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[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品の監督を直撃インタビューします。

今回直撃インタビューしてきたのは、待ちに待ったディズニー/ピクサーアニメ『ファインディング・ドリー』(2016年7月16日公開)のアンドリュー・スタントン監督アンガス・マクレーン共同監督です。

大ヒットした『ファインディング・ニモ』から13年! なんとドリーが主役になって帰ってきましたよ。

というわけで、この映画の裏側を両監督に聞いてきました。

【物語】

忘れん坊のナンヨウハギのドリーは、カクレクマノミのマーリン、ニモ親子とグレートバリアリーフで楽しく暮らしていました。
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ある日、ドリーはニモの学校の遠足に参加したとき、アカエイの大移動に遭遇。うっかり大群に近づきすぎて、激流に飲み込まれてしまいます。しかし、そのときの衝撃でドリーは思い出したのです。激流に飲み込まれた過去と、そのとき一緒にいた家族のことを。
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そしてドリーは家族を探す旅に出ることを決意しますが、何でも忘れてしまうドリーは自分に自信が持てません。

そんなドリーを見たニモは、かつで行方不明になった自分を探してくれたドリーに「今度は僕が助けるよ」と。そして冒険は始まるのです。
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【ドリー全米を席巻! その要因はニモのおかげ?】

青い海、色とりどりの魚の群れ、ニモとマーリンの仲よし親子、忘れん坊でおっちょこちょいのドリー、大きなエイ先生などが登場するや、「おかえり~」という気持ちに。13年ぶりに帰って来た人気キャラクターたちの新作映画『ファイディング・ドリー』は、全米では2016年最大のヒットとなっており、その記録を今もグングン伸ばしています。

では、この映画の秘密をアンドリュー・スタントン監督とアンガス・マクレーン共同監督に聞いてみましょう!
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(写真向かって左:スタントン監督、右:マクレーン共同監督)

――全米大ヒットおめでとうございます!お二人は大ヒットの要因は何だと思いますか?

スタントン監督(以下S)
「それはもちろんニモのおかげだよ(笑)。ニモが世界中の人に愛される作品であったこと、その恩恵は確かにあると思います。13年前に『ファインディング・ニモ』を見た世代が結婚して親になって子供を連れて『ファインディング・ドリー』を見に来ている。新しい世代の人が見てくれたことがヒットの要因ですね」

マクレーン共同監督(以下M)
「自然界の影響も大きいと思います。人は自然を見ることを好みますが、この映画での海、空の自然は映像技術の進歩により、美しい自然の映像を見せることができました。ドリーたちと新しいキャラクターも紹介できたし、ニモに負けない作品になったと思います」

【続編でいちばん苦労したのはドリー!】

――続編を作るのに時間がかかりましたが、公開時のプレッシャーは相当では?

S「ピクサーで映画を作るというのは、それだけでプレッシャーなんですよ。なぜかというと『トイ・ストーリー』という名作があるからね。でも常にプレッシャーと闘っていると、それが普通になってきています」

M「僕たちは自分に厳しいんです。品質を下げちゃいけない、基準以上のものをという想いで臨んでいるんです」
S「それに僕たちは今の世代を超えて、孫の世代のための作品作りをしています。作品はどんなにヒットしても、名声を得ても、時と共に色あせていきます。でも何十年か後に見て、いい映画だねって言われたら……それが喜びですね」

――続編で一番苦労したのは、どこでしょう?

S「ドリーだよ~(笑)」

M「ドリーだよねえ(笑)」

S「ドリーの忘れっぽいという特徴は実に難しいんですよ。忘れっぽいゆえに、物語の中で成長や変化を追いかけていけるだろうかという不安もあったんです。1時間前の自分を忘れているわけだから、自覚や変化が理解できないわけですよ。本当に、アンガス(マクレーン共同監督)やスタッフのアイデアを総動員して、何年もかけてドリーの物語を練って、彼女の成長を追いかける作品にできたんです」

M「ドリーの物語は伝える価値があると思う。マーリンとニモの親子の悲哀も葛藤もすべて伝えることができたと思います」

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【制作スタート時は全然違う物語だった!】

――今回の映画は、脚本にヴィクトリア・ストラウスという女性も参加していますよね。彼女を起用した理由は?

S「物語を作っていくうちに、構想というのは最初からだいぶ変わっていくものです。

最初に考えていたのは、ドリーの親も忘れっぽくて、ドリーを失ってから養女を迎えると言う物語。その養女とのやりとりのためにヴィクトリアに入ってもらいました。結局ドリーの物語は当初とは変わったけど、僕は利口な第一歩だと思う。アンガスも加わってくれて、時間はかかったけど、ドリーの声を見つけることができた! 第一作目と調和のとれた物語になったと思います」

――監督はドリーの魅力をどう伝えようと心掛けましたか?

S「僕は、人と人は違うんだということを描きたいんです。ドリーの忘れっぽさ、もどかしさは問題ですか?欠点ですか? そう思うかもしれないけど、その特徴が彼女を特別な存在にしているんです。変える必要などないんですよ。そのことにドリーも気付いて、自分の個性を受け入れるわけですね。

これは普遍的な物語です。誰もが自分の欠点を抱えていて、それが何かを始めようとする心にブレーキをかけているかもしれない。でも個性を受け入れることに気付けば、変われるんですよ。『ファインディング・ドリー』を見て、みなさんにも気付いてもらえればいいですね」

確かに映画のドリーはすぐ忘れちゃうから、めっちゃ世話やけるけど、そのことに本人が一番傷ついているんです。でも「それがドリーじゃん!」と思えば、それは愛すべき特徴になるんですよね。

ドリーが「どうしよ~」と混乱しながらパパとママを探す旅には、ドリーのお茶目さに惹かれる仲間がどんどん増えていきます。そこが監督が描きたかったことかなあと、お話を聞きながらやんわり思ったりして。

青い海の気持ちのいい映像に身を委ねながら、ドリーたちの冒険旅行をぜひ! 見終ったあと「私でも何かできる!」そんな勇気がわいている映画ですよ。

撮影(スタントン監督&マクレーン共同監督特写)・取材・文=斎藤香(c)Pouch

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『ファインディング・ドリー』
(2016年7月16日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー)
監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:アンガス・マクレーン
声の出演:エレン・デジェネレス、ヘイデン・ロレンス、アルバート・ブルックス、エド・オニール、ケイトリン・オルソン
(日本語吹替え版:室井滋、木梨憲武、上川隆也、中村アン、菊地慶、田中雅美、八代亜紀ほか)
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▼オフィシャル記者会見の様子です。
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▼夏らしくドリーとニモの提灯が!
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▼『ファインディング・ドリー』予告編