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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、英国文学界不朽の名作と言われているジェーン・オースティン著「高慢と偏見」にゾンビをプラスして描いた、見たこともない恋愛ホラーアクション映画『高慢と偏見とゾンビ』(2016年9月30日公開)です。

『高慢と偏見』は、何度かTVドラマや映画化されている小説で、キーラ・ナイトレイ主演作『プライドと偏見』が有名です。見たことある人もいることでしょう。

「で、この有名な作品にゾンビをプラスってどういうこと?」と思われるかもしれませんね。ではまず、物語からいってみましょう!

【物語】

18世紀末のイギリス。謎のウィルスにより人々はゾンビ化。田舎で暮らすベネット家の5人娘は、カンフーと剣の腕を磨き、ゾンビと闘う日々でした。

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ある日の舞踏会で、近所に引っ越してきた資産家のビングリー(ダグラス・ブース)とベネット家の長女ジェイン(ベラ・ヒースコート)、ビングリーの友人で大富豪の騎士ダーシー(サム・ライリー)と、次女のエリザベス(リリー・ジェームズ)が惹かれあいます。

けれども、ベネット家の母がビングリー家のお金を目当てに嫁がせようとしていることを知ったダーシーは、ビングリーとジェインの結婚話を破談に。姉の悲しみを思い、ダーシーに怒り心頭のエリザベスは、自分に好意を寄せるダーシーを突き放してしまいます。

しかしそのとき、ゾンビVS人間のバトルが激化、最終戦争へと突入していくのです。

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【シンデレラからゾンビハンターへ?】

『プライドと偏見』でキーラが演じたエリザベスを、今回のゾンビバージョンではリリー・ジェームズが演じています。リリーと言えば、2015年の大ヒット作『シンデレラ』のヒロイン! プロモーションで来日したとき、Pouchは直撃インタビューもしました。新作のリリーは、ゾンビに立ち向かっていく強いヒロインです。

「脚本を数ページ読んだけで、この作品に夢中になったわ。オースティンが生んだエリザベスを演じようとしたけど、ゾンビと闘う戦士のエリザベスになるためには、オースティン版を手放す必要もあって、そこが難しかった」

と、リリー。

ゾンビに対する臭覚が鋭く、ちょっとした気配でも察知して突然回し蹴りで倒し、剣でとどめを刺す! ドレスの裾をひるがえしてガンガン闘うリリーのかっこいい一面にホレボレです。
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【プロデューサーはナタリー・ポートマン!】

実はこの映画、セス・グレアム=スミスの同名原作『高慢と偏見とゾンビ』の映画化であり、この原作にほれ込んだナタリー・ポートマンがプロデューサーとして参加している作品。スミスはティム・バートン監督作『ダーク・シャドウ』など、映画脚本の執筆経験が豊富なので、原作がもともと映画的とも言えます。

この映画のエライところは、文学にゾンビという大胆なアレンジであるにもかかわらず、オースティンの「高慢と偏見」のベースには忠実で、キャラはいじっていない点。スミスや映画スタッフには、オースティンの原作を敬う姿勢がきちんとあるのです。

それにしても、オースティンがこの映画を知ったらどう思うのでしょうね。その作風のように、ユーモアセンスあふれるオースティンなら、笑ってOK「グッジョブ」と言うのではないでしょうか。

【ラブストーリーの王道をいく映画】

「ゾンビが出てくるなんてホラーでしょう!」と言われそうですが、確かにスプラッターホラー的な要素はあるものの、この映画の基本は愛、そしてユーモアです。最初会ったときから惹かれあっていたのに、勘違いなどがきっかけでケンカばかりしていた男女が、なんとゾンビを倒すことで心通わせていくのですから! また、エリザベスがゾンビをなぎ倒す姿を見てダーシーが惚れるっていうのもいいですね。

正直、ほかのゾンビ映画に比べるとゾンビがあまり怖くはないんですけど(エリザベスが強すぎるから)そこもまた愛嬌って感じ。「ちょっと変わった映画が見たい」と思ったら、ぜひ『高慢と偏見とゾンビ』をスクリーンで。純文学+ゾンビの世界を堪能してください。

執筆=斎藤 香 (C) Pouch

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『高慢と偏見とゾンビ』
(2016年9月30日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー)
監督:バー・スティアーズ
出演:リリー・ジェームズ、サム・ライリー、ジャック・ヒューストン、ベラ・ヒースコート、ダグラス・ブースほか
(C)2016 PPZ Holdings, LLC

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