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尾崎豊さんの大ヒット曲『卒業』に「行儀よく、まじめなんて出来やしなかった」という歌詞があります。この歌を私が初めて聴いたのは、思春期まっただなかの中学生。通っていた中学は尾崎さんの歌の世界さながらに荒れていて、グレた先輩たちが校内を闊歩していました。

この学校では目をつけられたら最後、恐ろしい呼び出し(ヤキ入れ)が待っています。先輩の暴力から守ってくれる姉や兄がおらず、腕力もなく、家も厳しく、誰ともなるべく争いたくない私が、荒れた学校で目立つことは “死” を意味します。行儀よく、まじめなんて当たり前だと思っていた私は、この歌に全く共感できなかったのです。

そんな気の弱い私が、昨年の夏、人生で初めての金髪にしたのです。40を過ぎてからの金髪は……控えめに言っても最高です。超いいよ! みんな年をとったら金髪にするがよい! その理由をお伝えします。

【木の葉を隠すなら森に隠せ】

最初に金髪にした日は「ついにやってやった……」と高揚感に包まれましたが、厳しい両親には「なにか言われるかも?」 と不安になりました。しかし、金髪になった私を見た母の感想は「IMARUちゃんみたいにしたの?」。私はもうずいぶん前から、とっくに自由だったようです。

・メリット1 シンプルな服を来ててもオシャレに見える

金髪には、シンプルな服を着ていても髪がアクセントになって、なんとなくオシャレに見えるという効果があると思います。さらに、髪が伸びて黒い色が出てきても、あえて2色にしているようなオシャレ感が出せている気もするのです
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・メリット2  白髪が目立たない!

さらに、40を過ぎると、やはり髪には白髪が目立つもの。白髪隠しの効果としても、金髪は力を発揮します。黒いところに白いものが混じるのと、明るいところに白いものが混じるのとでは、目立ち方がダンゼン違います。やっぱ、木の葉を隠すなら森だよネ! 白髪を隠すなら金髪にすべし! これは声を大にして言いたいです。

・メリット3 排水溝掃除が気持ち悪くない

ついでに、風呂場に溜まる抜け毛が真っ黒なのと、明るい色なのとでは、掃除のときの気持ち悪さも変わります。明るい毛が集まっているのを見ると、なんとなく愉快です。

【表向きには白髪隠しと言いながら】

しかし……私が本当に金髪にした理由は、別のところにあります。それは、同世代の友人や知人が立て続けに亡くなったこと。ある年を境に、それまではなかった「突然死」という理由でこの世を去る友人たちが増えたのです。

私は、人間が生きられる時間には限りがあることを知りました。そして身体や心が自由なうちに、今までやったことがないことをやらなくてはいけない! と強く思いました。幸いにして、今の職場は髪型も服装も自由、自由すぎる環境です。

このタイミングを逃してはならんと思った私は、その衝動に従い、人生で初めての金髪にしたのです。

【自由になれた気がした40すぎの夜】

今でこそさほど珍しくない金髪ですが、昭和の記録映像をみれば、大人はほぼ、全員が黒髪です。大人の金髪は、社会に対して力を見せつけたり、なんらかのメッセージを表現したい人がやるもので、かわいく見せたいからやっている人はほとんどいなかったのでは……? と思います。

私は厳しい親やセンコーにつっぱる勇気もなく、金髪がメジャーなものになってから、ようやく自分でもやってみようと思ったわけで、大人のなかでもヘタレだと思います。

だけど、実際にやってみて周りの反応は自分が考えていた以上に優しかったのです。「常識がない、年を考えろ」という人は誰もいませんでした。本当は「ヤキを入れてくる恐ろしい先輩」ですらも、自分の思い込みだったのかもしれません。人間は変化するものなんだということを、40過ぎて実感しています。

いつまでこの髪型ができるかどうかはわかりませんが、自由にできる環境、そして自由にできる髪があることに感謝します。

撮影・執筆=はちやまみどり(c)Pouch