、チーズ、ナッツを中心に食べ始めたところ、neemさんの体調は劇的に好転。マクロビを行っていた期間は糖質の過剰摂取で栄養失調状態だったこと、そして動物を食べることでしか満たせない栄養素が存在することを身を持って体感。「完全菜食で健康に生きるのはほとんどの人にとって難しい」と悟ったそう。

マクロビ実践者だったneemさん自身が、「これまで健康的なヴィーガンに出会ったことがない」と告白したり「マクロビは宗教的」と言及するあたりは読んでいてもかなり衝撃的! ブログでは12回に分けて詳しく書かれており、今後も引き続き健康情報などを発信していくそうですので、興味を持った方はぜひ一読を。

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【なぜマクロビは宗教っぽいのか?】

さて、ここからがneemさんへのインタビュー。
記者(私):neemさんと同じように、ネットでも「マクロビは宗教と同じ」との声は多いですね。マクロビの陰陽論は根拠がないものであるのに、なぜ頑なに信じて実践する人が多いのでしょう?
neemさん(以下、neem):マクロビは根拠のない情報を盲目的に信じ込ませる手段が最初から取られています。世界の環境問題や食糧問題まで考えればよい食事法とも思えるので、悪いはずがないと信じ込んでしまうのかもしれませんね。

記者(私):宗教イコール悪いもの、ではないのでしょうけど……。
neem:はい、自分は宗教自体を悪だと思っているわけではなく、盲目的に信じ込み、そのまま周囲に伝えてしまう「宗教的な菜食の現状」に問題提起しています。

【みんなで平和に暮らすには……】

記者:neemさんは「肉食でも菜食中心主義でも、みんなが健康に、平和に暮らせるヴィジョンを共有できないのか」と書いています。そんな世界になればベストですよね。どうすればよいか、ご自身のヴィジョンはありますか?
neem:結局の所、動物性を一切食べないで健康に生きるのは、ほとんどの人にとって難しい。であれば、肉を食べる・食べないで言い争うよりも、どうしたら皆が良好に栄養を摂取していけるのか、心無い命の生産方法を止められるのかを話し合うべきではないでしょうか?

記者:心ない命の生産方法を止める……具体的にはどのような方法が?
neem:遺伝子組み換え穀物、ホルモン剤(※外国産畜肉)や抗生物質を使わない。ケージ飼いでなく平飼いの畜産を応援する。この辺りがまず出来る現実的な手段かと。狭い檻の中でストレスだらけの家畜生産をするよりもずっと良いと思ってます。また食糧問題を考えるのであれば、人にとって有益な農産物、不必要な農産物を再考するのも必要ですね。
※現在、日本国内ではホルモン剤の使用は禁止されています。

【現在の食生活「減糖肉食」について】

記者:現在は断糖ではなく「減糖肉食」にしているのですよね? ネットでは「マクロビから断糖肉食というのもまた極端で盲目的だ」という声も多いですが……?
neem:まず断糖肉食という言葉を「効率よく栄養を吸収するために、糖質を控え、動物性をしっかり含む食事をする」という意味で使ったのが、言葉通りに受け取られてしまい誤解を生んでしまったようです。そのあと、ナッツや野菜(糖質をいくらか含んでいる)なども食べていると書きました。糖質をゼロにする事は不可能で、する必要もありません。盲目的に見えるかもしれませんが、栄養学や糖の代謝とホルモン分泌の仕組みなどをきちんと調べています。体調が好転した体験談のひとつとして受け取っていただきたいです。伝えたかったのは、「イメージとは真逆のところに答えが存在する可能性もある」ということです。

記者:では、糖質もそこまで厳しく制限されているわけではない?
neem:「何があっても絶対に糖質を摂らない!」という考えはありません。現在は静岡県にて建築のワークショップを受けており、お昼は支給される市販のお弁当とスタッフが作ってくれるお味噌汁。夜だけ共用キッチンを借りて自炊をして、肉か魚、もしくは卵料理を一品と、生野菜のサラダを食べることが多いです。ご飯などの炭水化物は食べませんが、お腹いっぱいになる量を食べますね。お菓子も食べないけれど果物なら少しだけいただいたり。無理に「制限する」という感覚はなく、糖質を控えたほうが体が快適なので進んで食べたい気が起こらない、という感じです。

【バランスがよいってどういうこと?】

neemさんの食生活に対し、ネットを見ていると「マクロビ、糖質制限などにこだわらず、いろいろな栄養素をバランスよくとるという考えが大事」との声は多い。しかしこれについてもneemさんは「バランスをとるべきと主張する人は、大半が何をもってバランスが良いと自分が思っているのか理解していない」と答えます。「バランスが大事となんとなく思う人は日本で半数以上を占めると思いますが、これだけガン、心疾患、高血圧、肥満、糖尿病などが増えているの現実をどう説明できるでしょうか?」。

たしかに「バランスのよい食生活」と言われても、いったい何をどれだけ食べるのが適正なのか、そしてバランスのよい食生活をすれば必ずしも健康的でいられるのか……もうこうなってくると禅問答のよう。お肉大好き、お菓子大好き、ふだんから何も考えず好き勝手食べてる自分からすると、そこを突かれると頭がイタい……。

・行き過ぎないために…
ただ、そのバランスは厳しさを求めれば求めるほど、逆に窮屈になっていくようにも感じます。行き過ぎると、育ち盛りの子どもに菜食を強いる、肉やお菓子が好きな子どもにそれらを禁止する、栄養が必要な妊娠中に食事制限をする、健康を害してまでマクロビを続けるといったことも。食事について、思想について、自分自身に対して、他人に対して、多様性やあいまいさをどれだけ寛容に受け入れられるか。これもバランスを考えるうえで大事なことなのかも。

【 食について考え直す機会 】

とにもかくにもここまで反響があるというのは、現代人の健康意識へのあらわれ。「You are what you eat.(私たちは食べるものでできている)」という言葉があるように、何を選んで何を食べるかは私たち次第。これを機に、自身の食のあり方について考えてみては? そして、マクロビやヴィーガンに関して個々意見はあるかとは思いますが、9年間の敬虔な信仰を捨て、私たちに食について考えなおす機会を与えてくれたneemさんの告白の勇気には拍手を贈りたいと思います。

参照元:しあわせごはんとおやつneem
取材・執筆=Pouch編集部 (c) Pouch