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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは第88回アカデミー賞作品賞候補にもなっているリドリー・スコット監督作『オデッセイ』(2016年2月5日公開)です。

宇宙飛行士が火星に取り残されてしまうという絶望的な状況から、生き延びるという凄い話。どんなに重苦しいSFかと思ったら、主人公は知恵と勇気とユーモアで乗り越えていくんですよ。

【物語】

有人火星探査ミッションの任務についたマーク・ワトニー(マット・デイモン)は、火星に吹き荒れた嵐に飛ばされて行方不明に。仲間が必死に捜索したけれど発見されず、探査機は地球へ戻ります。

ところが彼は生きていた! 火星に取り残されたマークに残されたのは人工移住施設とわずかな食糧のみ。通信する術もなく、かりに通信できても、仲間が火星に助けに来られるのは4年後。それでも彼は諦めなかった。植物学者としての知恵を活かして、酸素と水を作りだすことから始めるのです……。
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【火星にぼっちでも負けない強さ!】

宇宙に取り残されてしまう宇宙飛行士の物語といえば『ゼロ・グラビティ』を思い出しますが、こちらは火星にぼっちです。普通ならあまりのショックで動けなくなりそうですが、さすが宇宙飛行士。火星には何があり、酸素や水を作りだすにはどうしたらいいのかということが、学者であるマークにはわかっているのですね。

彼が次々に行動に移す様を見るのは、ワクワクします。どうするのだろう、何が起こるのだろうと、先生の実験を見つめる子供みたいな気持ちに。

しかし、宇宙はしぶとく無情なので、コトは簡単に進みません。そして頭をよぎるのは通信手段がないこと。迎えに来てもらっても4年後という事実が、ときおり観客の頭をよぎります。どうやって4年間も、火星で生き延びられるのって……。
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【新人作家のオンライン小説が大作映画に!】

原作はアンディ・ウィアー著「火星の人」で、コンピューター・プログラマーから小説家に転身したウィアー氏が、自身のブログでコツコツと書いていた連載小説。

この小説に連載中から目を付けていたのが、この映画のプロデューサーのアディッティア・スード。もうひとりのプロデューサーのサイモン・キンバーグに薦めて、彼も夢中になり、映画化権を取得しました。そして、脚色化したものを読んだマット・デイモンが興味を示したことで、本格的にスタートしたそうです。

巨匠リドリー・スコットが演出を担当したのは、手掛けていた作品が延期になり、手が空いたところに「スコット監督がいまフリーらしい」という情報を聞きつけた製作陣が打診。監督も物語を気に入り、リドリー・スコット監督の新作映画として作られることになったのです。

これ原作者にとっては、まさにアメリカンドリーム!

「僕はノーザン・カルフォルニアに住んでいて、ニューヨークの僕のエージェントに会ったことがないし、L.Aのプロデューサーや20世紀フォックスの重役たちにも会ったことなかったんだ。だから彼らから “この小説をリドリー・スコットが映画化するよ” と聞いても、“手の込んだ作り話じゃないか” と思ってしまったんだ」

そりゃ、突然すぎて信じられませんよね。ブログでコツコツ書いていた小説が、巨匠の新作として映画化され、大ヒットして、アカデミー賞作品賞ほか7部門候補の傑作になったのですから。ウィアー氏はいま、至福の時でしょうね!

【SFエンタメの楽しさイッパイ!】

SFが苦手という女子は多いと思いますが、この映画は、SFにありがちな専門用語や複雑な設定はなく、ただ、火星に取り残された宇宙飛行士が、生き延びるためにあらゆることに挑戦する姿を、ユーモアを加味して描いた物語。

主人公マークのキャラクターが明るくポジティブで楽しい男ってところがいい! 知的でサバイバル能力があって楽しいなんて、マーク・ワトニー、女性にとって理想の男じゃないですか。
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マークは火星で生き延びていけるのか、無事に地球へ帰って来られるのか……? 火星での彼の奮闘ぶりをぜひ見守ってあげてください。全編をディスコサウンドが彩る作品で、SF映画への苦手意識が吹っ飛ぶ面白さですよ。

執筆=斎藤香(c)Pouch

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『オデッセイ』
(2016年2月5日より、TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー)
監督:リドリー・スコット 出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・ペーニャほか
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

▼映画「オデッセイ」予告編