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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは同名漫画の映画化『バクマン。』(2015年10月3日公開)です。週刊少年ジャンプで連載されていた人気漫画の実写映画化を手掛けるのは『モテキ』の大根仁監督。これが実に面白くて心にズシンと響く映画だったのです。

漫画家の仕事、漫画家同士のライバル関係と友情、漫画編集部の裏側を丁寧に描きつつ、エンターテインメント映画として観客を楽しませることに徹した『バクマン。』。原作漫画を読んだことのない人もまったく問題ナシ! 誰でも楽しめる男子100%の青春映画です。

【物語】

高校生の真城最高こと、サイコー(佐藤健)の絵の才能に気付いた、同じクラスの高木秋人こと、シュージン(神木隆之介)。彼は「二人で漫画を描こう」と誘います。

サイコーは作画担当、シュージンが物語担当で、二人は週刊少年ジャンプ連載を目指すことに。
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出来上がった作品を週刊少年ジャンプ編集部に持ち込んだ二人は、編集者の服部(山田孝之)から数々のアドバイスをもらい、メキメキと漫画の腕をあげていきます。

しかし彼らには、若干17歳で手塚賞を受賞し、ジャンプに連載を持つ天才高校生漫画家・新妻エイジ(染谷将太)という壁があったのです……。

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【サイコーとシュージンと共に歩む】

ワクワクしながら連載漫画を読む……ということ、誰でも経験あると思います。好きな漫画ほどアッと言う間に読み終えてしまったりして……。そんな至福の時間を作りだしてくれる漫画家の先生たちの世界を描いているのが『バクマン。』です。

漫画家を目指して、出版社に持ち込みをする……というのは、デビューのきっかけとしてよく聞くけれど、実際にどうやって持ち込んで、どう進めていくのか? そんなプロセスも、この映画では見せてくれます。

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そんな漫画好きの素人から、プロの漫画家が誕生、漫画の連載が決定するまでのプロセスの中で、サイコーとシュージンは成長していくのです。

好きなことに夢中になり、もっともっとうまくなりたい、もっと描きたいという溢れんばかりの情熱が描かれる前半は、漫画業界の現場を垣間見られる楽しさとともに、サイコーとシュージンの「ジャンプで連載取るぞ」というノリノリのやる気を観客も共に実感できるのがいいのですよ。 

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【プロジェクションマッピングで描く作画シーンがスゴイ!】

サイコーとシュージンや、同じ漫画家仲間たちがどんなに魅力的でも、漫画を描くという作業は、やはり絵的には地味です。じっと机に向かっているだけですから。

しかしこの映画では、その地味な作業をヴィジュアルの工夫とアクションを加えて描いたのです。

例えば、新妻エイジという強敵との “読者アンケート1位” を争うバトルは、ペンを剣として使ったアクションで。また作画が次々と出来上がっていく様子は、漫画の書き手と紙の上の漫画のコマをリンクさせる「プロジェクションマッピング」を使うなど、様々な手法を使って見せていきます。

これによって、漫画を描く作業が立体的に浮かび上がり、躍動するようなダイナミックな映像に! 

大根監督はこのシーンについてこう語っています。

「原作の小畑健先生や他の漫画家さんたちに話を聞くと、紙にペンで描くという地味な作業と裏腹に、執筆中の頭の中はすごいことになっていると言うんです。じゃあ、真っ白な紙の上で剣を振り回すように漫画を描くイメージかなと。アクションコーディネーターの方に画コンテを作ってもらい、大きなペンを剣に見立てて闘う、あのシーンが出来上がりました」

【ジャンプのキーワードを貫く物語】

週刊少年ジャンプのキーワードである、“友情・努力・勝利” を、本作もそのまま受け継いでいます。ジャンプの連載の映画化だから当然なのですが、このベタな3つのキーワードがジワジワと響いてくるんですよ。

サイコーとエイジが漫画をめぐって対峙する後半、友とともに努力を積み重ねて、どんなにしんどくても勝利を目指すサイコーを見ているうちに胸がジンジン熱くなるという……。実に男子的な世界、男の子のアツい青春がギュっとつまっています!

『バクマン。』制作発表当初、「佐藤健と神木隆之介のキャスティングが逆ではないか」と原作ファンの声があがっていたけれど、大根監督はそう言われるのが不思議だったそうです。

「いまだに不思議です。なぜみんな逆だと騒いだんだろうと。あの二人のうち、どちらが絵を描きそうか、どちらが物語を作りそうか、と考えたら、最初からサイコーは佐藤くん、シュージンは神木くんでした」

映画を見れば、大根監督のキャスティングの勘はドンピシャだということがわかります。男子二人が何かに情熱を傾ける姿がどんなにかっこよく、すがすがしいかがよくわかる映画『バクマン。』。 極上の青春映画ですよ。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

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『バクマン。』
2015年10月3日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
監督&脚本:大根仁 出演:佐藤健、神木隆之介、染谷将太、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキーほか
(C)2015映画「バクマン。」製作委員会

▼「「バクマン。」予告編